映画『とら男』予告編
1992年に起きた「金沢女性スイミングコーチ殺人事件」を題材に、当時担当した元刑事(西村虎男)本人が主演を務めた異色作。
SNSや新聞で取り上げられているのを読んで気になっていました。
本編は、フィクションとドキュメンタリーが入り混じり、どこまでが事実でどこからが虚構なのか、一見しただけでは分かりづらい構造。
事件から30年が過ぎ、人びとの記憶から忘れられていく一方、2007年に時効を迎えてもなお、解決に執念を燃やした「とら男」。
孤独なとら男の鋭い眼光に導かれ、事件の全容が次第に見えてくる。
今ももしかしたら、すぐ隣に真犯人がいるかもしれないという恐怖。
韓国映画『殺人の追憶』を見た後、雨の木曜の夜には絶対に出歩きたくない、と思ったあの戦慄が蘇る。
とら男は粘り強く本件の真相に迫りながらも、異動で現場を外された。それも2度。
なぜ、目星がついていながら犯人を検挙できなかったのか。
その顛末を、本作品の基になった西村虎男氏の著作「千穂ちゃんごめん!」で読んだが、良くここまで書いてくれたという思いと、いやあ…….国家権力やば過ぎるやろ、と今更ながら慄然。
被害者が同年代であること、同郷の監督がメガホンをとったことなど、恥ずかしながら映画を観るまで知らなかった。
何も知らなかったし、何もできなかった。
今なら解決できていた可能性が高いだけに、やるせない。
映画のロケ地近くを通りかかるたび、複雑な思いにかられてしまう。
見た(特に同郷の)人といろいろ話したくなった。
映画『とら男』公式サイト