訳・小野寺健
ハヤカワepi文庫
2001年9月 発行
2019年1月 22刷
解説・池澤夏樹
261頁
英国に住む悦子は長女の自殺に直面し、喪失感の中で自らの来し方に思いを馳せます
戦後間もない長崎で長女を妊娠中に出会ったある母娘
戦後、180度変わってしまった価値観についていけないでいる義父
戦前は上流階級に属していたものの戦後は没落、うどん屋で生計を立てている初老の女性
誰もが傷つき何とか立ち上がろうと懸命だったあの頃、淡く微かな光を求めて生きていた人々の姿を描きます
しかし
悦子の記憶に頼る描写はもどかしくその記憶が正しいのか誤りなのかもはっきりしません
同じ事実でも、後に語られる時には微妙に会話の内容や情景が異なっていたりします
色がついているようでついていない映画のような“心地悪い”作品でした
池澤さんの解説によれば『人の思いのずれがカズオ・イシグロの文学の主題である』とのこと
それを頼りに次作にも挑戦してみませう
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