韓国でも、お正月には必ずお餅を食べます。
旧暦でお正月を祝う韓国では、ソルナル（旧正月）の元旦（今年は2月14日）に、韓国式のお雑煮を食べるのが習わしです。
韓国式雑煮（トック） 冬ソナでヨン様が屋台で食べていたのはコレ
お正月を前に、各家庭ではお母さんが買ってきたお餅をベランダに干し、乾いたら子供たちと一緒に切るのだとか。日本でも、お正月前に伸し餅を切るご家庭は多いですね。
もち米でできた日本のお餅は、伸びが良いのが特徴です。韓国のお雑煮は、うるち米でできた粘り気の少ないお餅（トック）を、小判型に薄く切って使います。真っ白なトックは「純粋・長寿」を象徴し、一年の健康と幸せを願って食べます。
トック 最近は日本のスーパーでも見かけます
お雑煮の他には、先祖供養の茶礼床（チャレサン）というお膳に、沢山の伝統料理を並べます。その中には、花模様の餅型を押した節餅（チョルピョン）もあります。これは先述のトックと違い、うるち米のかたまりを、包丁を使わず手で「もみ切って」作ります。
韓国のお餅は、原材料や製法が多様です。
たとえば代表的な餅菓子を挙げてみますと、「引っ張って切る」引切味（インジョルミ）、モチ粉をまとめて焼いた花煎（ファジョン）、蒸し器で蒸すしとぎ餅（シルトック）、松葉を敷いて蒸す半月形の松餅（ソンピョン)など
ちなみに、松餅（ソンピョン）には、「旧盆（チュソク＝秋夕）に上手に作ると可愛い子供に恵まれる」という言い伝えがあり、阿部美穂子さんも挑戦したそうです。
このようにお正月以外にも、冠婚葬祭、慶祝行事、出産、誕生日、還暦など、人生の節目にお餅は欠かせません。古来より男子が一冊の本を習い終わると餅を配って祝う習慣は、『宮廷女官・チャングムの誓い』でも紹介されました。
また、韓国映画やドラマのクランクイン前には、ヒット祈願と撮影の無事を願う祭祀「コサ」を行います。
ここでは、韓国で〝福〟を表す豚の頭、果物、お餅が供えられます。お餅には「稲の魂が宿っている大切な食べ物」というスピリチュアルな意味合いも込められているようです。
エンタメ作品でも、良い事があると頻繁にお餅が登場します。映画『インタビュー』では、兵役中の息子に面会する親が「うちの子はきなこ餅が好物」といって、抱えきれないほどの餅を差し入れします。会えない息子を思い、一つ一つ手でこねる……まさに親心ですね。
ドラマ『美しい彼女』では、死を予感したボクサーのファン・ジュノ（イ・ビョンホン）が最期の試合に臨む前、妻のソニョン（シム・ウナ）に言います。
「すごく食べたいものがある。施設にいた頃、月一回、両手一杯お餅をくれる人が来た。つきたてのお餅にごま油をたっぷりぬって、塩ふって食べた……うまかったな。今度作ってくれない？」
本当なら、お餅は祝いの場所で喜びを分かち合いながら食べるものです。もう食べることはないと感じながらあえて頼むジュノに、ソニョンが涙をこらえてうなずいたのは言うまでもありません（それにしてもこのお餅、うまそう）。
韓国の人にとっておいしいお餅は、まさに幸福の記憶であり、人生にとってかけがえのない味なのです。
チェ・ジウは、ボランティア活動で、独り暮らしの高齢者たちに食事とお餅、温かい衣服を提供したことで話題となりました。
また、アジアの歌姫・BoAと、東方神起のファンクラブ会員たちが、それぞれの本国でのカムバックを祝い、ペクソルギ（うるち粉を蒸した純白の餅。昔から赤ちゃんの誕生百日目や一歳のお祝いに健康を願い配られた）を番組のスタッフや共演者に配ったそうです。
日本なら、差し入れは和菓子や洋菓子、お祝い事なら紅白饅頭が定番です。韓国での生活文化とお餅の密接な関係がうかがえますね。
ただ、お餅といえば気になるのがカロリーです。しかし最近の研究では、消化がよく胃腸に優しく、着色に人参・緑茶・よもぎなど自然のものを利用する健康的な食品との結果が出ました。S ラインを目指す女性たちにも大変注目されているとか。
韓国には、新年を迎えるにあたり、こんな格言が用いられます。
「? ?? ? ???（セ マウム セ トゥスロ） 新しい心 、新しい気持ちで」
気持ちも新たに頑張りましょう、という意ですね。
一年の幸せを祈って、そして昨年の無事に感謝して、新たな気持で韓国のお餅を味わってみませんか？
韓国餅盛り合わせ（モドゥムトック）
左から 1列目（上）バラムトック （下）インジョルミ
2列目 ムジゲトック
3列目 シルトック
4列目 ソンピョル
＊この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ！KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。