みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1099「出るの?」

2021-07-20 17:47:13 | ブログ短編

 彼女の家に友だちが遊(あそ)びに来た。友だちは部屋(へや)の中を見て回(まわ)りながら言った。
「えっ…、すごいじゃん。よくこんなとこ借(か)りられたねぇ。高いんじゃないの?」
 友だちはお風呂場(ふろば)の前で立ち止まった。風呂場の入口(いりぐち)には、なぜか御札(おふだ)が貼(は)られてあった。友だちは…これは、どういうこと? …彼女の方を見たが、訊(き)くのをためらった。
 彼女は、「ここって、めちゃくちゃ安(やす)いんだよね。何か、事故物件(じこぶっけん)らしいんだぁ」
 友だちは顔色(かおいろ)を変えて、「あなた、なに考(かんが)えてんの? よく、こんなとこ…」
「仕方(しかた)ないじゃん。あたし、そんなにお金(かね)ないし…。でもね、出るっていっても…」
「で、出るの!? いやいやいやいや……。わ、わたし、か、帰(かえ)るね……」
 彼女は、友だちを押(お)し止(とど)めて、「ちょっと待(ま)ってよ。出るっていっても、悪(わる)いこととかしないから…。ちゃんと、しちゃいけないこと教(おし)えてあるから心配(しんぱい)ないのよ」
「あなた、なに言ってるの? わたし、こういうの…ほんと、ダメなの」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。ちゃんとお風呂場とトイレには覗(のぞ)かれないように御札も貼ってあるし。それに、夜中(よなか)も騒(さわ)がないように言ってあるから。泊(と)まっても、ぜんぜん平気(へいき)だよ」
「平気って…言われても…。もう、聞いちゃったし…寝(ね)られるわけないでしょ」
 彼女は何かを感(かん)じたのか、天井(てんじょう)の方を見つめて言った。「ごめん、何か出てきそうだわ。ちょっと目を閉(と)じててね。すぐ終(お)わらせるから――」
<つぶやき>彼女、幽霊(ゆうれい)とかぜんぜん平気なんだ。話しもしちゃうなんて、ただ者(もの)じゃ…。
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1098「分身ロボ」

2021-07-18 17:51:08 | ブログ短編

 僕(ぼく)はネット通販(つうはん)で分身(ぶんしん)ロボットを購入(こうにゅう)した。学生(がくせい)の僕にとっては三万円は痛(いた)かったが、こいつはきっとそれ以上(いじょう)の働(はたら)きをしてくれるはずだ。
 僕は大きなケースの蓋(ふた)を開けた。そしてロボットのスイッチを入れる。すると、ロボットの目が光り僕をスキャンしたようだ。しばらくすると、ロボットの容姿(ようし)が僕とそっくりになった。これには、僕も驚(おどろ)いた。こんなに同じ顔になるなんて――。これなら、友だちにも見分(みわ)けがつかないだろう。
 ロボットは期待(きたい)どおりの働きをしてくれた。学校(がっこう)の試験(しけん)は完璧(かんぺき)で、優秀(ゆうしゅう)な成績(せいせき)で卒業(そつぎょう)できた。そして、就職活動(しゅうしょくかつどう)もこいつのおかげで一流企業(いちりゅうきぎょう)に入ることができた。これからは、こいつに仕事(しごと)をさせて、僕はのんびり遊(あそ)んで暮(く)らすことができるはずだ。
 ある朝、目覚(めざ)めると――。僕は、狭(せま)いケースの中に押(お)し込まれていた。これはいったい、どういうことだ。僕は、ケースを叩(たた)いて助(たす)けを求(もと)めた。いくら声を張(は)り上げても助けは来ない。どうやら、トラックで運(はこ)ばれているようだ。――どのくらいたったろう。目的地(もくてきち)に着(つ)いたようだ。トラックの扉(とびら)が開く音がした。誰(だれ)かが、ケースを動かした。僕は、必死(ひっし)に声を張り上げて、ケースを叩いた。すると、人の声がした。
「おい、中で起動(きどう)してるぞ。ちゃんと電源(でんげん)を切(き)ってなかったのかな?」
「まあ、いいさ。故障(こしょう)で戻(もど)って来たヤツだから、どうせこのまま廃棄処分(はいきしょぶん)されるんだ」
<つぶやき>あら、どうなっちゃうの? 楽(らく)ばかりしてるから、こんなことになるんだぞ。
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1097「暇な探偵」

