Tシャツとサンダルの候

これから眠りに着こうとする人間には、少しは斟酌してほしいと思った。

数日前、

 

テレビで、新田次郎原作、木村大作初監督作品の《劔岳 点の記》を観ていた。

 

原作は読んだことはないが、舞台は黎明期の明治日本。

日本の地図を完成させると言う一大事業があった。

国土地理院の前身が、陸軍参謀本部の一機関であったという事も、ここで初めて知った。

国土を測量すると言うことは、国家防衛が目的であったのだ。

映像も文句なしに綺麗だ。

しばらくは食い入るように観ていた、

 

が、

 

後半に差し掛かってきた頃。

すでに普段は、爆睡している時間になってきた。

 

 

うつら、うつら

 

 

ふが!

 

 

ーーーー

 

 

うつら、うつら

 

 

「おっちゃん、寝るなら向こうで寝らんか!!」(家内)

 

 

「はひゃ。もう限界れふ。そうしまふ。」

 

念のため、ここで予め説明を挿入しておく。

我が家は犬や猫の出入りの為、寝室と居間とのドアは閉めない。

 

床に就いた。

 

 

 

 

クピー

 

zzz

 

 

 

 

 

「あぎゃー!!」



(な、なんだ!) 

 

寝付いたと思ったら、居間からの声に起こされる。

 

 

 

「あ、滑落した!!あー、落ちちゃったよ。」

 

 

(え!)

 

 

「やったよ。あー、やったあーーー!

 

 

(なにがあった!)

 

 

「やっぱ、新田次郎らしいよ。こうなるか。」

 

 

 

 

これから眠りに着こうとする人間が隣の部屋にいる事に、少しも斟酌しないヤツが居間にいる。

 

 

 

 

・・・・

 

 

 

 

こうなったら、

起きてテレビを再び観るか、

意地でも寝るか、

 

しばらく逡巡していたら・・・

 

 

 

「終わったあー。」

 

 

らしい。

 

 

 

 

 

 

眠れと言ったヤツに、見たかった映画が終わるまで、眠りを妨げられる。

言語道断である。

 

と思った。

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