雪見の窓から

観たり聴いたりときどきおしごと

癒しの味・韓国スープは心のサプリメント

2007-07-19 11:04:38 | 韓国グルメ

「韓国エンタメ作品に見るコリアン・フード」、今回は、韓国食文化のエキスがギュッとつまった「スープ」のお話です。

 

 

韓国では、「薬食同源=良い食事は薬と同じ」という考え方が浸透しています。

 

冬が寒く、乾燥した土地柄のため、食事は温かいものが好まれます。

 

また「????(イヨルチヨル)以熱地熱」という言葉もあります。

これは、熱を以(もっ)て、熱を治める、つまり暑い夏にこそ熱い料理を食べて夏バテを防ぐという意味ですね。

  

このようなお国柄ですから、とりわけ湯(タン)あるいは掬(クッ)と呼ばれるスープ類は毎食欠かせません。

 

種類も多くて具沢山なのが特徴です。韓国のスープは、飲むというより食べるものなのです。

「ハンバーガーは食べ飽きた。白いご飯とキムチスープが食べたい」。
これは、『オールイン』で、アメリカに逃亡したイナ(イ・ビョンホン)とチョング(ホ・ジュノ)が、ジャンクフードづけの毎日にうんざりし、望郷の思いで言う台詞です。
『B型の彼氏』では、ハミ(ハン・ジヘ)が、突然帰国したヨンビン(イ・ドンゴン)の父に食事を要求されます。その内容は、「汁物と即席キムチ。あとは肉料理があれば」というもの。若い未婚女性のハミがこれに応えるのも偉いですが、やはり何をおいても「ご飯と汁物とキムチ」が、韓国スタイルなのですね。

『チャングムの誓い』では、「ソルロンタン(雪濃湯)」という汁物が登場します。ドラマ前半の見せ場・ハン尚宮とチェ尚宮の競い合いで「飢饉に苦しむ民の心を知る料理」として、チャングム(イ・ヨンエ)とクミョン(ホン・リナ)がそれぞれ調理を担当します。
Soru1ソルロンタンは、牛骨や各部位の肉、舌、内臓を大釜で長時間煮込んだ庶民料理です。乳白色のスープに牛一頭の旨みが凝縮され、栄養満点。濃厚ながらマイルドな味は、日本のとんこつスープに近い印象です。
この対決では、チャングムが勝ちを急ぎ、料理の出来を左右する手間を惜しんで隠し味に牛乳を使うなど、策におぼれて敗北します。

このように、長時間煮込む大変さから、韓国でも外食するのが一般的で、街には沢山のソルロンタン専門店があります。二日酔いや疲れの特効薬としても知られ、体力をつけたいソウルのビジネスマンが、朝の出勤前にこのスープをとって仕事へ向かう姿は韓国ならでは。日本のように、駅のホームで栄養ドリンクを一本、ではないんですね。

また、ソルロンタンの付け合せにはカットゥギ(大根キムチ)が定番です。高カロリー食なので、大根に含まれるジアスターゼ効果で胸やけを防ぐためといわれています。

『雪だるま』では、ヨヌク(コン・ヒョジン)が思いを寄せる義兄ピルスン(チョ・ジェヒョン)に「ソルロンタン食べたい」とせがみます。この会話の元ネタになったのが『NOWHERE~情け容赦なし~』
この中で、刑事役のチャン・ドンゴンが「ソルロンタンの正しい食べ方」を伝授しているので、興味のある方はチェックしてみてください。

このほか韓国で「酔い覚ましのスープ」として好まれるのが、「プゴクク(干しダラのスープ)」です。

Hosidara

『春の日は過ぎゆく』では、サンウ(ユ・ジテ)との関係に限界を感じたウンス(イ・ヨンエ)が、やけになって深酒をします。翌朝サンウはこのスープを作ってウンスをいたわりますが、ウンスはそれを重荷に感じ、二人の仲はますますこじれていきます。
『屋根部屋のネコ』では、室長(イ・ヒョヌ)と親密にワインを飲んだジョンウン(チョン・ダビン)の機嫌をとろうと、ギョンミン(キム・レウォン)がせっせと作ります。こちらの二人は結ばれたのですから、「効能」はあったというべきでしょうね!?

