「塗装の準備が出来ましたよ。」
会社から連絡あり。
早速エシマ自動車へ。
会社に着くと、事務所脇の喫煙所で、一服している社員がいた。
「お前、まーだ煙草なんか吸っとるとか。」
「僕は仕事を始める前には、吸わんといかんとですよ。」
「なんば言うか。始業時間はとうに過ぎとるわい。」
などと、自分が煙草を止めている事を盾にとり、かつての部下に威張り散らす。
もっとも私の場合、煙草を止めて5年も経つが、今もって煙草が嫌いになれない。
目の前に「どうぞ」と差し出されれば、たちどころに吸ってしまう自信がある。
人を、嫌煙家と愛煙家、それと禁煙中の3種類に分けるとするなら、
私は、5年間ずっと禁煙中の、なんとも厄介な人間なのだ。
やれやれである。
ん?
煙草の話だっけ。
あ、そうだ。
悪巧みの件である。
「準備できてるって?」
「今からでも塗れますが、見ますか?」
「見る見る。」
既に塗装ブース内には、下地処理が施された極秘部品が置かれていた。
吹き付け開始。
この超極秘任務を遂行するのは、今やエシマ自動車のエースに成長したM尾だ。
吹き付けは何回かに分けて、塗り重ねていく。
最後にクリアー塗料を吹きかけ、しっとりとした艶が出たら完成だ。
1回目の吹き付け完了。
2回目の吹き付けが始まった。
さて、
何時までも、元社長にジロジロ見られていては、こいつもやりにくかろう。
「M尾。俺はそろそろ帰るわ。後はよろしくな。」
「あ、はい。失礼します。」
明日、2色目を吹き付けて塗装は完了だ。
取付けその他は、いつ頃しようか。
なんせ、事は極秘裏に進めないと・・・