文藝春秋
2022年1月 第1刷発行
281頁
大学院生の岡田一心は、伝説の映画女優「和楽京子」こと、鈴さんの家に通って荷物整理のアルバイトをするようになりました
鈴さんは一心と同じ長崎出身で、かつてはハリウッドでも活躍していた銀幕のスターでした
切ない恋に溺れていた一心は、今は静かに暮らしている鈴さんとの交流によって大切なものに気づくのでした
虚実を織り交ぜて戦後映画史をたどりながら鈴さんの来し方が語られます
鈴さんがどんどん人気女優になっていく華やかな世界とは裏腹な長崎の原爆がもたらした不幸も盛り込まれていて作品に重さを加えているのが良かったです
鈴さんの家に通った期間は短くても一心にとってはとても大事な時間でした
数年後、結婚して子供もいる一心
これからも鈴さんが遺してくれたたくさんの思いを胸に生きていくのでしょう
清々しい物語でした
138頁、一心と鈴さんが夜道を歩いていた時に鈴さんが独り言のように呟いた「きれいな月ね」
深い意味があったのかなかったのか
夏目漱石を思い出して色々と勘ぐってしまいました
吉永小百合推薦は不要です!
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