魚介を使った汁物では、ほかに「メウンタン(辛いスープ)」があります。唐辛子入りの真っ赤なスープで魚介類を煮込んだ、食欲をそそるスープです。
『冬のソナタ』では、ユジン(チェ・ジウ)とミニョン(ペ・ヨンジュン)が、別荘で初めて一緒に夜を明かした翌朝に食べます。傷ついたユジンに食べさせようと、不器用に調理するミニョンの優しさに胸うたれます。

『美しき日々』でも、一夜を明かしたミンチョル(イ・ビョンホン)とヨンス(チェ・ジウ)が食べました。ミンチョルのスプーンにそっと魚をのせるヨンス。このひかえめな母性にノックアウトされたミンチョルは、彼女の病気発覚後、同じようにメウンタンの魚をとり分けてあげます。

『情愛』では、新婚のヨニ(オム・ジョンファ)が、非婚主義の元彼ジュニョン(カム・ウソン)に、「夫の好物はメウンタン」といいます。本当はジュニョンと食べたいというヨニの心理が垣間見えます。

そういえば『ホテリアー』では、仕事に行きづまったドンヒョク(ペ・ヨンジュン)がふらっと立ち寄った食堂でひとり口にしていましたが、彼のつらさもメウンタンで少しはやわらいだのでしょうか?

そして韓国ドラマで忘れてはならないのが「ミョックッ(ワカメスープ)」です。ワカメのカルシウムが母乳と赤ちゃんの発育に良いことから「産後のスープ」といわれますが、人生の節目や慶事にも、健康や長寿の願いをこめて食べます。

『秘密』では、父親に自分の誕生日を忘れられたヒジョン(キム・ハヌル)の孤独をあらわす小道具でした。
このスープを悪用したのが『イヴのすべて』のヨンミ(キム・ソヨン)。中絶の偽装工作にワカメスープとは…。韓ドラ史上まれに見る悪女は、手口も大胆!?

近年日本でも人気があるのは、「サムゲタン(参鶏湯)」です。鶏を丸ごと煮込んだ薬膳料理で、高麗人参などの薬効が滋養強壮に効きます。コラーゲン豊富で美肌効果抜群。暑い盛りに夏バテ防止に食べるところは、日本でいう土用のウナギですね。
Samuge『遠い路』では、なりゆきで娘婿になりすました孤児院育ちのウシク(イ・ビョンホン)が、ソンジュ(パク・チニ)の父に心づくしの料理で迎えられます。この食膳に並ぶのがサムゲタン。ウシクは初めて家庭の温かさにふれ、身も心も孝行息子となっていくのです。

冬は体を温め、夏はバテた体を守る。栄養たっぷりで体にやさしいコリアン・スープは、疲れた心も癒してくれる、魔法の妙薬といえるのではないでしょうか。

*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。

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韓国エンタメ情報『親切なクムジャさん』

2007-07-13 04:12:38 | おすすめ韓国エンタメ

ドラマ『宮廷女官 チャングムの誓い』で、アジア中を席巻したイ・ヨンエ。
透明感あふれる美貌と知的なイメージで「酸素のような女性」といわれ、日本では「韓国の吉永小百合」とも称される彼女が、復讐に燃える哀しい女性を体当たりで熱演したのが、『親切なクムジャさん』です。

監督は、イ・ヨンエが演技派転身に成功した『JSA』で、一躍その名を世界にとどろかせた奇才・パク・チャヌク。
『復讐者に憐れみを』、『オールド・ボーイ』に続く〝復讐三部作〟完結編となる本作は、時にファンタジックで時にユーモラス、衝撃の復讐譚です。

[ストーリー]
物語は、クムジャ(イ・ヨンエ)が刑務所から出所する場面で始まる。

彼女は20歳の時、ある男の罪を被って幼児誘拐殺人の罪で投獄され、13年もの間無実の罪で捕らわれていた。刑務所では、その天使のような微笑と優しさで〝親切なクムジャさん〟と女囚たちから慕われる模範囚だった。刑期を終え、出所したクムジャは態度を一変。赤いアイシャドーをほどこし、獄中で培った人脈を駆使し、先に出所した女囚仲間達の協力の下、自分を陥れた男・ペク(チェ・ミンシク)への復讐計画を着々と実行にうつす。

同時にクムジャは、ペクが里子に出した愛娘の行方を捜し始める。復讐者としての冷酷な姿と、母親としての切ない心情に揺れるクムジャの行き着く果ては・・・。

[みどころ]

