セブンは、なぜ大阪のスーパーと組むのか
東洋経済オンライン
3月22日(日)4時55分配信
写真:衣料品などの苦戦で既存店売上高マイナスのイトーヨーカ堂。
大阪のスーパー、万代との提携で何を狙うか(撮影:尾形文繁)
コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン、
総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂を傘下に抱える、
セブン&アイ・ホールディングス。
この巨大な小売企業がじわじわと地方スーパーとの提携を増やし、
全国を手中に収めようとしている。
この3月10日には大阪府でトップシェアを誇る「万代(まんだい)」(大阪府)との業務提携を発表した。
資本提携の締結に向けても協議を開始する。
なぜ今、セブングループがスーパーの拡大に力を入れるのだろうか。
■過去の提携の成果は?
2013年以降、セブングループは、北海道が地盤のダイイチ(30%出資)、
岡山の天満屋ストア(同20%)と、それぞれ資本提携をしてきた。
ダイイチではセブンのプライベートブランド(PB)商品が全店に、
セブン銀行のATM(現金自動出入機)も一部店舗に、導入が完了している。
菓子などの仕入れもイトーヨーカ堂と一本化し、コスト削減を進めてきた。
また天満屋ストアでも、イトーヨーカ堂が開発した衣料ブランドや食品を
2014年11月から取り扱い始めるなど、
少しずつ協業の範囲を広げている。
提携先の企業が展開する地区は、いずれも
セブングループのスーパーが少ない地域にあたる。
イトーヨーカ堂は3月現在、国内に184店舗を展開しているが、
うち6割以上が関東1都3県に集中。
グループ内ではほかに、北関東や東北に店舗を持つ、
ヨークベニマルなどがある。
今回の万代との提携でも、セブングループとしては、
手薄な関西地区を強化したい考えだ。
万代は大阪府を中心に兵庫県や奈良県、京都府などに、
約150店舗を展開しており、大阪府では食品売上高で
12%強のトップシェアを誇る。
万代の不破栄副社長によると、
およそ1年前から情報交換を始め、
2014年8月ごろから具体的な提携の検討に入ったという。
今後は資本提携も予定しており、
具体的な協業内容はこれから詰めていく。
「提携はしたけれど、何の要望も言ってこない。
自由にやってくださいという雰囲気」と、
ある提携先企業が拍子抜けするくらい、
束縛はしないセブングループ。
そのセブン側からすると、
いったい何を求めて提携を進めているのだろうか。
重要視しているのは「地域性の強化」だ。
セブングループでは昨春ごろから、
セブン-イレブンとイトーヨーカ堂を中心に、
各地域ならではの食材や商品、
味付けを取り入れることを戦略の一つにしている。
たとえばPB商品「セブンプレミアム」の肉じゃがは、
全国版では豚肉を使用しているが、関西では牛肉を使用し、
味付けも変えたところ、売上げが伸びたという。
このほかメーカー商品に関しても、
たとえばイトーヨーカ堂であれば、
その地域に根付いた調味料を拡充するといった具合だ。
■万代は2014年度決算も増収増益見通し
万代は大阪トップというだけでなく、
この厳しい競争環境下にあって、業績を伸ばしている優良企業だ。
2013年度の売上高は2793億円と、業界内でも小さくはない。
2014年度決算も増収増益が見込まれており、
