雪見の窓から

観たり聴いたりときどきおしごと

映画『とら男』を観る

2022-10-30 19:59:00 | 映画

映画『とら男』予告編



1992年に起きた「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」を題材に、当時担当した元刑事(西村虎男)本人が主演を務めた異色作。

SNSや新聞で取り上げられているのを読んで気になっていました。

本編は、フィクションとドキュメンタリーが入り混じり、どこまでが事実でどこからが虚構なのか、一見しただけでは分かりづらい構造。


事件から30年が過ぎ、人びとの記憶から忘れられていく一方、2007年に時効を迎えてもなお、解決に執念を燃やした「とら男」。

孤独なとら男の鋭い眼光に導かれ、事件の全容が次第に見えてくる。

今ももしかしたら、すぐ隣に真犯人がいるかもしれないという恐怖。

韓国映画『殺人の追憶』を見た後、雨の木曜の夜には絶対に出歩きたくない、と思ったあの戦慄が蘇る。

とら男は粘り強く本件の真相に迫りながらも、異動で現場を外された。それも2度。

なぜ、目星がついていながら犯人を検挙できなかったのか。

その顛末を、本作品の基になった西村虎男氏の著作「千穂ちゃんごめん!」で読んだが、良くここまで書いてくれたという思いと、いやあ…….国家権力やば過ぎるやろ、と今更ながら慄然。



被害者が同年代であること、同郷の監督がメガホンをとったことなど、恥ずかしながら映画を観るまで知らなかった。
何も知らなかったし、何もできなかった。

今なら解決できていた可能性が高いだけに、やるせない。

映画のロケ地近くを通りかかるたび、複雑な思いにかられてしまう。

見た(特に同郷の)人といろいろ話したくなった。


映画『とら男』公式サイト
映画『とら男』公式サイト

映画『とら男』公式サイト

「犯人はまだ生きているーー」前代未聞! 映画史上初! 元刑事が映画主演!! 出演:西村虎男、加藤才紀子監督・脚本:村山和也











30年めの気づき〜「岸辺のアルバム」を観る〜

2022-10-26 00:36:00 | 日記
日本映画専門チャンネルで放送された「岸辺のアルバム」(山田太一作)最終回を録画で観る。(自分は先々週見たけど、母が観たいというので)

初めてこのドラマを観たのは大学2年になる春休み。
TBSで再放送していた。


当時は年代の近い繁(国広富之)の目線で観ていた。

姉を凌辱したアメリカ人に「I despise you」と覚えたての英語で立ち向かおうとするシーンが忘れられなかった。

 今回は、年齢や立場でいうと、八千草薫演じる則子に近いはずだが、それほど共感しなかった。何しろ、綺麗だ。浮気相手が竹脇無我というのも、釣り合いという点では完璧だが、二人が美しすぎて生活感がなく見惚れてしまうので、不倫の疾しさを感じないのだ。

それよりも、謙作(杉浦直樹)だ。
妻には浮気され、子供は離反、会社は潰れ、家は流され。踏んだり蹴ったりだ。

「この家以外、何も働いた成果がない」という叫び。

悲哀というより、それ以外生きようがなかった昭和の男の強さと弱さを、見事に表していた。

そして家が流される直前、則子と謙作が、家に戻って初めて互いの本音をぶつけ合う瞬間。
有名な台詞「アルバムが大事だって言ったわね」から始まる、則子の謙作への糾弾、そして「贅沢かもしれないけど、寂しかったの」に着地する本音を吐露した直後に、外から消防隊員によって窓ガラスが破られる。

これは、第一回のラジコン飛行機が川原から窓を割って飛び込んできて、田島家の平穏が壊れる瞬間とリンクしていると、今更ながら、初めて気がついた。
職人技だ。



興奮してジャニス・イアンのCD、大学生協に買いに行ったなあ。

藤井風スタジアムライブへ行く

2022-10-22 01:20:00 | 音楽
藤井風スタジアムライブに行ってきました。

魔法にかかったように余韻に浸り過ごした一週間でした。

大阪に行くのも、野外のライブも久しぶりのことです。
新幹線のコーヒーも復活。



パナソニックスタジアム吹田。
大阪暑い!

ここで音楽のコンサートが行われるのは初だとか。

十数年ぶりに再会する学生時代の先輩Eさんとも無事会えて、いざスタジアム内へ。

アリーナ8列目。いやー嬉しかった。
(撮影は終演後)

日々生活に追われる自分に、天からのポイントバック…だと思うことにしよう(ちなみに同日に発表があったアイスショーはサクッと落選)。

2時間弱のステージは、体感20分くらい。

これが、藤井風か。

線が細いイメージあったけど、とんでもない。そのエンターテイナーぶりにただただ圧倒されました。

ずっと生で聴きたかった曲(「何なんw」「帰ろう」)や踊りたかった曲(「さよならべいべ」)、etc,…全て演ってくれて大満足。

若いファンが多かったのと、隣の同世代くらいの女性がずっと泣いてたのが印象的でした。わかるよ。




スタジアムの外には秋の風が吹いていた。

空がだんだん暮れていく感じや、夜に歌声が響いて溶けていく瞬間を、本当に久しぶりに思い出しました。

去年の6月、友達が“最近の推し”だと勧めてくれ、ドラマ主題歌の「旅路」が気になっていたので見てみたYou Tubeでの演奏に度肝を抜かれ、以来ずっと車のなかで彼の曲を聴いています。

たすけられています。


以下、大阪点描。


ビルの間に古民家。


撤去された自転車たち。


この文字を見ると自動的に脳内で欧陽菲菲が歌い出す世代。


〆はたこ焼き。
新幹線直前に急いで食べて火傷した笑。

音楽がある暮らしは、やっぱり、楽しい。