朝から用事が目白押しである。
先ずは、
持病の逆流性食道炎の薬を貰いに同級生のクリニックに行き、辞する時に「そんじゃまた来る」と、およそ病院らしからぬ挨拶をし、
次には、整形外科で股関節のリハビリをして、「イテテ」と呻き、
受付で待っている間に、携帯にカメラの見積もりが届き、「高い!!」と叫び、
めくれかえった車の部品が届いたらしいので、古巣へ修理に持ちこみ、「持ってきたぞ。」と威張る。
何しろ、忙しいのだ。
全ての用事が済んだのは、何のかんので昼過ぎてしまっていた。
さて、何か食いに行くか。
こんな日は、大衆食堂が一番だ。
こんな大衆食堂では、カウンター席が特等席だ。
「えーとね。オムライスにしようかな。」
「はーい。」
店内はオバチャン一人である。
いずれ、このオバチャンが引退する日が来るだろう。
その日、一つの大衆食堂が、この久留米から消える。
「はーい、お待たせしました。」
見よ!
これが由緒正しい大衆食堂の、由緒正しいオムライスの姿だ。
フワトロ玉子?
すっこんでろ!!
オムライスは、薄焼玉子の毛布にくるまってるもんだ。
デミグラスソース?
こまっしゃくれた事言ってんじゃないよ!
ケチャップで十分だ。いや、ケチャップじゃなきゃダメなのだ。
いいか。
こんなヤツ以外、父さんは認めないぞ。
・・・話が変わっていく恐れが出てきた。
このあたりで一旦冷静になりたい。
角度を変えてもう一枚。
どうだ。風格すら感じるじゃないか。
んじゃ、ケチャップをスプーンの背で適当に広げて、
あーん。
続けて、
あむ。
衒いも外連も無い。
ただただ普通のケチャップライスと薄焼き卵がここにある。
50年以上前、
デパートの最上階のレストランで、初めて食べたオムライス。
この世のものと思えない程美味しかった事を、今でも鮮明に思い出す。
オムライスが残り少なになれば、ソースをチョイ掛けする。
ケチャップしか認めんと言った割には、節操がないのも甚だしいが、これが私の流儀だから仕方ないのだ。
ご馳走様。
車の修理代の件、カメラの修理代の件等のもやもやを、しばし忘れさせてくれるひと時だった。