南スウェーデン便り

ときどき南スウェーデンの真ん中のイナカから、ときどき街からお便りします。

お隣オーガニック農家やめるってよ

2024-11-11 09:35:56 | イナカ便り
夏の間ボーボーと生えていた草をモトツレが刈った。


最初は納屋に残っていた大鎌でザクッザクッと刈っていたのだが、数年後に硬い草も刈れる草刈り機の壊れているやつを買ってきて修理して使うようになった。

その草の山を私がコンポスト(というか枠)に詰め込む。残りは畑に。

覆いもせず、外気にさらしっぱなしのまま上下を返すこともしないし家の床下を掘って出てきた粘土みたいな土も混ぜているせいで普通のコンポストのように草の発酵がすぐには進まないのだが、それでも2年もすれば分解されて黒っぽい土になる。…と言うと、コンポスト土は三か月ぐらいでできると思っている人にはものすごく呆れられる。

お隣のもと乳牛農家のおばさん(夫が亡くなり、今はお年寄りの集合住宅に住んでいる)が来ていたのでしばらく話し込む。

もっぱら話題になったのは、うちの近所でオーガニック農家として成功しているTさんがその有機農、無農薬農家のタイトルを返上する、というちょっとショッキングな話だった。

Tさんは今から25年ぐらい前にオーガニック農家として認証を受け、以来周りの土地を次々と買い上げてどんどん農地を広げていき、兼業化が進み跡取りの少ない農家の多いこの地域では珍しく経営も非常にうまくいている…とみんな思っていた。家にはプールがあるという(!)

Tさんの牛たち


「えっどうしてやめるの??」と聞いたところ、おばさんは「EUの補助金が減らされるかもしれないんだって。」と言う。
ああ、そういうことか…。

オーガニック農家がEUから多額の補助金を受けているという話はみんなが知っているが、誰でももらえるというわけではなくてうまくEUの条件を満たすように書類を作成し実行しなければならず、それが上手だったTさんはずっとその恩恵を受けて来た。が、その補助金が下がるかもしれない? で、だからオーガニック農家をやめる??

へえー…

勿論Tさんだって考えた末に決断したのだろうけれど、いろいろ考えさせられる。

まず、オーガニック農家が補助金なしに経営するのはやはり楽ではないのか、ということ。やれるだけやってもそれに見合う収益が出ないで疲弊するオーガニック農家の声が時々メディアで報道されているのを見て、「Tさんは経営がうまいんだな」と思っていた。でもそれもEUが潤沢な補助金をくれていたからという条件付きだったということか。

そして、Tさんがオーガニック農家をやめたら、うちに面している農地にも農薬がまかれるのだろうか?という不安もある。Tさん自身「昔はトラクターの運転席には何のしきりもなかった。昔の農家の男たちがわりと短命だったのは農薬を吸い込んでしまったせいかもしれない。」と言っていたことがあった。勿論それはふた昔ぐらい前の話なので、今の農薬にそれほどの毒性はないだろうけれど、それでも…

現実は厳しいなあ。でも、なんとかふんばっているオーガニック農家を応援したいから、少なくとも牛乳と卵とオートミールと肉はkrav(エコ認証)つきのものを買い続けようっと。









今年の猫一家

2024-10-27 07:28:58 | イナカ便り
あっという間に二か月がたってしまった…

とても悲しいことが起きてブログを書く気になれなかったこともその理由のひとつではあるけれど、それは比較的最近のできごとで、それ以前は単にサボっていた部分が大きい。

南スウェーデンも残暑が少し続いたのだが、それも終わって一度霜がおりてしまい、日本から戻ってから7月にまきなおして育っていたズッキーニやかぼちゃ類がやられてしまった。ズッキーニは五本食べられたけれどかぼちゃはまだ花が付き始めたころだったので間に合わなかった。結局食べることができたのはじゃがいもとねぎ(万能ねぎのようなものと西洋アサツキ)と水菜と小かぶだけだった。

そういうわけで畑はぱっとしなかったけれど、今年もまた二軒隣の家の猫がやってきて子猫を出産!かわいい四匹の子猫が生まれた。
最初は納屋の中にいたが、二週間ぐらいしたら外に出てきて、もっぱら私のいるトレイラーの下で走り回るようになった。

DNA鑑定をしたわけではないから定かではないけれど、去年から母猫のところに足しげく通ってくる太った雄猫が父ちゃんなのだろう。写真は去年狐のわなにかかった時のもの。

この母猫がうちで出産するようになってから四年になるけれど、こんなに白い子が生まれたのは初めてだ。


はねまわったり追いかけっこをしたり、ものすごいエネルギーで駆け回る子猫たちを飽かずに眺めているうちに夏が終わり、夏限定の「スコーネサマーカード」(夏限定の南西スウェーデン全域乗り放題切符」(二か月有効で595クローナ)が切れてしまった。

