南スウェーデン便り

ときどき南スウェーデンの真ん中のイナカから、ときどき街からお便りします。

テデトール

2024-08-27 09:18:59 | イナカ便り
ただいま~

日本から戻ってきたら、向かいの牧草地に若い牛たちが放牧されていた。


「さあイナカの水菜やズッキーニはどうなったかな」と思って畑を見たら…何もない。行く前には芽がでていたし、適度に雨も降っていたはずなのに??

ズッキーニはスウェーデンでは育てやすい野菜で、私のようなズボラでほったらかしにしていてもたいてい収穫がある。

「あれー」と思って畑をよくよく見ると…

(画像はありません)

地面に数十匹のなめくじがうじゃうじゃっと…!

もうすっかりスウェーデンに定着してしまったが、二十年ごろ前から南欧から渡って来たオレンジ色の「キラーなめくじ」…

一匹だけ写真を載せておく。

食べる勢い、繁殖の勢いが従来の黒いなめくじと比べると段違いだし、天敵がいないため手が付けられない。(ぬめぬめしすぎて鴨などが飲み込むことができないそうだ)

今年は気温が高く雨も降ったのでなめくじにとって最適な条件がそろってしまったようで、テレビやラジオでもニュースになっていた。

農薬はあるようだけれどできれば使いたくない。「コーヒーかすや卵の殻を砕いて地面に置いたり銅線を貼っておくとなめくじが嫌がる」などの話を聞いてやってみたことがあるが効果はなかった。

モトツレは「迷わずに殺す!」となめくじを見たら即シャベルで切っていた。

私もあてにしていた野菜が食べられてしまった怒りにかられて次々となめくじをシャベルで切断してしまった。

…それだけでもかなりおぞましいことをしているのに、更におそろしいことに、切断されたなめくじの死骸に他のなめくじがワッとたかってきて食べ始めるのを見る羽目になってしまった。彼らは天敵はいないが共食いをするのだった😱 😖 地獄絵図とはこのことか…

なめくじに対しても腹が立つけど、こんなおぞましいことをしている自分にも嫌気がさしてどっと落ち込む。

ということをある人に話したところ、彼女のコメントは明快だった。殺すべきではない。

つまり、こういうことだ…私たちは戦争や弾圧の報道を聞くと「人々を虫けらのように殺すなんて!」と言って暴力を使う側を断罪したりするけれど、では「虫けらのことを虫けらのように殺す」のはOKなのか? どうしてOKなのか? ナメクジが人間のじゃまだから殺してもいい、というのは〇〇人がじゃまだから殺してもいいという理屈と何が違うのか?

…反論できる理屈を私は持たない。

考えてみると殺すほどのことはないのだ。 もともと私は家庭菜園の管理が不慣れで、これまでもカメムシやら蛾やら青虫に野菜が食われてしまい、ほとんど食べられなかったことが何度かある。その度に「あーやられちゃった。」と言って諦め、今年の畑はゲームオーバーでまた来年がんばるか、なんて能天気に構えることができた。

…しかしそれはひとえに私にとって畑がただの気軽な趣味だからだが、畑をなりわいとしている農家だったらそうはいかないだろう。プロの農家は一体どうやって虫や病気の被害に対応しているのだろう?

…と思って「なめくじによる畑の被害」に関する動画を検索してみたところ、イギリスで農業を営んでいる今橋さんという方の動画チャンネルに行きついた。営利だが有機農法を二十年続けており、化学肥料や農薬は使用していないらしい。

動画を何本か見ていると、温和な調子の今橋さんのお話とともに時々聞き覚えのある鳥のさえずりが聞こえ、気候ゾーンが私のいるスウェーデンと近いことがわかる。(日本発の新着の動画はまず蝉やコオロギの声が聞こえてきてホームシックになる😆

その今橋さんの農場も「なめくじさん」(と彼は言う)の問題は深刻だったという。彼もコーヒーかすやビールの罠を試したことがあるけれど、結局一番効果的なのは

「テデトール」

…薬名ではなく、「手でとる」こと。夜中に懐中電灯をつけて畑を回り、何と一時間に千匹のなめくじを取った日もあったとか😫 

「で、バケツに入れたそのなめくじさんたちに有難う、といいながら畑から離れたところに放すんです。」

ほー そうなのか。

「でも、戻って来ちゃうんですけどね。」

ええ~っ!

でも、そうやって手でとったり雨の季節にはなめくじが好きな野菜は植えないようにするなど、きわめて実直な方法を続けているうちになめくじは徐々に少なくなってきたのだそうだ。

それにしても彼は道楽で土いじりをしているおじさんではなくてプロの農家であるにもかかわらず全く鷹揚に構えていて、作物だけではなく害虫やなめくじ類をいちいちさんづけして呼んでいる。被害に困らないはずはないのに、害虫のことも共に生きる仲間として扱っているところはまるで宮沢賢治のようだ。

~それに引き換えちっぽけな畑のなめくじに怒り狂って殺戮に走ったり畑から逃げ出したりした自分は何なのだろう…

もうそんなのはやめたい!

というわけで、私もテデトールを実践しようと決心。バケツを持って畑を一週したら数十匹ぐらい「なめくじさん」が集まったので、うちの敷地の一番はずれにお引き取り願った。

次の日に畑を見たらなめくじは五匹ぐらいしかいなかったが、その日はよく晴れていたから引っ込んでいたのだろう。

その翌日は雨。その前に雨が降った時は普段なめくじが通らないようなアスファルトの道にまでどんどんおしよせてきて心が折れそうになったので覚悟はしていた。

…が、雨上がりにバケツを持って畑にでてみたものの、十匹ぐらいしか見つけられない。

「何が起こったんだろう??」

理由はわからない。もちろんイチゴや野菜の若い芽は食べつくしてしまったからうちの畑に興味がなくなっただけかもしれないけれど、とにかく畑にうごめいていたなめくじの群れはほとんど消えてしまった。



















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