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木下昌輝「宇喜多の楽土」

2022年08月27日 | か行の作家


文春文庫
2021年1月 第1刷
解説・宇喜多秀家の生涯 大西泰正
378頁

宇喜多秀家の数奇な生涯を描く歴史小説

織田信長が本能寺に斃れた天正10年(1582年)に、わずか11歳で家督を継ぎ、豊臣秀吉の引き立てにより、豊臣「五大老」の一角を占めるに至り尋常ではない地位を得ます
正室は前田利家の四女にして秀吉の養女であった豪姫と文句のつけようもありません
しかし、秀吉の死を境に暗転
秀家の施政に対して有力家臣が徒党をなして反抗(宇喜多騒動)し宇喜多氏内部の混乱がおさまらぬうちに関ヶ原の合戦に巻き込まれてゆきます
石田三成に与し関ヶ原に敗北した秀家は数え年29歳で大名の地位を失い、畿内に潜伏の後、九州南部に身を隠し、伏見に出頭、駿河へ移送、最後には八丈島へ流されます
驚くのは84歳で没するまでその余生をおよそ50年もの間八丈島で暮らしたことです

終章「最果ての楽土」で描かれる秀家の暮らしは、さぞや貧しく侘しいものかと想像していたのですが、思いのほか穏やかで満ち足りており、決して不幸なものではなかったようです

木下昌輝さんはデビュー作、秀家の父・宇喜多直家を描いた「宇喜多の捨て嫁」や「人魚ノ肉」が強烈で厳しい作風の方と思っていました
しかし、本書からは爽やかさ、温かさが感じられ、違う印象を持ちましたので他作品も読んでいこうと思います

2021年3月に関ヶ原古戦場へ行った時の写真
宇喜多秀家の陣は右手前の緑が濃い山(北天満山)の左裾野あたりにあり、その奥の山(松尾山)に陣取っていたのが小早川秀秋でした
 



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