中央公庫
1998年11月 初版発行
2013年 7月 9刷発行
解説・清原康正
247頁
それぞれ寡黙に、曰くありげに飲む赤提灯の常連客四人
彼らに付きまとい押し込みを持ちかける謎の男
決行は人足がぱったりととだえる逢魔が刻
深川の市井を舞台に繰り広げられる押し込み強盗と、それぞれの女たちの悲運を描く長編時代サスペンス
佐之助は元・檜物師で博打に溺れて最愛の女に去られ、今は人を恐喝する闇の仕事で喰っています
伊黒は病妻を抱えている牢人で、剣道場の代稽古をつとめており、病妻はもと人妻で駆け落ちしてきてひそみ隠れるように江戸の町の隅で暮らしています
弥十は元・建具職で若い頃に人を刺し、江戸払いの刑を受けて長い旅暮らしを経験してきて、今は娘夫婦の厄介になっています
仙太郎は夜具を扱う老舗の若旦那で、祝言をあげる予定の許婚がいるのだが、料理茶屋の仲居をしている年上の女との仲を清算できずに焦っています
四人は互いを赤提灯で見かける常連客と認識はしていても会話はありませんでした
それぞれに金が必要な四人に小肥りの商人風の男・伊兵衛が声をかけてきます
四人の事情をよく知っていて、押し込み強盗を手伝えば一人頭百両を出すと誘いをかけてくるのでした
最終章では押し込み強盗をはたらいた五人と彼らに関わる女たちのその後の運命が描かれます
逢魔が刻の薄闇と五人が心の中に持つ闇の中で回し続けた歯車は止まってしまいましたが、ほんの少しの救いが感じられるラストに余韻が残ります
暗い色調から明るい色調へ作風が変化してい過渡期の作品で、発表時のタイトルは「狐はたそがれに踊る」だったそうです
外国ミステリーを愛した藤沢さんらしいタイトルでしたね
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