既存店売上高は前年度比103%を記録。
「もともと低価格の強いイメージだったが、
最近は鮮度など質も重視している印象。
ここ数年は出店意欲も旺盛」(近畿圏の食品スーパー)と勢いもある。
スーパーが繁盛するのは、地元の人々に支持されている証拠。
こうした企業と組むことで、セブン側は店作りのノウハウや、
そこにしかない商材とその仕入れルートの発掘を期待できる。
特にイトーヨーカ堂は2014年度の営業減益が
ほぼ確実という厳しい状態で、
第3四半期(2014年3~11月)時点で、
既存店売上高は前年同期比4%以上のマイナスだった。
消費者を引き付ける商品開発ができておらず、
改革が急務となっている。
実際、イトーヨーカ堂の帯広店では、
ダイイチが食品売り場作りに参加し、助言を始めている。
「私たちの場合、現場の担当者からほしい商品の情報をあげるが、
イトーヨーカ堂は上層部が品ぞろえを決めるという意識が
まだ強いように感じている」(ダイイチ)。
セブンにとって提携は、「規模拡大ではなく、
質を上げていくことが目的」(セブン&アイ・ホールディングス)。
共同仕入れや物流の共有による
コスト削減といったメリットの追求はそのあとになる。
■関西では苦い過去もあり
実は苦い過去もある。セブンは関西で以前、
近畿日本鉄道傘下の近商ストア(大阪府)と資本提携を行っていた。
2011年に提携を開始し、人事交流を行うなどしていた。
さらに、近鉄駅構内の売店をセブン-イレブンに切り替えるべく、
交渉にも臨んでいた。が、フタを開けてみれば、
近鉄はセブンのライバルであるファミリーマートと業務提携、
売店はファミマになってしまったことで、関係が悪化。
2014年6月に近鉄とセブンは提携を解消している。
万代とセブンが手を組んだことについて、
近畿圏のライバルスーパー各社は今のところ冷静だ。
「現時点では相乗効果がよくわからない。『ナナコ』
(セブングループの電子マネー)が導入されると、
囲い込みの効果が出てくるかもしれないが、
今は動向を注視するしかない」(ある競合スーパー)。
だが、安穏としてはいられない。
最近は万代のような提携案が、
セブングループに持ち込まれることが増えているという。
激しい競争環境の中で、地方スーパーが単独で生き残るには限界がある。
今後も大なり小なり、業界再編が進むのは間違いない。
将来的にはヨークベニマルのように子会社化される企業が出てくる可能性もある。
セブンの拡大は今後も続きそうだ。
田野 真由佳
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150322-00063953-toyo-bus_all
東洋経済オンライン
3月22日(日)4時55分配信
写真:衣料品などの苦戦で既存店売上高マイナスのイトーヨーカ堂。
大阪のスーパー、万代との提携で何を狙うか(撮影:尾形文繁)
コンビニ最大手のセブン-イレブン・ジャパン、
総合スーパー(GMS)のイトーヨーカ堂を傘下に抱える、
セブン&アイ・ホールディングス。
この巨大な小売企業がじわじわと地方スーパーとの提携を増やし、
全国を手中に収めようとしている。
この3月10日には大阪府でトップシェアを誇る「万代(まんだい)」(大阪府)との業務提携を発表した。
資本提携の締結に向けても協議を開始する。
なぜ今、セブングループがスーパーの拡大に力を入れるのだろうか。
■過去の提携の成果は?
