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Tシャツとサンダルの候

小ざさの羊羹

金曜日、吉祥寺に住む弟が我が家に泊まった。

家内の手料理を肴に、二人で痛飲した事は、改めて書くまでも無かろう。

そんな弟が、

「小ざさの羊羹が買えたけん、土産で持ってきた。」

「ほほう。」

 

弟曰く、

 

「開店前から並んでも、中々手に入らん・・・」

 

幻とも呼ばれている羊羹なのだそうだ。

決して甘党とは言えない私だが、幻と聞いては食したくなるのが人情ではないか。

箱を開けてみた。

外箱の中に更にもう一つの箱。

さすが幻と呼ばれる羊羹である。

念の入れようが、そこらの羊羹とは違うのだ。

内箱を開けると、漸くラミネートが見えてきた。

この中にご本尊様がいらっしゃるのだ。

どーれ。

 

「シッ、開けるな!!お義母さんのところで一緒に食べやん。」(家内)

「お、おう。」(私)

小ざさが伝える、伝統の羊羹造りの苦心談を添えておく。

 

日曜日。

弟も一緒にお袋に面会に。

幻の羊羹様に、ついに包丁が入れられる日が来たのだ。

「あんたは?」(母)

「廣の嫁たいね。ほら、丘さんが幻の羊羹ば持ってきてくれたとよ。」(家内)

「えーと、あんたは誰じゃったかいね。」(母)

「丘(タカシ)たい。羊羹美味しかろ?」(弟)

「美味しかねえ。ところであんたは?」

「あんたの息子の廣じゃろが!」

 

お袋の記憶も、相当心細くなってきたようだ。

では、私めも。

 

 

パクリ。

 

甘さは控えめで、小豆の風味がしっかりと感じられる。

しっとり&滑らかな口当たりもさすがである。

 

 

美味し。

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