みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0140「妻の手料理」

2018-01-15 18:44:26 | ブログ短編

「どう? 美味(おい)しくない?」妻(つま)のこの一言(ひとこと)で、私は身震(みぶる)いした。この言葉(ことば)の裏(うら)には、間違(まちが)いなく〈美味しいでしょ。美味しいって言って。美味しいはずよ〉という、彼女の願望(がんぼう)というか、熱望(ねつぼう)が込められている。
 妻は創作料理(そうさくりょうり)とか言って、たまにとんでもない料理を作ることがある。それが、ほとんどの確率(かくりつ)で口に出来(でき)るものではないのだ。でも、彼女の方は味(あじ)が分からないのか、美味しいものと思い込んでいるから始末(しまつ)が悪(わる)い。もしここで、私が不味(まず)いと言ったら最後(さいご)、妻は三日は立ち直れなくなってしまう。その落ち込みようといったら、半端(はんぱ)なものではないのだ。それに、ここであいまいな返事(へんじ)をしてしまうと、次の日も、また次の日も、私が美味しいと言わない限(かぎ)り、同じ料理がアレンジを加(くわ)えられて出てくるのだ。
 妻は私が料理にどんな評価(ひょうか)を下すのか、満面(まんめん)の笑顔(えがお)で待っている。私は、これでも男だ。ここでビシッと言わないと。そうは思うのだが、その後のことを考えてしまうと…。
 妻はそんな私のことなどお構(かま)いなしに言うのだ。
「この食材(しょくざい)の組み合わせは、他の人には絶対(ぜったい)に思いつかないと思うの。それに、味付(あじつ)けも斬新(ざんしん)でしょ。きっと、あなたも気に入ってくれると思うわ」
「ああ…、そうだね。とっても美味しいよ。でもね…」
「そうでしょ! そうだと思った。まだ、たくさんあるからね」
<つぶやき>これは難しい問題なのかもしれません。でも、正直(しょうじき)に答えてあげた方が…。
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0139「変わりたい」

2018-01-14 18:44:00 | ブログ短編

「もう、つまんない」これがあたしの口癖(くちぐせ)になっていた。
 彼と暮(く)らし始めた頃(ころ)、毎日が楽しくて、こんな日がずーっと続くと思ってた。
「洗濯物(せんたくもの)、たたんどいたよ」彼はいつものようにあたしに微笑(ほほえ)みかける。
 あたしは膨(ふく)れっ面(つら)をして、「やろうと思ってたのに、何で先(さき)にやっちゃうのよ」
「ごめん。でも、ほら、君は忙(いそが)しそうだから…」
「忙しくたって、それくらいやれるわよ。もう、勝手(かって)なことしないで」
「だから、謝(あやま)ってるじゃないか」彼は困(こま)った顔をしてあたしを見つめる。
 これは、いつものちょとした喧嘩(けんか)。すぐに仲直(なかなお)りして、また元通(もとどお)りになるって――。でも、そう思っていたのは、あたしだけだったのかもしれない。彼がどんな気持ちでいるのかなんて、全然(ぜんぜん)考えていなかった。
 彼から突然(とつぜん)別れようって言われたとき、あたしは彼のこと責(せ)めたわ。彼のことがどうしても許(ゆる)せなかった。
 ――彼と別れて、初めて気づいたの。彼はあたしのこと、ちゃんと考えてくれていた。でもあたしは、ずっと彼に甘(あま)えてばかり…。彼は出て行くとき、心配(しんぱい)そうな顔をしてあたしを気づかっていた。なのにあたしは、声をかけるどころか顔を見ようともしなかった。
 今でも、彼のことは好きよ。――あたし、変わりたい。もっといい女になって、彼に会いに行くの。またふられてもいい、嫌(きら)われてもいい。もう一度、告白(こくはく)するんだ。
<つぶやき>不変(ふへん)の愛(あい)はないのかも。あっちこっちぶつかりながら、育(そだ)てていくものです。
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0138「隠しごと」

2018-01-12 18:41:39 | ブログ短編

 最近(さいきん)、彼の様子(ようす)がおかしい、と言うかめっちゃくちゃあやしい。明らかに、私のことさけてるし、彼の部屋(へや)に行っても中に入れてくれないの。私、彼のこと、誠実(せいじつ)で嘘(うそ)なんかつかない人だと思ってたのに。こうなったら、浮気(うわき)してるとこを突(つ)き止めてやるわ。
 私は探偵(たんてい)のように彼の会社(かいしゃ)の前に張(は)り付いた。彼は、私とデートしない時は真(ま)っすぐにアパートに帰るはずよ。――思った通り、彼は自分のアパートの方へ歩いて行った。
 私はちょっとホッとした。浮気じゃないかも…。でも次の瞬間(しゅんかん)、彼は脇道(わきみち)へそれて行く。えっ…? どこへ行くのよ。私は、胸(むね)がドキドキしてきた。
 彼は、とあるお店に入った。私は店内(てんない)を覗(のぞ)こうとして、思わずくしゃみが飛(と)び出した。何だか、鼻(はな)がむずむずして。ダメだ、ここってペットショップじゃない。私、猫(ねこ)アレルギーなの。しばらくして、彼は紙袋(かみぶくろ)を手に出てきた。何を買ったのよ? きっと、浮気相手(あいて)は動物好きなんだわ。彼、猫好きだったし…。彼は、そのまま自分のアパートへ向かった。
 もう、こうなったら現場(げんば)を押(お)さえるしかないわ。彼の部屋のドアをノックして…。彼は、私の顔を見て驚(おどろ)いた様子。すかさず私は、彼を押しのけて部屋へ突入(とつにゅう)! だが、そこには女の影(かげ)はなく、私はくしゃみが止まらなくなった。彼は、そんな私を部屋の外へ連(つ)れ出して言った。
「ごめん。友だちが旅行(りょこう)するからって、猫を預(あず)かってて…。それで…」
<つぶやき>隠(かく)しごとはしないようにしましょ。そうしないと、誤解(ごかい)の連鎖(れんさ)が始まります。
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0137「逆転の悪夢」

