南スウェーデン便り

ときどき南スウェーデンの真ん中のイナカから、ときどき街からお便りします。

ポリタスTV

2024-11-23 10:24:52 | 街便り
アメリカの大統領選挙につづく兵庫県知事選 の開票結果のニュースを聞いて、「へえ~~」と驚くことしきり。

そしてその結果を左右したと言われているSNSの影響力というものが不気味でたまらない。

でも考えてみるとコロナの頃にはワクチン疑惑の陰謀論を強固に信じている人が知り合いの中にもいたし、ウクライナ侵攻当初は妙にロシアを弁護する人たちがいて、その人たちの間にはだいたい同じようなウェブサイトやツイートのリンクが拡散されている様子が見えていた。今にはじまったことではないのかもしれない。

最近「岐阜県の風力発電所建設の反対運動が云々」というニュースを聞いただけですぐ頭に浮かんだのは「それって原発の業者や原発賛成のロビイストがたきつけた怪しい運動なんじゃない?」ということだった。スウェーデンでもそういう運動があり、その背景には原発賛成派の影響があるといわれていたからだ。(念のために言っておくと風力発電には景観、周波数、騒音などの問題は確かにあるので反対運動がおこるのは不思議なことではない。)

イナカの風車


…が、新聞記事を読んだらまるで違う展開が書かれていた。(NHK
の報道)何と県の警察がわざわざ風力発電会社に反対派住民について情報提供をしたという信じられない話だった。住民が県などを相手に訴訟を起こして勝訴したという。警察が??どうして??…理解ができず頭がくらくらする。

頭のどこかにいつまでも「原発賛成派の攪乱作戦じゃないの??」という先入観がこびりついていて釈然としなかったのだが、丁度いいタイミングでインターネットメディアのポリタスTVがこの名古屋高等裁判所 による第二審の判決文を解説していたのでそれを見た。

やっぱり新聞の報道のとおりだということがわかった。大垣警察は「こういう風力発電所反対運動を展開するような輩は不穏分子であるから取り締まらなければならない」と信じて、反対グループのメンバーの個人情報を調べて自ら風力発電業者に提供を申し出ただけではなく、わけのわからない忠告もあれこれしていた。

…それが警察の職務だと思っていたわけ??と大いに呆れたけれど、判決文は爽快なくらい警察を断罪していて個人情報の提供だけではなく収集することも法にふれうると述べられていた。上告はしないとのことで住民の勝訴が確定。よかった~…って、当たり前でしょ

「ポリタス」ではジャーナリストと弁護士が二人で判決文の大切な部分をじっくり時間をとって読んで解説してくれたおかげで事の次第もわかったし、それが法的に見てなぜ、どのようにアウトとされたかということもわかってすっきりした。自分が「自然エネルギー発電反対運動をする人たちは怪しい」という偏見を持っていたこともあぶりだされてきた。

誰がでっちあげたのかもわからないような情報がネットに飛び交って何を信じたらいいのかわからないような今、こういうていねいな番組があること、外国に住む私でもそれが聞けるということが本当にありがたい💛

この訴訟をおこした方たちの「もの言う自由」を守る会のホームページ


お隣オーガニック農家やめるってよ

2024-11-11 09:35:56 | イナカ便り
夏の間ボーボーと生えていた草をモトツレが刈った。


最初は納屋に残っていた大鎌でザクッザクッと刈っていたのだが、数年後に硬い草も刈れる草刈り機の壊れているやつを買ってきて修理して使うようになった。

その草の山を私がコンポスト(というか枠)に詰め込む。残りは畑に。

覆いもせず、外気にさらしっぱなしのまま上下を返すこともしないし家の床下を掘って出てきた粘土みたいな土も混ぜているせいで普通のコンポストのように草の発酵がすぐには進まないのだが、それでも2年もすれば分解されて黒っぽい土になる。…と言うと、コンポスト土は三か月ぐらいでできると思っている人にはものすごく呆れられる。

お隣のもと乳牛農家のおばさん(夫が亡くなり、今はお年寄りの集合住宅に住んでいる)が来ていたのでしばらく話し込む。

もっぱら話題になったのは、うちの近所でオーガニック農家として成功しているTさんがその有機農、無農薬農家のタイトルを返上する、というちょっとショッキングな話だった。

Tさんは今から25年ぐらい前にオーガニック農家として認証を受け、以来周りの土地を次々と買い上げてどんどん農地を広げていき、兼業化が進み跡取りの少ない農家の多いこの地域では珍しく経営も非常にうまくいている…とみんな思っていた。家にはプールがあるという(!)

Tさんの牛たち


「えっどうしてやめるの??」と聞いたところ、おばさんは「EUの補助金が減らされるかもしれないんだって。」と言う。
ああ、そういうことか…。

オーガニック農家がEUから多額の補助金を受けているという話はみんなが知っているが、誰でももらえるというわけではなくてうまくEUの条件を満たすように書類を作成し実行しなければならず、それが上手だったTさんはずっとその恩恵を受けて来た。が、その補助金が下がるかもしれない? で、だからオーガニック農家をやめる??

へえー…

勿論Tさんだって考えた末に決断したのだろうけれど、いろいろ考えさせられる。

まず、オーガニック農家が補助金なしに経営するのはやはり楽ではないのか、ということ。やれるだけやってもそれに見合う収益が出ないで疲弊するオーガニック農家の声が時々メディアで報道されているのを見て、「Tさんは経営がうまいんだな」と思っていた。でもそれもEUが潤沢な補助金をくれていたからという条件付きだったということか。

そして、Tさんがオーガニック農家をやめたら、うちに面している農地にも農薬がまかれるのだろうか?という不安もある。Tさん自身「昔はトラクターの運転席には何のしきりもなかった。昔の農家の男たちがわりと短命だったのは農薬を吸い込んでしまったせいかもしれない。」と言っていたことがあった。勿論それはふた昔ぐらい前の話なので、今の農薬にそれほどの毒性はないだろうけれど、それでも…

現実は厳しいなあ。でも、なんとかふんばっているオーガニック農家を応援したいから、少なくとも牛乳と卵とオートミールと肉はkrav(エコ認証)つきのものを買い続けようっと。