神崎(かんざき)つくねは目を見張(みは)った。彼女の前には、どこまでも続く白くて長い通路(つうろ)が延(の)びていた。照明(しょうめい)がないのに、壁(かべ)や天井(てんじょう)からまるで木漏(こも)れ日のような光りが射(さ)し込んでいる。
つくねは、月島(つきしま)しずくの後(あと)をついて行った。しばらく行くと、突然(とつぜん)、扉(とびら)が現れた。それを開けると、そこは部屋(へや)になっている。白いソファーとテーブルがあるだけで、他には何もなかった。しずくは、「何か飲(の)み物を持ってくるね」と言って別の扉から出て行った。
つくねは、その部屋を調(しら)べてみたが、すぐに何もないことが分かった。
「ここが隠(かく)れ家(が)ってこと? 他(ほか)にも部屋があるのかしら…」
つくねが出て行った扉を見ると、そこにあった扉は消(き)えていた。つくねは不安(ふあん)になった。「もしかして、罠(わな)にかかったのは私の方なの?」
つくねは入ってきた扉を開けた。そこには、さっき歩いて来た通路があった。つくねは通路に出ると、他に扉がないか探(さが)し始めた。もう出口(でぐち)がどこにあるのか分からない。つくねは、いくつも扉を見つけて中を覗(のぞ)いて見たが、どれも最初(さいしょ)に入った部屋とまったく同じだった。同じ場所(ばしょ)をぐるぐると回っているんじゃないかと彼女は思った。
つくねは、通路を駆(か)け回った。突然、眩(まぶ)しい光が目に飛(と)び込んできた。彼女は思わず目を閉じた。次の瞬間(しゅんかん)、彼女は何かにぶつかって倒(たお)れ込んだ。彼女の目の前には、ビルの壁がそびえ立っている。いつの間(ま)にか、元(もと)の世界(せかい)に戻(もど)っていたのだ。
<つぶやき>つくねの正体(しょうたい)を見抜(みぬ)いていたんですね。それにしても、こいつは何者(なにもの)なの?
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