みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1135「しずく142~おかえり」

2021-10-01 17:36:54 | ブログ連載~しずく

 学校の下校(げこう)時間。生徒(せいと)たちは校門(こうもん)を出て家路(いえじ)につく。その中に、月島(つきしま)しずくの姿(すがた)があった。ほとんどの生徒はバス停(てい)や駅(えき)の方へ向かって行くが、しずくはひとり脇道(わきみち)に入った。
 しばらく行くと、彼女の後をつけている人影(ひとかげ)が…。それに気づいたのか、しずくは立ち止まり振(ふ)り返った。そこにいたのは、神崎(かんざき)つくねだ。
 つくねは、しずくに駆(か)け寄って抱(だ)きつくと、彼女の耳元(みみもと)でささやいた。
「あたし、帰って来たよ。もう、あいつのところへは戻(もど)らないから…」
 しずくは、つくねをぎゅっとして、「よかった。思い出してくれたのね」
 しずくがいつまでも離(はな)してくれないので、つくねはもがきながら、
「ちょっと…。もう…、いつまで抱きついてるのよ。離してよ。恥(は)ずかしいでしょ」
「いいじゃない。久(ひさ)しぶりなんだから…。つくねから抱きついてきたんでしょ」
 つくねは何とかしずくを振り解(ほど)くと、「あのね、いい加減(かげん)にしてよ」
 しずくは嬉(うれ)しそうに言った。「じゃあ、これからは一緒(いっしょ)に暮(く)らそう。いいでしょ?」
「そ、それはいいけど…。ねぇ、教えてよ。あたしがいない間に、何があったの? いま、どこに住(す)んでるのよ」
「私の家はね、ここだよ」
 しずくが指差(ゆびさ)したところにピンクウサギがあった。しずくはそれを拾(ひろ)い上げると、回りに誰(だれ)もいないのを確認(かくにん)して、つくねの手をつかんで異空間(いくうかん)へ飛(と)び込んだ。
<つぶやき>これは、まずいんじゃないの? だって、この〈つくね〉って偽物(にせもの)だよね。
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