朝日新聞出版
2012年11月 第1刷発行
249頁
『小鳥の小父さんが死んだ時、遺体と遺品は…』
で始まる長編小説
凡その粗筋は知っていましたが、まずこの話が来たのは少しショックでした
11歳を過ぎた頃から自分で編み出した言語しか喋らなくなった兄
誰にも理解できない言語だったが、弟にだけは兄の言葉が通ずるのだった
毎週水曜日、近所の薬局に棒付きキャンデーを買いにいくことと幼稚園の鳥小屋を園のフェンスの外から眺めに行くのだけが外出となった兄
兄が29歳、弟が22歳で両親が亡くなり、その後は二人だけで暮らしてきた兄弟
ゲストハウスの管理人として毎日真面目に勤める弟
楽しみは毎週末の「プランだけの旅行」
兄も52歳で亡くなり、ひとり暮らしになった弟
ゲストハウスの仕事を辞めた弟は幼稚園の園長先生に請われ鳥小屋の掃除や鳥の世話をすることになり園児たちからは「小鳥の小父さん」と呼ばれるようになった
お兄さんも小鳥の小父さんも大切なものだけを傍に置いて、日々をひたむきに生きてきました
時に理不尽な仕打ちを受けることはあっても、それに抗うことはせず、ごくシンプルな人生を送った小鳥の小父さん
狭い人間関係、生活範囲での暮らしでしたが兄弟の二人ともそれはそれは満ち足りた人生だったのだと思います
元気よく積極的に、アクティブに生きてこそ、充実した人生が送れる、と思ったりしますが、この兄弟のような生き方も十分充実した幸せなものだったのでしょう
最後まで読んで、もう一度冒頭に戻るとその始まりは決して「ショック」な内容ではなく、また違うものに感じられるのでした
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