ハルキ文庫
2011年8月 第1刷発行
2019年8月 第22刷発行
297頁
みをつくし料理帖シリーズ第6弾
青葉闇 ―― しくじり生麩
天つ瑞風 ―― 賄い三方よし
時ならぬ花 ―― お手軽割籠
心星ひとつ ―― あたり苧環
雨の少ない梅雨が明け、大暑を過ぎた頃、つる家の常連客、版元・坂村堂の知人で大店の主がご寮さん・芳を見初め、後添えに入って欲しいと言い寄るのを聞いた澪は、今の暮らしがずっと続くと思っており、芳の女としての幸せを考えてこなかったことに激しく動揺します
そんな騒ぎも落ち着き酷暑が過ぎた葉月、町中で体調を崩した小松原の妹・早帆が偶然つる家で介抱を受けます
身分を隠したままつる家を去った早帆ですが、種市と澪は「どこかで会ったような気がする」と思うのでした
燕が南へ渡る頃、登龍楼から使いがきて、登龍楼が支店として出している神田須田町の店を居抜きで買い「つる家」としてはどうか、話が持ち込まれます
吉原の翁屋から天満一兆庵の名で店を任せるという話も来ている澪の悩みは深まるばかり
神田須田町へ移ってつる家を大きくするのか、吉原で天満一兆庵を再建し、尚且つあさひ太夫=野江ちゃんを身請けするのか…
種市も芳も澪に良かれとあれこれ考えを巡らせます
澪の相談に乗ってくれるのは例によってつる家の心強い助っ人・りうさん
「この歳になればわかることですがね、精進を続けるひとに『ここまで』はないんですよ
『ここまで』かどうかは、周りが決めることではなく、自分自身が決めることでしょう」
りうの声は、澪の心の襞の奥まで沁みていく
店の格、設え、そんなものに目を奪われる前に、自分が料理人として高みを目指すためにすべきことは沢山ある
ふたつの選択肢の間で振り子のように揺れていた心が今、静かに止まった
季節は過ぎ、長月
つる家のある元飯田町内でぼや騒動が続くことを重くみた町年寄から、飲食店は火の扱いは朝五つ(午前八時)から四つ(午前十時)に限るようにという申し入れがあります
さあ大変!
つる家では商いができないということになってしまいます
火を使える時間である程度の煮炊きはできるものの、客に供する時間にはほとんどが冷めてしまい、綿入れを着る季節にこれでは困ります
そこで考えた苦肉の策は、店頭でお弁当を販売するというもので、これが客の評判を呼んで何とか苦しい時期を切り抜けることができるつる家でした
これ、まさに今のコロナ禍で全国の飲食店が実施しているテイクアウトですよね
火の扱いの申し入れが解かれ、つる家にいつもの賑わいが戻った神無月
一人の白髪の侍が店を訪れ、自分は小野寺家の用人で、澪を数馬の嫁に迎えるよう早帆が母親を説得したので、まずは澪を武家奉公に迎えたい、という話を始めます
種市は、あの小松原が御旗本と知り吃驚仰天、しかしあの2人ならお似合いだと思うのでした
ところが、澪は、周囲から言われるままに想い人に手を差し伸べたとして相手にこの手を取る気持ちがなければどうなるのか、母親と妹は澪を受け入れてくれても、小松原はどうなのか、思い悩みます
澪には小松原の気持ちが全く見えていなかったのです
前巻で読者には小松原の気持ちがはっきり明かされていましたが、澪には伝えられていなかったのです!
数日後、小松原はつる家を訪れ、正式に澪に「俺の女房殿にならぬか、共に生きるなら下がり眉がよい」と求婚
これで万々歳と思ったのも束の間
父親の形見の品である塗り箸だけは持っていきたいと願う澪に対し、早帆は塗り箸はどれほど良いものでも武家には格が低いのであるから、どうしてもというなら人に知られぬよう隠して持ってくるよう、と言います
意地悪で言っているのではありません
身分の違いとはそういうものなのですね
さらに、旗本の女房ともなれば自ら包丁を握ることなど認められるはずもありません
その人生は本当に自分が目指すべき道なのだろうか…
つる家を去る日まで、今まで通り一生懸命料理を作る澪ですが、心の迷いはどんどん大きくなっていくばかりなのでした
序盤の芳の後添え騒動に驚きましたが、それ以上の怒涛の展開が待っていました
この先、澪はどのような道を選ぶのでしょう
これは間を空けずに次巻を読まなければなりませぬ
https://blog.goo.ne.jp/narkejp/e/e491f00bd36b31b58b2106597df74167
そうですね、小野寺氏とは境遇が違いすぎるというのはありますね。恋は情熱、愛は理解と忍耐(^o^;)>poripori
周囲は皆わかっているのに澪だけは気づかないなんて。
NHKのドラマでもこのシーンには胸キュンでした。
次はどんな展開が待っているのかしら。楽しみで楽しみで仕方ありません。