「社長、9日の日は空いていますか?」
私の元部下であり、今現在、会社を統括する立場にあるU店長から電話がかかってきた。
内容は、取引先であるHが、我が社のパンフレット作りの撮影等の為、九州にやってくる。
彼は仕事の合間、太宰府に行きたがっているのだが、自分らは忙しいので連れて行けない。
ついては、私に案内を頼めないかと言うものだ。
「やだね。」(私)
「そんな事言わずに。仲良かったじゃないすか。」(U)
「おかしいやろ。何で俺がアイツのアッシー君ばせんといかんとか!」
「いいじゃないですか。お願いしますよ。」
「ちぇ、しゃあねえな。暇人の足元につけ込みやがって。」
てなやり取りがあった。
そんな訳で、昨日は大宰府なのだ。
「僕、初めて来ちゃいましたよ。参道の雰囲気いいですねえ。」
呑気にスマホを構える、このHという男。
いや、Hの野郎と言い換えておく。
Hの野郎を簡単に紹介しておく。
ヤツは我が社が取引している、東京の広告デザイン会社の代表である。
キャンピングカー専門誌の広告を始め、カタログやイベントチラシの制作など、広告全般を依頼していた。
イラストが得意で、全国紙の雑誌広告で、私に子泣き爺の格好をさせたり、
(これだ。広告の一部を切り取っている。)
セーラー服を着させたりと、やりたい放題なのだが、どうにも憎めないヤツなのだ。
なんでもこの日が、ヤツの息子のAO入試の合格発表であるとの事。
「太宰府天満宮は学問の神様ですからねえ。お参りしとこうと思って。」
「お前ねえ。普通、ずっと以前にお参りするやろ。発表当日に参拝したって、遅すぎるっちゃないか。」
「そうすかねえ。」
飛梅
「ところで、御朱印所はどこすかねえ。」
「え、そんな趣味あったんか。」
意外なヤツの一面を見た思いである。
私にはそういう趣味は全く無い。
従って、今日初めて御朱印の現場を見る事になる。
御朱印帳を差し出すH。
神職は、すらすらと淀みなく、達筆な筆を走らせる。
そして仕上げに御朱印をペッタリと押印である。
「いやー、嬉しいですねえ。」
Hの野郎大満足である。
最後に合格祈願のお守りを買うHである。
だから、今更遅いって。
会社に戻った後は、U店長らも加えて食事をする。
もつ鍋に舌鼓を打ち、昔話で盛り上がる。
Hの野郎、私を捕まえて山徘徊老人だと。
無礼千万にも程がある!
その後、夜の街に消えて行ったのは、言うまでもない。
更に言えば、
二日酔いの朝を迎えた事も、言うまでもない。