名盤ライブ「Sweet16/佐野元春」に行ってきました。
名盤ライブとは:
名盤ライブ
名盤と呼ばれるアルバムをアーティスト自身が再現するライブイベント。当時のアルバム制作過程に迫るドキュメントDVDやアーカイブ本も付属する企画です。
名盤ライブ
来場者にはドキュメンタリーDVDとアーカイブBOOKの特典があります(今回は配信&通販も)。
名盤ライブといえば、2013年「SOMEDAY」ライブでの、アナログレコードに針を落とすオープニングから、伊藤銀次さんのサプライズ出演でしめくくった興奮、忘れられません。
この時のBlu-rayには、今より10歳若い私が楽しそうに笑っている、らしいです(未確認)。
あの頃よりちょっとくたびれてはいるものの、久々の佐野さんのライブということで、緊張感とともに、いざ横浜へ。
この日は朝から雨模様。
雷鳴から始まるこのアルバムの、符牒のような天気です。
セットリスト
#01 ミスター・アウトサイド
#02 スウィート16
#03 レインボー・イン・マイ・ソウル
#04 ポップチルドレン
(最新マシンを手にした陽気な子供達)
#05 廃墟の街
#06 誰かが君のドアを叩いている
#07 君のせいじゃない
#08 ボヘミアン・グレイブヤード
#09 ハッピーエンド
#10 ミスター・アウトサイド(リプリーズ)
#11 エイジアン・フラワーズ
#12 また明日…
このアルバムは、初めて自分で買った佐野さんのCDでした。
それまではずっと兄のレコードやカセットで聴いていました。
そもそも80年代後半、周りには尾崎や美里や大江千里やバービーボーイズや松岡英明やTMやBOØWYを聴く人はいても、佐野元春を聴いている同年代がいませんでした。
「Sweet16」が発売された1992年夏。兄は、留学中でした。
配信もネットもない時代。
大学2年の私は、「佐野元春の新譜を買わねば、そして兄に届けねば」と謎の使命感で、大学生協まで買いに行きました。
当時、右足靭帯損傷による松葉杖生活でしたが、妙な責任感に突き動かされ、リアルタイムで血肉となる摂取体験はまさにここから始まります。
古参ファンにとって80年代の佐野元春が神だったように、私にとっては90年代の佐野さんこそが師のような存在だったのです。
佐野元春元年の幕開けとなった曲
このアルバムのポップさを象徴する一曲。佐野さんがCMに出たのも事件でした。
以前、佐野さんをリスペクトするファンが集う音楽イベントに参加させて頂いた時、一番最初にかけさせて貰った思い出深い曲でもあります。
佐野さんはこの後、内省的でブルース要素の強い「The Circle」、バンド解散の記念碑的3枚組「The Golden Ring」、豊饒な「フルーツ」、ウッドストック録音の「THE BARN」と次々に傑作を発表、さらなる成熟期を迎えていきます。
それを追いかけるかのように、2000〜2010年代には私も毎月のようにライブやイベントに足繫く通うようになります。
賑やかなひと時に、浮世の憂さを忘れようとしていたのかもしれません。
タガを外すことはなくとも、現実と向き合うことから逃げて、こんなことをずっと続けているといつかしっぺ返しが来る、と内心思いつつも、楽しい世界にどっぷりと浸っていました。もう少し大人だったら生活とのバランスをとれたのでしょう。ただ当時の自分は全くそうではなかったのです。
そして2014年、あるファンイベントで、主催者の方にリクエストしたのがこのアルバムに収録された「ハッピーエンド」でした。
このアルバムは、リリース前年に亡くなった佐野さんのお父さんに捧げられています。
私の父も'14年当時、病床にありました。当時はイベント趣旨に合わせて選んだつもりでしたが、気づかぬうちに自身の気持ちを投影させていたのかもしれません。
話は変わりますが
8月に亡くなられた演出家松原信吾さんの追悼特集で、ご子息の慧さんが「現実にはハッピーエンドは有り得ない」と書いていました。
苦しいだろうな。
胸が痛くなりました。時が過ぎ、いつか彼に会うチャンスがあれば、いろんな話をしてみたいです(……余計なお世話ですが)
話を戻します
そんなわけで、すごくいいアルバムだけれど、個人的な思い入れが強すぎるゆえ、ある時を境に聴かなくなったのが、この「Sweet16」でした。
佐野元春に罪はない。ただ父の苦しみをよそに、楽しい世界への執着や誘惑を断ち切れなかった弱い自分を罰するような気持だったと思います。
他人からしたらまさに「知らんがな」案件ですが、当時はその思いの中に閉じ籠もっていました。
けれどこの日のライブで、右手を揚げて“新しく始めるんだぜ”と歌う佐野さんを見ていて、高かった心の障壁がようやく取り払われる気がしました。
もうそろそろ、封印を解いても良い時期だ。自分を責めるのにも飽きた。(許そう)と。
先日、10年ぶりに斉藤和義さんのライブに行った際にも、若い時とは異なる感慨だったり、解釈だったり、鼓舞だったりが舞い降りる経験をしました。
人生の答え合わせをするかのように、年を重ねてまた音楽を聴くことの効用って、確かにあると実感しています。
アンコール「ヤングフォーエバー」
‘あの日の仲間たちは皆 大人になって散り散りさ いつか僕はきっと長い手紙を書くだろう’
アンセムのように響きました。
帰宅後、ヘルパーさんのメール対応をした後、電話で約二時間仕事の打ち合わせ。さすがに疲れた〜。
とかく中年は忙しい😅
だから傍らには音楽があってほしい。
いつも心に佐野元春を。