それまではその乗り放題切符で行き来していたのだが、町のアパートからイナカまでバスを乗り継いで来ると片道で117クローネ(1670円ぐらい)かかるようになり、私の経済をじわじわと圧迫するようになった。考えてみると去年まで彼女(母猫)は五月にやってきて子供を産んで8月には子猫を連れて「実家」に戻っていたのだが、今年はどういうわけか八月出産になったためにいろいろずれこんでしまったのだ。

私やモトツレが彼らをほっぽらかして町に帰ることはちょっとできなかった。去年うちにも母猫が普段いる農家にも狐が来て子猫たちをさらっていってしまったので、私たちは交替でイナカのトレイラーに泊って夜には柵を閉めて狐対策をしていたのだ。

…が、子猫たちはどんどん大きくなり、「もう狐が来ても大丈夫だろう」と判断したモトツレが母猫の実家に子猫を届けに行った。


翌日見に行ったら母猫と、なぜか父猫もいっしょにその家にいたそうだ。

とにかく今年は四匹みんな無事に大きくなってくれてよかった💛

テデトール

2024-08-27 09:18:59 | イナカ便り
ただいま~

日本から戻ってきたら、向かいの牧草地に若い牛たちが放牧されていた。


「さあイナカの水菜やズッキーニはどうなったかな」と思って畑を見たら…何もない。行く前には芽がでていたし、適度に雨も降っていたはずなのに??

ズッキーニはスウェーデンでは育てやすい野菜で、私のようなズボラでほったらかしにしていてもたいてい収穫がある。

「あれー」と思って畑をよくよく見ると…

(画像はありません)

地面に数十匹のなめくじがうじゃうじゃっと…!

もうすっかりスウェーデンに定着してしまったが、二十年ごろ前から南欧から渡って来たオレンジ色の「キラーなめくじ」…

一匹だけ写真を載せておく。

食べる勢い、繁殖の勢いが従来の黒いなめくじと比べると段違いだし、天敵がいないため手が付けられない。(ぬめぬめしすぎて鴨などが飲み込むことができないそうだ)

今年は気温が高く雨も降ったのでなめくじにとって最適な条件がそろってしまったようで、テレビやラジオでもニュースになっていた。

農薬はあるようだけれどできれば使いたくない。「コーヒーかすや卵の殻を砕いて地面に置いたり銅線を貼っておくとなめくじが嫌がる」などの話を聞いてやってみたことがあるが効果はなかった。

モトツレは「迷わずに殺す!」となめくじを見たら即シャベルで切っていた。

私もあてにしていた野菜が食べられてしまった怒りにかられて次々となめくじをシャベルで切断してしまった。

…それだけでもかなりおぞましいことをしているのに、更におそろしいことに、切断されたなめくじの死骸に他のなめくじがワッとたかってきて食べ始めるのを見る羽目になってしまった。彼らは天敵はいないが共食いをするのだった😱 😖 地獄絵図とはこのことか…

なめくじに対しても腹が立つけど、こんなおぞましいことをしている自分にも嫌気がさしてどっと落ち込む。

ということをある人に話したところ、彼女のコメントは明快だった。殺すべきではない。

つまり、こういうことだ…私たちは戦争や弾圧の報道を聞くと「人々を虫けらのように殺すなんて!」と言って暴力を使う側を断罪したりするけれど、では「虫けらのことを虫けらのように殺す」のはOKなのか? どうしてOKなのか? ナメクジが人間のじゃまだから殺してもいい、というのは〇〇人がじゃまだから殺してもいいという理屈と何が違うのか?

…反論できる理屈を私は持たない。

考えてみると殺すほどのことはないのだ。 もともと私は家庭菜園の管理が不慣れで、これまでもカメムシやら蛾やら青虫に野菜が食われてしまい、ほとんど食べられなかったことが何度かある。その度に「あーやられちゃった。」と言って諦め、今年の畑はゲームオーバーでまた来年がんばるか、なんて能天気に構えることができた。

…しかしそれはひとえに私にとって畑がただの気軽な趣味だからだが、畑をなりわいとしている農家だったらそうはいかないだろう。プロの農家は一体どうやって虫や病気の被害に対応しているのだろう?

