「ねえ。明日、どっか行こうよ。」
「ほえ?」
鼻毛を抜きながら箱根駅伝を見入る私に、帰省中の長女からのリクエストである。
ふむ。
なるほど、無理もない。
元旦に初詣に行ったきり、父は朝から酒をかっくらって、テレビばかり見ている。
「で、どこに行く?」
「ここに行きたい。」
「お、いいな!行こう、行こう。」
1月3日
川棚町の片島と言う所に、家内と長女と一緒にやって来た。
ここは、片島魚雷発射試験場跡と言う。
妙なところが父親に似るこの娘は、こんな歴史的構築物が大好物なのだ。
第一魚雷調整場跡
海軍鎮守府が置かれた佐世保周辺には、戦争遺構があちこちにある。
かねがね私は、それら遺構の一つ一つを歩きたいと考えていた。
石造りの空気圧縮喞筒室跡
喞筒とはポンプの事。
崩れ落ちた屋根と、床に根を張り枝を伸ばす木々。
言っておくがこれは屋内の光景である。
70数年の歳月は、こうも建物の姿を変えさせてしまうものか。
廃墟感が凄ごすぎる。
重ねて言うが、これは屋内である。
外に出ると、貯水槽が複数見える。
用途が違っていたのかどうか、円形や、長方形など色んな形の水槽が並ぶ。
冷却水槽跡
どんな工程で、魚雷の何を冷却したのだろう。
油脂庫跡
魚雷発射場跡
L型に曲がった突堤先端の切れ込みから、魚雷を発射したらしい。
魚雷運搬軌条跡
海岸線に沿って道は延び、先端の建物の手前で唐突に終わっている。
探信儀領収試験場
探信儀とはレーダー。
領収試験とは、工場から納品された魚雷を、実際に試射する事を言うようだ。
順路は島の頂上へ伸びている。
ヨッコラセと登っていくと、
頂上に監視望楼跡が見えてくる。
無論この望楼は、発射された魚雷の航跡確認をする為にある。
「魚雷発射試験場、凄いな。来て良かった!」(私)
「そうやろ。誰が探してやったと思ってると?」(娘)
あ、ありがとよ。