PHP文芸文庫
2019年11月 第1版第1刷
解説・澤田瞳子 「美しさ」を描く小説
323頁
晩年に建仁寺の「雲龍図」を描いた遅咲きの絵師・海北友松の生涯とは
友松が若くして心ならずも寺に入れられた後、近江浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡
御家再興を願いながらも絵師の道を選択した友松でしたが、その身に様々な事件が降りかかります
安国寺恵瓊との出会い、明智光秀の片腕・斎藤利三との友情、そして本能寺の変へ
武人の魂を捨てきれなかった友松は、その時何を考え、どんな行動をしたのか
晩年にその才能を開花させ、安土桃山時代の巨匠・狩野永徳と並び称されるまでになった男の生涯を描きます
武士に戻らず、しかし武士以上に武士のように生きた絵師の生き様は清々しくもありました
歴史小説とのことでフィクションの部分も多いでしょうが、さもありなんと思わせるのは葉室麟さんの腕でしょう
2015年2月、建仁寺を訪れた際にレプリカですが観ました
400年以上も前に実在した人物が描いたものが残っていると思うと感無量です
↓↓その時撮影した画像↓↓
解説より
斎藤利三とその主・明智光秀は本能寺の変の後、山崎の合戦に敗北して討たれる
それを知った友松は建仁寺方丈に「雲龍図」を描き、そこに2人の魂を留め置こうとする
それは絵師として、紙上に見える「美」を表す行為ではない
人間の「美しさ」を偲び、人の記憶に留めようとすることで、この苦しみ多き世界になお一筋の光明を見出そうとする祈りなのではないか
『墨龍賦』は「美しさ」を描く小説である
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