その1  聖女か魔女か? 国民的スターが見せた女優魂 

本作についてイ・ヨンエは、「チャングムファンがこの映画を観ると失望するかもしれない。チャングムで多くの人に愛されたが、女優としての渇きは満たされなかった。あまりにも定着しすぎたチャングムのイメージを払拭し、役者として幅を広げるために挑戦した」と語っています。
今回、「緻密に復讐を計画するクムジャの心情を理解できた」と話すように、残忍な復讐計画を冷徹に遂行する姿は、これまでの清純可憐なイメージを大きく覆しました。
持ち前の芯の強さや気高さを残しつつ、少女、天使、母親、悪魔、そしてクライマックスの般若と、多面的な女性像を渾身の演技で作り上げたイ・ヨンエは、この役で各映画祭の主演女優賞を受賞(第42回百想芸術大賞、第26回青龍映画賞、2005年スペイン・シチェス国際映画祭)。名実ともに国民的女優の称号を手にしました。

その2  パク監督、復讐への執念

前二作では、普通の人々が不条理な目に遭い、復讐せざるをえない状況に追い込まれるさまを描いていたのに対し、今回は復讐そのものが物語の軸であり、主人公の目的となっています。
また、初めて「贖罪」「魂の救済」というテーマを扱うことで、改めて「復讐」のもつ意味を考えさせてくれます。
「アルカイダのテロのイメージ」という不気味な集団処刑の風景は、最も悲惨でありながら最も笑いを誘うシーンでもあるというのも、パク監督ならでは。また、虐待シーンや、鮮血の海、過激な暴力描写などは、観客をやるせない気持にさせるものの、だからこそ宿願を果たしたクムジャの達成と虚無の入り混じった表情や、ラストで表現される未来への希望を際立たせています。
「現代社会で禁じられているからこそ、復讐というモチーフに魅せられる」と語る監督自身は、普段他人に対して怒りを露わにせず、夜寝る前に「あいつにどう復讐しようか」と想像を膨らませるとか(こわ~)。
「この映画のもう一人の主人公は監督です」と、イ・ヨンエにいわしめたパク監督。いろいろな意味で目が離せません。

その3   視聴覚に訴える仕掛け

浮世離れしたアイメイク、季節はずれのファッション、大きなサングラス。いずれも、クムジャさんと俗世との哀しい隔絶を描き出す小道具です。陰惨な主題をやわらげる色彩豊かな美術や衣装も、要注目。ちなみに撮影は真冬の凍える寒さの中で行われたため、イ・ヨンエがスタッフ全員に総額3000万ウォン相当の防寒パーカーを差し入れ、親切なヨンエさん!と話題になりました。
出所時に、出迎えた牧師が差し出す清めの豆腐を「ノナチャラセヨ」(余計なお世話です)と、拒んだクムジャが、降りしきる雪の中のラストシーンに口にする、ある食べ物には、この映画のテーマが込められています。

この場面で歌われていたのが『赤い靴のお嬢さん』。一昔前の歌謡曲で、韓国の人々にとってはたまらなく懐かしい、クムジャの来し方行く末を表現するにピッタリな選曲です。

マニアチェック! その1
ノークレジットですが、前二作で登場したパク・ファミリーの俳優たちが、思わぬ場面でカメオ出演しています。

ヒントは、カン・ヘジ○ン、ユ・ジ○、○ン・ガンホ、シン・○ギュン、ユン・ジン○・・・あなたは何人見つけられましたか?

マニアチェック! その2 
ペク先生役のチェ・ミンシク、なんと撮影時は、『クライング・フィスト』のボクサー役で負った肋骨骨折をおしての出演だったとか…。悪辣非道なペクですが、周囲の反対を押し切って演じたと思えば、同情心も湧く!?

作品基本データ
【韓国でのタイトル】 親切なクムジャさん
【監督】 パク・チャヌク 『JSA』『オールド・ボーイ』
【脚本】 チョン・ソギョン、パク・チャヌク
【出演】  イ・ヨンエ、チェ・ミンシク、クォン・イェヨン、ナム・イル、キム・シフ 
【上映時間】 115分
【公開日】 韓国: 2005年7月 日本:2005年11月12日
【配給】 東芝エンタテインメント
*2005年ヴェネチア国際映画祭 正式出品作品

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(MY)

*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。

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韓国エンタメ情報『純情物語 一番大切なこと、気づきました』

2007-07-05 04:33:03 | おすすめ韓国エンタメ

今回は、韓国発のネットマンガ『純情物語』をご紹介します。
韓国のポータルサイトで連載されたこの作品は、1日最高200万アクセスを記録、読者選定「読者漫画大賞2004」を受賞した爆発的大ヒット作です。
いわゆる「コマ割り」が存在しない斬新な作風は、絵本でもなく紙芝居でもなく、まさに、大人のための「読んで味わう絵物語」。
昨秋舞台化され、すでに映画化も決定している国民的人気マンガなのです。