2021-07-16 17:41:24 | ブログ短編

 ここ一ヶ月、まったく依頼(いらい)が来ない探偵事務所(たんていじむしょ)。探偵は暇(ひま)を持て余(あま)しているようだ。そこへ、助手(じょしゅ)が駆(か)け込んでくる。町内(ちょうない)を回って営業(えいぎょう)していたようだ。
「先生(せんせい)、依頼がありましたよ。すぐに行ってください」
 探偵は目を輝(かがや)かせて、「そうか。どんな依頼だ? 殺人事件(さつじんじけん)か、それとも大泥棒(おおどろぼう)でも…」
「そんな、小説(しょうせつ)じゃないんだから、そんな依頼がくるわけないでしょ」
「じゃあ、素行調査(そこうちょうさ)か、それとも人捜(ひとさが)し…。いや、浮気(うわき)調査だな?」
「違(ちが)いますよ。もっと身近(みぢか)なやつです」
「えっ、じゃあ…まさか…。ペットを探(さが)せってやつか? それは…君(きみ)がやってくれよ」
「違いますよ。依頼人は商店街(しょうてんがい)の八百屋(やおや)の大将(たいしょう)です。ちょっと手伝(てつだ)ってほしいって…」
「八百屋? 何だそれは…。俺(おれ)は探偵だぞ。それも名探偵だ。店番(みせばん)なんかできるかよ」
「店番じゃないですよ。配達(はいたつ)を頼(たの)みたいって…」
「他(ほか)をあたってくれよ。そんなの、探偵のやることじゃないだろ?」
「でも、配達先(さき)が…問題(もんだい)なんですよ。その住所(じゅうしょ)、調(しら)べてみたら墓地(ぼち)だったんです」
 探偵は椅子(いす)から飛(と)び上がるように立ち上がると、「やめろ…。それは…、ダメだろ。断(ことわ)ってくれ。俺は…俺は、人間(にんげん)しか相手(あいて)にしないんだ」
「恐(こわ)いんですか? これを解決(かいけつ)したら、商店街の他の店からも依頼がくるかもですよ」
<つぶやき>助手にとって仕事(しごと)がないと死活(しかつ)問題ですよね。さて、真相(しんそう)はどうなんでしょ。
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1096「記憶がない」

2021-07-14 17:41:19 | ブログ短編

 朝、学校(がっこう)に行くと…。僕(ぼく)が思いを寄(よ)せている彼女が話しかけてきた。僕が来るのを待(ま)っていたようだ。僕は、突然(とつぜん)のことにどぎまぎしてしまった。彼女は小声で言った。
「おはよう…。昨日(きのう)の…返事(へんじ)をするね。あたしで良(よ)かったら、付き合ってもいいよ」
 昨日の返事って…。どういうことだ。僕は、何を言ったんだろう? 僕は思わず、
「あの…、ごめん。ちょ、ちょっと、考(かんが)えさせてもらってもいいかな?」
「えっ、どうして? あなたから…付き合いたいって言ったんじゃ…」
 僕はその場(ば)から逃(に)げ出した。ここは、この流(なが)れに乗(の)って付き合っちゃえばよかったのかもしれない。でも、僕には彼女に告白(こくはく)した記憶(きおく)がない!
 昨日…、僕は何をしてたんだろう。いくら思い出そうとしても、思い出せない。僕は片(かた)っ端(ぱし)から友だちに訊(き)いて回(まわ)った。友だちの一人が僕に言った。
「なに言ってんだよ。彼女に告白するから、隠(かく)し撮(ど)りしてくれってお前から――」
 僕は自分のスマホを見てみた。確(たし)かにそこには僕が彼女に告白する画像(がぞう)が――。そこから僕の意識(いしき)は途切(とぎ)れた。次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、どういうわけか僕の目の前には彼女の顔があった。
 こ、これは……。近(ちか)い、近すぎる…。彼女はほんのり赤い顔をしてうつむいていた。まさか、ぼ、僕は…彼女にキスをしてしまったのか???? 彼女は僕の服(ふく)をつかんで、
「あなたって…、こんなことする人とは思わなかったわ…」
<つぶやき>まさかの展開(てんかい)…。これは、彼の潜在意識(せんざいいしき)が暴走(ぼうそう)してしまったのかもしれない。
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1095「しずく134~楽しい?」

2021-07-12 17:42:23 | ブログ連載~しずく

 日野(ひの)あまりは、びくびくしながら水木涼(みずきりょう)の前に立った。あまりは剣道部員(けんどうぶいん)だが防具(ぼうぐ)をつけたこともなく、竹刀(しない)の持ち方もぎこちなかった。
「さぁ、打(う)ち込んできていいわよ」涼が言った。
「はい」あまりは返事(へんじ)をすると、竹刀を振(ふ)り上げながら、やけくそになって前へ突(つ)っ込んで行った。そして、竹刀を振り下ろす。竹刀は床(ゆか)に当(あ)たり、あまりの手から飛(と)び出した。
 涼の声がする。「ちゃんと見なさいよ。目を閉(と)じてちゃ誰(だれ)にも当たらないわよ」
「そ、そんなこと言っても…」あまりは呟(つぶや)いた。急(いそ)いで竹刀を探(さが)し回る。面(めん)をつけているので視野(しや)が狭(せま)くなっている。這(は)いつくばって何とか見つけると、立ち上がって…。今度は涼がどこにいるのかと見回した。すると、面を軽(かる)く叩(たた)かれた。
「こっちよ。どこ見てるの?」涼が呆(あき)れた顔で声をかけた。
 しばらくすると、多少(たしょう)はさまになってきた。竹刀を合わせられるようになり、涼も力が入ってきた。最後(さいご)は、あまりがへたばって倒(たお)れ込んだ。
 涼は、あまりの面を外(はず)してやって言った。「どう? 楽(たの)しいでしょ」
 そんなことを言われても、あまりは何と答(こた)えればいいのか分からない。涼は、
「今日は、もういいわよ。一緒(いっしょ)に帰(かえ)ろう」
 涼はあまりを立たせると、剣道場(けんどうじょう)を出て行った。他(ほか)の部員たちは二人を見送りながら、どうなっているのかとささやき合った。
<つぶやき>いい汗(あせ)をかいたので、今日の晩(ばん)ご飯(はん)はきっと美味(おい)しいよ。でも、筋肉痛(きんにくつう)が…。
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