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小川糸「針と糸」

2024年10月27日 | あ行の作家


毎日文庫
2022年2月 第1刷
2022年4月 第4刷
243頁

ひと針、ひと針、他愛のない日々が紡ぎ出す希望の物語
ベルリン、ラトビア、モンゴル、鎌倉etc
見知らぬ土地で変化する幸せの尺度
母親との確執を乗り越え辿り着いた書くことの原点

「日曜日の静けさ」「母のこと」「お金をかけず幸せになる」「わが家の味」

小川さんのエッセイは初読
三浦しをんさんや宮部みゆきさんみたく思わず声をあげて笑ってしまうような楽しいものを期待しましたが、少し違っていて…
楽しくないことはないのですが、やや重い内容もあって「ふ~ん、こんな方だったのねえ」でした
小川さんの小説に大抵の女性が思い当たるであろう母と娘のわだかまりがよく出てくるのに納得
だからって小川さんが暗いとか堅物とか、そんなわけではありません
私が勝手に期待しただけのことで、これはこれで小川糸という作家の内面を知ることができて良かったです
あとがきで「私の中の針と糸を包み隠さず曝け出しました」と書いておられますが、まだまだ色々とお持ちだろうと想像します

あとがきより
物語を紡ぐことは、ちくちくと縫い物をすることに似ています。
最終的に言葉として残るのは糸ですが、糸だけの力では、そこに何かを残すことはできません。
糸は、針の力を借りることで、糸としての役割を全うできるように思うのです。
針もまた、針だけ存在していてもほとんど役に立つことはなく、その小さな穴に糸を通して、共に糸と触れることで、針としての役割を発揮できます。
針と糸は、お互いがお互いを必要とする存在です。
だから、針だけでも、糸だけでも、私は物語を書くことができません。
私にとっては、針も糸も、両方、なくてはならない仕事道具なのです。
これからも、両方を持ち歩き、大切にしていきたいと思います。


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