目出度くも本日筑後地方は、観測史上最も遅い初雪となった。
マンションのベランダから、薄っすらと雪化粧した久留米の街を眺めているうち、何故だか分らぬが、気分が高揚してきた。
それどころか、高揚のあまり、雪の中を歩きたくなった。
これでは、積もった雪を見た犬コロが、嬉しさのあまり庭を駆け回っている姿と、さほど変わりはないではないか。
とても60を過ぎた分別のある大人の行動とは思えぬが、かまやしないのだ。
「ちょっと高良山に登って来る。昼は帰らん。」(私)
「ほへ?」(家内)
こんな日は、少し長めに歩きたい。
先ずは、自宅から歩いて高良山を目指す。
これはいつも通りだが、高良山山頂からは足を延ばして、兜山まで行こうと思う。
更に兜山からは、柳坂曽根方向に降り、山辺道を歩き、御井町経由で自宅までの、
23~4kmぐらいの工程となる。
御手洗池。
オーソドックスに、正面参道から山頂を目指す。
中谷の蓮台院三井寺跡
かつてはここが、高良山26寺の中心だった。
紅葉の名所でもある。
孟宗金明竹の群生地。
国指定天然記念物だ。
高良大社到着。
高良大社の裏側に回り込むように、登山道はのびていく。
鳳山通過。
気付いた事がある。
いつもならこの辺は、イノシシが掘り返した跡だらけだ。
なのに、それが全く見当たらないのだ。
もしかしてイノシシって、雪の日はお休み?
どうやら奴らは私と違い、ちゃんと分別があるようだ。
雪だからといって、高揚などしないらしい。
奥宮通過。
この木段を登り詰めると、
山頂だ。
設置されている寒暖計は-2℃を示していた。
森林つつじ公園へ降りる。
正面は発心山。
ここからは耳納スカイラインを行く。
スカイラインを縫うように登山道は続くのだが、倒木が多く、歩きにくい事この上ないからだ。
高良山から発心公園まで続く漱石句碑。
『人に逢わず 雪降る山の 花盛』
花こそ見えないが、今の私の状況そのものだ。
『筑後路や 丸い山吹く 春の風』
熊本五高時代、
漱石は兄とも慕う菅虎雄に逢いに、ちょくちょく久留米に来ていたのは有名な話だ。
耳納スカイラインからそれて、兜山キャンプ場方向へ。
と言っても、キャンプ場自体は随分前に閉鎖されていて無人である。
そう言えば、去年の3月にここを訪れたっけ。
その時は、
管理棟跡を始め、炊事等やトイレ、ロッジなどもそのままの姿で残っていたが・・・
何もかもが、きれいさっぱり無くなっていた。
キャンプ場再開など100%無いという、市の意思表示であるかのようだ。
山頂へ。
久留米が生んだ天才画家青木繁は、この兜山をこよなく愛していたようで、何度も登ったという。
句碑には、親友坂本繁二郎の筆で、
『わが国は 筑紫の国や 白日別 母います国 櫨多き国』
と刻されている。
この句碑からの眺望を楽しむ事を忘れてはいけない。
何故なら、兜山山頂からは眺望は皆無だからだ。
ここから山頂はすぐそこだ。
チョチョイノチョイで、
山頂である。
シーーーーン
だーれもいないし、することも無いし、
とっとと降りるとするか。
続く。