毎日同時刻にマンションのエレベーターに乗り合わせる平凡な独身サラリーマンのヨンウと女子高生スヨン。
二人はお互いに惹かれあいながら、不器用さゆえに伝えることができない。
そんな二人の距離は、ネクタイのプレゼントをきっかけに、少しずつ近づいていく。
一方、受験を控えた男子高校生スツは年上の女性ハギョンにひたむきな想いを寄せるが、ハギョンはそれを嬉しく感じながらもなぜか頑なに拒み続ける。
年の差に悩み、過去の傷や悩みを抱える二組のカップルの恋模様が交錯し、それぞれの想いが深まっていく。やがてスヨンは、人を愛する喜びの向こうに、家族や友人の大切さを初めて知る。 彼らの閉ざされた心の扉が、春の訪れと共に、少しずつ開いていく・・・。

本作では、「誰かを純粋に、愛しく思う気持」が、淡く切なく、時にほろ苦く綴られます。
血わき肉躍るスペクタクルな展開はなし。絵柄の素朴さ、ややベタな設定、韓国漫画へのなじみのなさなどから、最初は「楽しめるかな?」と、不安に思う向きもあるかもしれません。けれど、日常的エピソードを通して、詩情豊かなドラマ世界を読み進めるうち、いつしか愛すべき人物たちの気持に共鳴し、ストーリーに引き込まれている自分に気づくはずです。

おやっ・・・この感覚、どこかで身に覚えがありませんか? 
そう、何のことはない、韓国ドラマを見始めた頃に覚えた感慨とよく似ています。
作品に触れる前の「どうかな?」が、「面白い!」に変わる瞬間の、あの興奮。
韓国エンタメファンのあなたなら、もう、ご存知ですね。

作品そのものが優れた娯楽であることは言うまでもなく、また韓国エンタメファンとしては、違う角度から(マニアックに)楽しめる作品でもあります。
例えば、女子高生スヨンが自宅で見ているテレビドラマ。
ある場面の台詞に、「ううむ、これってもしや、秋の童話・・・」と反応できたら、あなたは、間違いなく韓ドラ通!
そのほか韓ドラでもおなじみの「縁」「初雪」「家族」といったモチーフがキーワードとして登場するのも嬉しいところ。

物語全体にたゆたう優しさ。シンプルな感情表現。珠玉の名台詞の数々。随所に光る温かいユーモアと懐かしさ。
韓国エンタメの真髄が、ここにもしっかり息づいているのです。

当初、読者層を若い女性に想定していた日本での出版元は、翻訳者に現役女子高生を起用。しかしふたを開けてみれば、「感動した!」と最も熱い声を寄せてきたのは、50代のおじ様世代だったとか。

作者カン・プルは、作品の映画化が続々と計画中の人気漫画家です。
キム・ジョンクォン監督、チャ・テヒョン主演『バカ』は、練炭の一酸化炭素中毒で知的障害を負った青年の物語です(公開日未定)。
作者は『純情物語』を〝枠のないマンガ〟にした理由を、「オンラインの長所をいかすため」と語っています(あとがきより)。
確かに、複雑なコマ割りを排した自由度の高い紙面には、未体験の面白さがあり、新しい表現の可能性を実感できます。

ぜひぜひ、全4巻一気に読破されることをお勧めいたします(余白が多いので、1~2時間で読了できます)。
人を好きになった時のもどかしさ、やるせなさ、そして素晴らしさ。
読み終えたとき、きっと誰かに薦めたくなる、そんな一冊です。

【書籍基本データ】
書名:純情物語  一番大切なこと、気づきました  (全4巻)
原題:純情漫画
著者:カン・プル
翻訳:安倍慶子
出版社:双葉社
2005年4月出版
定価 各900円(税込)
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【著者 カン・プルのプロフィール】
1974年、ソウル市生まれ。韓国で最も人気のある漫画家として高い評価を得る。
各種の新聞に風刺のきいた時事漫画を連載。
平凡な生活に潜む人情と笑いを、独特の表現方法で描く。
HP  http://www.kangfull.com/ 

*この記事は、まぐまぐ発行のメールマガジン「韓国エンタメ!KoreaKorea」で発表した内容を再編集して掲載しています。

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