…と思って「なめくじによる畑の被害」に関する動画を検索してみたところ、イギリスで農業を営んでいる今橋さんという方の動画チャンネルに行きついた。営利だが自然栽培農法を二十年続けており、化学肥料や農薬は使用していないらしい。

動画を何本か見ていると、温和な調子の今橋さんのお話とともに時々聞き覚えのある鳥のさえずりが聞こえ、気候ゾーンが私のいるスウェーデンと近いことがわかる。(日本発の新着の動画はまず蝉やコオロギの声が聞こえてきてホームシックになる😆

その今橋さんの農場も「なめくじさん」(と彼は言う)の問題は深刻だったという。彼もコーヒーかすやビールの罠を試したことがあるけれど、結局一番効果的なのは

「テデトール」

…薬名ではなく、「手でとる」こと。夜中に懐中電灯をつけて畑を回り、何と一時間に千匹のなめくじを取った日もあったとか😫 

「で、バケツに入れたそのなめくじさんたちに有難う、といいながら畑から離れたところに放すんです。」

ほー そうなのか。

「でも、戻って来ちゃうんですけどね。」

ええ~っ!

でも、そうやって手でとったり雨の季節にはなめくじが好きな野菜は植えないようにするなど、きわめて実直な方法を続けているうちになめくじは徐々に少なくなってきたのだそうだ。

それにしても彼は道楽で土いじりをしているおじさんではなくてプロの農家であるにもかかわらず全く鷹揚に構えていて、作物だけではなく害虫やなめくじ類をいちいちさんづけして呼んでいる。被害に困らないはずはないのに、害虫のことも共に生きる仲間として扱っているところはまるで宮沢賢治のようだ。

~それに引き換えちっぽけな畑のなめくじに怒り狂って殺戮に走ったり畑から逃げ出したりした自分は何なのだろう…

もうそんなのはやめたい!

というわけで、私もテデトールを実践しようと決心。バケツを持って畑を一週したら数十匹ぐらい「なめくじさん」が集まったので、うちの敷地の一番はずれにお引き取り願った。

次の日に畑を見たらなめくじは五匹ぐらいしかいなかったが、その日はよく晴れていたから引っ込んでいたのだろう。

その翌日は雨。その前に雨が降った時は普段なめくじが通らないようなアスファルトの道にまでどんどんおしよせてきて心が折れそうになったので覚悟はしていた。

…が、雨上がりにバケツを持って畑にでてみたものの、十匹ぐらいしか見つけられない。

「何が起こったんだろう??」

理由はわからない。もちろんイチゴや野菜の若い芽は食べつくしてしまったからうちの畑に興味がなくなっただけかもしれないけれど、とにかく畑にうごめいていたなめくじの群れはほとんど消えてしまった。

<追記>
この数週間後にこのイギリスの今橋さんのyoutubeチャンネルをのぞいたところ、「イギリスから帰国します」という報告がアップされていてびっくり!でも日本で拠点を見つけてご自身の農法メソッドを伝える活動を続けていくという。スウェーデンと気候が近いところからの発信ではなくなることがちょっと残念だけれど、日本からの動画も楽しみだ。
今橋さんの動画はこちら→https://www.youtube.com/watch?v=ObM9K2Xfalw
















ハーブと五月の食費

2024-06-10 05:41:59 | イナカ便り
イナカでトレイラー生活。

ここのところ気温が低い日が続き、あてにしていた水菜も全然大きくならない…
もう一つあてにしていたのは去年育ったケールがまた芽を出すことだったのだが、冬越しができなかったもよう。これまたがっかり。

でも、ハーブ類は元気に育っている。

ミント。


タイム。


オレガノ。

まいた覚えのないセージ。


これはこぼれ種から毎年育つキャラウェイ。

花が咲く前に一部をドライハーブにしておこう…ということで、オレガノ、ミント、タイムを収穫して吊るす。



さて五月の食費は…
もう細かく書くのはやめるが、五月も1200krぐらいだった。

しかし!そのうち400krは外食だった。たまたま遠くに住んでいる友だちが会議で私の職場の近くに来て「ランチしない?」と誘ってくれたり、同僚と珍しくランチに行ったりしたための出費。これは食費と言うよりは交際費として別に数えてもいいのかもしれない。

その二度のランチはどうだったかというと…友だちや同僚と一緒だったから行く価値はあったけれど、やっぱり自分にとってこの国の外食は魅力がない。おかげでレストランが恋しくて節約したくない!などということにはならない。いいことか悪いことかわからないけれど…いや、やっぱり自分にとってはありがたいことだ。

だから実質的な食費は800クローナだったということになる。相変わらず卵、牛乳、小麦粉をオーガニック物にしているのにどうして安くなったかというと、理由は主にこのトレイラーに住んでいて冷蔵庫が小さいため、主に乾物やパスタ類ばかり食べていることによる。平日ならバスで店のあるところまで行けないことはないが、面倒で行ったことはない。町に住んでいるとスーパーに行ってつい安い菓子パンとかチップスを買ってしまうけれどその機会もなくなって節約になったというわけ😄

