関東に住む友が帰省してきている。
彼とは、小中高とずっと一緒、家も近所だった。
その彼が、
「ラーメンば食いたか。」
と言う。
無論、関東在住と言えども、久留米で生まれ育った人間だ。
ラーメンと言えば、味噌や醤油はあり得ない。
トンコツである。
尚且つ『昔ながらの』という形容詞が付かねばならない。
古い久留米人にとって、的外れのトンコツ程腹が立つものは無いからだ。
だが、これが案外と難しいのだ。
昨今の久留米のラーメン店で、昔ながらの味を提供する店が、極々少なくなっている事は、ここで何度も書いている通りだ。
「安さん食堂に行こうか。」
と、彼から提案があった。
津福の安さん食堂が、2ヶ月程店を閉めていたのは、風の噂に聞いていた。
その安さん食堂が、どうやら、半月ほど前から復活しているらしい。
行ってみた。
相も変わらずの佇まい。
「ごめんくださーい。」
店内は、メニュー表に掲げられた品数が若干減ってはいるが、レイアウトその他に変わりはないようだ。
このイラストも、奥の厨房もそのままだ。
「ラーメン頂戴。」
「お待ちどうさまー。」
昔ながらの久留米ラーメンを食するならば、慌てて箸など取っては無作法というものだ。
まず最初に、敬意を込めて、この美しい白濁スープを眺めなくてはいけない。
本物のトンコツは、スープに浮いてる脂は、アッサリ系と呼ばれる醤油に比べても、極わずかであると言う事実に気付かされる筈だ。
次に香りを楽しもう。
トンコツ臭が鼻を付いて来ないようなスープは、これまた本物とは言えない。
トンコツ臭に満足したなら、2~3回、満足げに頭を振ろう。
「う~~ん、マンダム。」とでも呟けば、なおの事良い。
では、
ここで、おもむろに箸を取る。
取ったら、
いただきまーーす。
ズルズルズルーーー
「旨かあ!!」
と、叫び、
後は一心不乱に、啜るのみだ。
ズルズルズルーーー
休業していた理由は気にはなるが、いつまでも元気でこの味を守って貰いたいものである。