前回からの続き。
白覆面による拘束からようやく逃れ、遠のく意識の中で、健気にもハンドルを握る私。
「動揺しとらん?運転大丈夫とね。」
「ハラホロヒレハレ」
「何か車がふらついとるよ?」
「フニャー」
さて、
そもそも何故、そんな危険を冒してまで、魔の大分道を走って来たかと言うと、
これを食いに来たのだ。
いつもであれば、こんな昼時は1時間待ちは当たり前の有名店だ。
「いらっしゃいませ。どうぞお好きな席へ。」
こんな光景、今まで見たこと無い。
1階フロアーには、2~3組の家族客が座っているばかりである。
まだまだ続く新型コロナの影響。
本来の姿に戻るのは、もう少し先になりそうだ。
この苦難をもう少し耐え、かつての賑わいが戻ってくる日が、一日も早く来るよう、切に願うばかりである。
尤も、そんな時だからこそ、待ち時間なしで席に座れると睨んで、ここへ来たのも事実だが。
霞んでいなければ、四国まで望める席に座り、メニューをパラパラとめくる。
「えーっとね・・・」
注文の品は、直ぐに運ばれてきた。
「関サバ定食でーす。」
家内の注文である。
氷のベッドに、ピンク色の身を横たえてお出ましだ。
「どーれ。」
「あー、なにすっだ!」
ふむ。
やはり冬の関サバとは、比ぶべくもないな。
らしい身の締まりがない。
まあそれでも、充分美味しいけどね。
私の注文は、今が旬の関アジ定食。
宝石と見紛うばかりの輝きを放つ関アジ様だ。
では、
モグ
くー、たまらん。
コリッコリ。
「うんめえな。お前もこの鯵ば食うてみろ。」(私)
「・・・高速代に罰金に。今までで一番高い昼御飯になったね。」(家内)
うぐっ