一人暮らしを始めて「これは相当節約しないと危ないのでは」と危惧して自分の出費を見直してみたのだが、今までの記録を見ると「何だ。そんなに心配することなかったかも」と楽天的な気分になって来た。

アパートの管理費は安くはないがインターネット接続や水道と暖房費は込みになっているし、電気代も毎月だいたい200kr台なのであまり大したことはないし、アパートの屋根に太陽電池パネルがついているので夏は安くなる。このアパートが気に入った理由の一つはそれだった。

家賃の他に毎月落ちていくのは職場への交通費、携帯の料金と組合費。携帯はその気になれば今の月149kr(インターネットは使い放題ではなく月10ギガ)をもっと下げたプランに申し込むこともできるが、イナカにいる時にインターネットを使いたいので秋まではこのままにしておきたい。

私は服飾、アクセサリー、化粧品のたぐいにはほとんどお金を使っていない😅ので、そのほかの出費と言えばひと月に二度ぐらい映画を見る程度。それからkindleで本を買ったり、「ポリタスTV」というインターネットのニュース番組に課金したりしているが、大した額ではない。

それから毎年寄付先を変えながら少額の寄付もしているのだが、それでもお金は十分余る。これらを歯医者や旅行、家具や家電などの購入(するかどうかわからないが)等のために貯金する余裕はありそうだ! ああ、よかった…







永住権

2024-05-26 10:02:45 | イナカ便り
菜の花とりんごの花


菜の花はすでに満開を過ぎて、実がなり始めている。これが秋になると菜種油として収穫される。ここ南部は菜種油の名産地だ。


ここのところ毎年子猫を産みに来る近所の猫が巡回してきた。


 全てがいつもと同じような夏…といっても私は独り者になったから少し違う夏になるかも?

 私が「おひとり様になった」と言うと、よくこのような「よくある質問と答え」に発展する。

「それで、あなたはスウェーデン国籍なんですか?」
「いえ、日本籍ですけど」
「離婚してビザとかに問題はないの?」
「いや、っていうか、実はもともと結婚していなかったんです。」
「えっ じゃ留学生ビザでスウェーデンに来たとか?」
「そうじゃないんですけど『スウェーデン人との結婚に準ずるような関係』というカテゴリーのビザをもらって来たんです。」
「結婚しないでビザが下りたの?まさか!」
…まあ、今は当時より厳しくなっているかもしれないけれど、スウェーデンは今でも事実婚で配偶者のようなビザがとれる数少ない国の一つである。近隣の北欧諸国でそれはできない。

 びっくりされるのはそれだけではない。こちらに引っ越して二年たった時に簡単な面接を受けて永住権があっさりと取れ、さらにその一年後に自動的にスウェーデン国籍取得の申請資格も下りる、と言うと仰天される。実際、一緒にスウェーデン語を習った中東や東欧の友人たちのほとんどはもうスウェーデン国籍を取得して二重国籍者またはスウェーデン人になっている。

 ふりかえって日本はと言うと、まず国籍取得(「帰化」ともいう)の条件がはるかに厳しいし、日本国籍取得にはもとの国籍を離脱することが求められている。永住権であってもハードルが高いのだが、いや、それよりもまず正式な在留資格を得るためまでの道のりも険しい。
 
 最近、かつての技能実習制度の改正と抱き合わせに「行いが不謹慎」だと永住権があっても容易に取り消し(とどのつまりは国外退去?)できるよう法律を変更するという閣議決定が行われたと新聞で読んだ。そして、その「不謹慎な行い」の例の中には「在留カード携帯を忘れた」「交通違反」「税金の滞納」程度の些細な違反も含まれているという。

 どうしてそんな厳しい措置をとらなければいけないのか、というと、日本政府の中に「人手不足だから外国人労働者に門戸は開放するけれど、いつでも追い返せるようなシステムを整えなければ日本は不良外国人のあふれる変な国になってしまう」という懸念があるためだ、という解説を聞いた。

 は??…ちょっと呆れてしまう。日本の政府はまだ日本を「ここで働いてお金を稼ぎたい!ずっと住みたい💛」と外国人が殺到するような「約束の土地」だと思っているんだろうか。日本の賃金がいくらで、日本円がどれだけ下がっていて、教育や福祉のケア(特に外国人に対して)がどれだけ頼りないかわかっているんだろうか。移民先や出稼ぎ先として日本よりまともな国があることを知らないのだろうか?

 よく国防増強に反対を唱える若者とかが「お花畑」とバカにされているらしいけれど、お花畑というのはこういうずれた妄想に駆られて外国人から日本を「守る」ことに一生懸命で、もっと大切なことを怠っているひとたちのことなのではと思う。