前号の続き。
ガタンゴトン、ガタンゴトン
レールの響きを聞きながら、スープを啜っていると、
「あ、鶴がいた。ほらそこ。」(家内)
あら、ほんと。
てことは、もうすぐ・・・
出水である。
おれんじ食堂は、熊本県から鹿児島県にやって来た。
車両基地になっているのか、出水駅には数台の車両が待機していた。
「カンパチのカルパッチョとサツマイモと黒豚のキッシュ、それに・・・」
「ははあ。」
「ワサビマヨネーズのソースでお召し上がり下さいませ。」
「そうさせて頂きます。」
これは鹿児島で作られた日本酒である。
焼酎文化の鹿児島に、日本酒の酒蔵があったとは知らなんだ。
「鹿のパテでございます。」
「鹿様でございますか。」
「ビーフシチューでございます。」
「ワーイ (ノ^^)ノ」
もぐ
もう、美味いのなんのって。
阿久根到着。
空が明るくなってきた。
ホームの傍らには、ザボンや金柑、伊予柑がたわわに実っている。
「この沿線は柑橘類が特産でして。《おれんじ鉄道》の名前の由来でもあります。」
「へえー。」
デザートが運ばれてきた。
おれんじ食堂のランチの時間が、終わりを告げようとしている。
「どうでしたか?お気に召しましたでしょうか。」
「勿論!どれもこれも、大変美味しゅうございました。」
沖合が白く輝いている。
人形岩
薩摩高城駅
客室乗務員の案内で、ホームからビューポイントまで少し歩くらしい。
おれんじ鉄道の社員自らが雑木林を伐採し、この遊歩道を作ったのだそうだ。
案内では、
『見晴らしのよい高台には木製のベンチもあり、心地よい海風を感じることができます』
と、なってはいるが・・・
雨は止んだものの、寒風吹きすさび、心地良い海風とはとても言えぬ。
「そうですね。とっとと戻りましょう。」(客室乗務員)
席に戻ればナプキンが組戻されていた。
「このままお持ち帰り下さい。」
「これはどうもご親切に。」
川内市内が見えてきた。
終点川内駅。
世話になったな、おれんじ食堂。
たまにはこんな贅沢もいいもんだ。
またいつか。