終電(しゅうでん)で帰ることになった彼。その電車(でんしゃ)で、見覚(みおぼ)えのある女性を見つけた。誰(だれ)だったか思い出せずにいると、その女性が近づいて来て話しかけてくる。
「あの…、吉田(よしだ)くんだよね」
彼は、「ああ…」と言ったが、その先(さき)の言葉(ことば)が出ない。
「やだ、あたしよ。ほら、中学のとき、同じクラスだった」
「えっと…」彼は、まだ思い出せないようだ。
「うそ…。覚(おぼ)えてないの? あたしのこと」
「ごめん。えっと…、ここまできてるんだけど…」
「かおりよ。花丸(はなまる)かおり。ほんと覚えてないの?」
「ああ…。あの、花丸ね。テスト好きの…」
「もう、やめてよ。あの頃(ころ)、テストが近くなると、よく男子からからかわれたわ」
「ああ…、ごめん。いや、ずいぶん変わっちゃったから、分かんなかったよ」
「そうかなぁ…。吉田くんは、いつも終電で帰ってるの?」
「いや、違(ちが)うよ。今日は、残業(ざんぎょう)になっちゃってね。それで…」
たわいのない会話(かいわ)。まあ、同級生(どうきゅうせい)といっても、それほど親(した)しかった訳(わけ)でもなし…。二人とも独身(どくしん)のようだが、この先、何か進展(しんてん)があるかどうかは――。
<つぶやき>昔の友だちに久しぶりに会うと、何を話せばいいか。そんなことありません?
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。