光文社
2010年9月 初版1刷発行
267頁
長崎帰りの若き町医者・井坂圭吾
亡き父の教えに従い、貧しい町人たちを安く、時に無償で治療していました
ところが、懇意にしていた薬種問屋の若旦那・生三郎と言い合いになり、援助を打ち切られてしまいます
圭吾の診療を手伝っていたタキは、新たな援助先を頼りますが、そこには思いも寄らぬ因縁がありました
自分のことは後回し
人のために誠意を尽くす若き医師の物語と思いきや
頭でっかち、世間知らず、自分の意に添わないことを言われると癇癪を起し大声をあげる、とんでもない人物でガッカリ
「刀圭」とは薬を調合する匙のことで、『圭吾』は父親が“ゆるぎない圭となれ”という思いをこめてつけた名前です
父親も貧しいながら町医者として人々に慕われる存在だったのですが、色々あって酒に溺れ、患者の見立て違いを起こし極貧の中亡くなってしまうのです
高潔な意志の持ち主と思っていた父親の実像に困惑する圭吾の姿にもイライラさせられました
でも、圭吾の周囲の人々が皆魅力的で、やがて圭吾も少しずつ考えを改め『まとも』な青年医師に成長していき、少し切ないけれど明るい未来を期待させるラストはお見事でした
薬種問屋の若旦那と花魁が一緒になれると良いなぁ
「着物始末暦シリーズ」で知った中島さんの長編デビュー作
後の活躍を予想させる出来と思います
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