2018-01-11 18:41:44 | ブログ短編

 太郎(たろう)は昨夜(ゆうべ)、些細(ささい)なことで帆波(ほなみ)と口論(こうろん)になった。いつものことなのだが、妻(つま)の愚図(ぐず)なところが我慢(がまん)ならないのだ。イライラしながら眠(ねむ)りについたせいか、太郎は朝目覚(めざ)めても何だか頭が重く、ベッドから起き上がる気にもなれなかった。でも、仕事(しごと)に行かないと…。太郎はベッドから起き上がろうと頑張(がんば)った。その時、寝室(しんしつ)のドアが勢(いきお)いよく開いた。
「いつまで寝(ね)てんのよ! ほんとに愚図なんだから」
 それは、妻の帆波だった。でも、いつものおっとりした様子(ようす)はなく、その目はつり上がり鬼嫁(おによめ)のようだった。帆波は太郎の腕(うで)をつかみ、ベッドから引きずりおろすと言った。
「早く朝食(ちょうしょく)を作りなさい。仕事に遅(おく)れるでしょ!」さらに罵声(ばせい)は続く。「あなたはノロいんだから。いつも言ってるでしょ。何であたしの言うように、早く起きないのよ!」
「おい、帆波。どうしたんだよ。何で…」
「口答(くちごた)えしないで、さっさとやりなさい! ほんと愚図なんだから」
 帆波は夫(おっと)を締(し)め上げた。その力といったら、大(だい)の男でも抵抗(ていこう)できないほどだった。太郎は、苦(くる)しさのあまり手足をばたつかせ、何とか逃(のが)れようと必死(ひっし)でもがいた。
 その時、どこからか天使(てんし)のような声が聞こえた。「あなた…、どうしたの?」
 太郎が目を開けると、妻の顔があった。太郎は大きく息(いき)をついた。帆波は、いつもと変わらない笑顔(えがお)を見せて、「昨夜は、ごめんなさい。ねえ、もう起きないと、会社遅れるよ」
<つぶやき>たまには相手(あいて)の立場(たちば)になって考えてみて。自分がどう見られているのかを。
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0136「生き残り大作戦」

2018-01-09 18:39:34 | ブログ短編

 とあるスーパーのバックヤード。従業員(じゅうぎょういん)やパートのおばさんたちが集められていた。彼らを前に、店長(てんちょう)が沈痛(ちんつう)な面持(おもも)ちで話しはじめた。
「近くに新しいスーパーが開店(かいてん)した影響(えいきょう)で、ここ数ヵ月間、売上(うりあげ)は日を増(ま)すごとに下降(かこう)しています。このままでは、最悪(さいあく)の場合、閉店(へいてん)に追(お)いこまれるかもしれません。そこで、みなさんに、お客(きゃく)を集める良いアイデアを考えてもらいたいんです」
 従業員たちも客が減(へ)っていることは気づいていた。しかし、この状況(じょうきょう)を打開(だかい)できるようなアイデアは出そうになかった。そんな時、パートのおばさんが呟(つぶや)いた。
「ここがなくなると困(こま)るわ。だって、新しいとこ、ここより遠(とお)いんだもの」
 この呟きで他のパートのおばさんたちも、重(おも)い口を開きはじめた。
「よそのスーパーでやらないようなことをすれば良いんじゃない。たとえば、ゆるキャラみたいなの作って、バンバン宣伝(せんでん)して、イベントとかやっちゃうのよ」
「イベントやるんだったら、私たちでAKB48みたいなアイドルグループを作ろうよ」
「そんなの無理(むり)でしょ。それより、託児所(たくじしょ)とかあれば良いんじゃない。ついでに買い物もできて、若(わか)い奥(おく)さんには大助(おおだす)かりよ」
 この後(あと)も会議(かいぎ)は白熱(はくねつ)した。いつの間にか、みんなの顔に笑顔がこぼれていた。
<つぶやき>パートのおばさん目線(めせん)は、参考(さんこう)になるかもしれません。主婦(しゅふ)のプロですから。
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