「くじゅうのマンサクが見頃げな。明日は晴れのごたるじぇ。どげんすっか?」
「行く。」
「んなら、あそこも寄ってみっかにゃ。」
いつもの様に、思いっきり久留米弁の会話から始める。
通訳なしと言う不親切さも、いつも通りだ。
先へ進める。

そんな会話の翌日、
私たちは、久住一番水登山口にいる。
暇人夫婦は身軽なのだ。

山登りの主題は、冒頭に書いた通りマンサクである。
他の場所に立ち寄る都合もある。
なので、どの山の頂上も目指さずに、佐渡窪で折り返す予定だ。
歩きだしてすぐ、
「ぶへー、暑か!Tシャツ1枚でよかぐらいやな。」
夫婦ともども、アウターを脱ぎ捨て軽装になった。
誠に季節は春なのだ。

朽網別れ山桜の森に差し掛かった。
去年、コロナの影響で、山桜開花時期は引き籠り生活を強いられていた。
今年こそは、4000本の山桜の花見をしたいものだ。

朽網別れの先では、大規模な砂防ダムが完成しつつあった。
大雨の度に、大きく削られていた山桜の森の山肌も、これからは大丈夫ではなかろうか。

暫くは、植林された森を行く。
植林の森を過ぎたら、

だらだらとした、つづら折りの登りが始まる。

「ハルトラノオ見っけ。撮らんか。」
と、
私に撮影を命じた家内。
そんな事は忘れたかのように、すぐ傍の巨岩を指さし、
「あ!」

「見てんね。ドングリが根を出しとる。」
一個のドングリが、岩の上の苔に、差し込むように根を這わせていた。
樹木誕生の瞬間である。
来年、この場所を訪れた際には、若木に成長している姿を見たいものだ。

鍋割峠。

峠に着くと、早速マンサクの黄色がそこかしこに。



鍋割峠から佐渡窪を見下ろす。
ピークハント無しの今回、ここが最高標高点である。

佐渡窪に降りてきた。
マンサクの黄色が、山肌を彩っている。

それはそうと、

木道の両脇に広がっていた草地が、すっかり土砂で埋もれてしまっている。
去年同時期にここに来た時とは、まるっきり様相が違う。

去年の大雨災害で?
多い所では、50㎝以上土砂が堆積しているようだ。

土砂の影響か、佐渡窪のマンサクは窒息しているかのように樹勢が弱い。
そんな中、一本だけ元気なマンサクが。

明らかに花の密集度が違う。





去年、法華院を始めとして、甚大な大雨被害に襲われたくじゅうの山々。
今年、更なる大雨に襲われない様、祈るのみである。

白口岳を眺めながら昼飯。

ズルズルズルー
モグモグ
クッタ旨し!
「飯食ったら、ドピューンち降りて、あそこに行くぞ!」
続く