「んじゃ、行ってくる。あ、戸棚にペヤング焼きそば入っとるよ。」
家内はそう言い残し、福岡へ。
私は山に柴刈りに・・・
じゃなくて、いつもの髙良山である。
山から帰ってくると、丁度昼時。
戸棚を開けると、
獄激辛カレー・・・って。
これだな。
ヤツが言ってたペヤング焼きそばとは。
激辛では飽き足らず、獄激辛とな。
震える『獄』の文字が、否応も無い恐怖心を煽る。
ゴクリ
きっとこれは、
『麻婆豆腐は花椒と豆板醤を追加しろ』
とか、
『カレーをカイエンペッパーで赤く染めろ』
とか、
常日頃、辛さを要求する私への、ヤツの仕返しである。
にしても、夢に出てきそうなインド人だ。
私の中の、善良なインド人のイメージとはほど遠い。
眉間に皺を寄せて、こちらを睨みつけている。
何だって、
「泣けるほど辛みが強いので、小さなお子様や、辛みが苦手な方の喫食には、十分ご注意ください」
だと。
フッ
ちょこざいな。
分かった。
受けて立ってやる。
お湯を注いで3分。
湯切りをしたら、獄激辛ソースを流し込む。
全部搾りきってやったぜ。
かき混ぜたら、
では、
ズルズルズルズルーーー
なーんだ、口ほどにも・・・
!!
ウガガガ、
か、か、かれーーーー!!
インド人が口の中で暴れ回っている。
喉の奥から唇の先までもが、痛い!
こ、これは、間を置いたらダメだ。
一気に流し込んで、早く終わらせよう。
ガツガツ
ズルズル
ゴツクン
食い終わったぜ。
だが、
本当の苦難はここから始まる。
獄激辛焼きそばを目の前から消し去り、ほっと一安心。
焼きそばだけでは、量が足りないだろうと、チンしていた春巻きを口に入れた途端、
ビエーーー!!
校内暴力、、、じゃなかった、
口内暴力が再開された。
穏やかな春巻きが、凶器に変わる。
咀嚼するのも辛いし、飲み込むのはもっと辛い。
この症状を『獄激辛症候群』とでも言っておく。
既に私の口の中は、隅から隅まで、口内炎となってしまっていたのだ。
あまりの衝撃に、ピントも合わせられない程だ。
何だか悲しくなってきた。
シクシクシク
泣けるほど強い辛みとは、こう言う事だったのか。
これ以上の、辛さの暴力には耐えられない。
箸を置こう。
完敗
恐るべし、インド人・・・じゃなかった、ペヤング獄激辛カレー。
夕方、
「ただいまー。」
「あのー・・・普通のペヤング焼そばがいいです。」
「へ?」