2013年以降、セブングループは、北海道が地盤のダイイチ(30%出資)、
岡山の天満屋ストア(同20%)と、それぞれ資本提携をしてきた。
ダイイチではセブンのプライベートブランド(PB)商品が全店に、
セブン銀行のATM(現金自動出入機)も一部店舗に、導入が完了している。
菓子などの仕入れもイトーヨーカ堂と一本化し、コスト削減を進めてきた。
また天満屋ストアでも、イトーヨーカ堂が開発した衣料ブランドや食品を
2014年11月から取り扱い始めるなど、
少しずつ協業の範囲を広げている。
提携先の企業が展開する地区は、いずれも
セブングループのスーパーが少ない地域にあたる。
イトーヨーカ堂は3月現在、国内に184店舗を展開しているが、
うち6割以上が関東1都3県に集中。
グループ内ではほかに、北関東や東北に店舗を持つ、
ヨークベニマルなどがある。
今回の万代との提携でも、セブングループとしては、
手薄な関西地区を強化したい考えだ。
万代は大阪府を中心に兵庫県や奈良県、京都府などに、
約150店舗を展開しており、大阪府では食品売上高で
12%強のトップシェアを誇る。
万代の不破栄副社長によると、
およそ1年前から情報交換を始め、
2014年8月ごろから具体的な提携の検討に入ったという。
今後は資本提携も予定しており、
具体的な協業内容はこれから詰めていく。
「提携はしたけれど、何の要望も言ってこない。
自由にやってくださいという雰囲気」と、
ある提携先企業が拍子抜けするくらい、
束縛はしないセブングループ。
そのセブン側からすると、
いったい何を求めて提携を進めているのだろうか。
重要視しているのは「地域性の強化」だ。
セブングループでは昨春ごろから、
セブン-イレブンとイトーヨーカ堂を中心に、
各地域ならではの食材や商品、
味付けを取り入れることを戦略の一つにしている。
たとえばPB商品「セブンプレミアム」の肉じゃがは、
全国版では豚肉を使用しているが、関西では牛肉を使用し、
味付けも変えたところ、売上げが伸びたという。
このほかメーカー商品に関しても、
たとえばイトーヨーカ堂であれば、
その地域に根付いた調味料を拡充するといった具合だ。
■万代は2014年度決算も増収増益見通し
万代は大阪トップというだけでなく、
この厳しい競争環境下にあって、業績を伸ばしている優良企業だ。
2013年度の売上高は2793億円と、業界内でも小さくはない。
2014年度決算も増収増益が見込まれており、
既存店売上高は前年度比103%を記録。
「もともと低価格の強いイメージだったが、
最近は鮮度など質も重視している印象。
ここ数年は出店意欲も旺盛」(近畿圏の食品スーパー)と勢いもある。
スーパーが繁盛するのは、地元の人々に支持されている証拠。
こうした企業と組むことで、セブン側は店作りのノウハウや、
そこにしかない商材とその仕入れルートの発掘を期待できる。
特にイトーヨーカ堂は2014年度の営業減益が
ほぼ確実という厳しい状態で、
第3四半期(2014年3~11月)時点で、
既存店売上高は前年同期比4%以上のマイナスだった。
消費者を引き付ける商品開発ができておらず、
改革が急務となっている。
実際、イトーヨーカ堂の帯広店では、
ダイイチが食品売り場作りに参加し、助言を始めている。
「私たちの場合、現場の担当者からほしい商品の情報をあげるが、
イトーヨーカ堂は上層部が品ぞろえを決めるという意識が
まだ強いように感じている」(ダイイチ)。
セブンにとって提携は、「規模拡大ではなく、
質を上げていくことが目的」(セブン&アイ・ホールディングス)。
共同仕入れや物流の共有による
コスト削減といったメリットの追求はそのあとになる。
■関西では苦い過去もあり
実は苦い過去もある。セブンは関西で以前、
近畿日本鉄道傘下の近商ストア(大阪府)と資本提携を行っていた。
2011年に提携を開始し、人事交流を行うなどしていた。
さらに、近鉄駅構内の売店をセブン-イレブンに切り替えるべく、
交渉にも臨んでいた。が、フタを開けてみれば、
近鉄はセブンのライバルであるファミリーマートと業務提携、
売店はファミマになってしまったことで、関係が悪化。
2014年6月に近鉄とセブンは提携を解消している。
万代とセブンが手を組んだことについて、
近畿圏のライバルスーパー各社は今のところ冷静だ。
「現時点では相乗効果がよくわからない。『ナナコ』
(セブングループの電子マネー)が導入されると、
囲い込みの効果が出てくるかもしれないが、
今は動向を注視するしかない」(ある競合スーパー)。
だが、安穏としてはいられない。
最近は万代のような提携案が、
セブングループに持ち込まれることが増えているという。
激しい競争環境の中で、地方スーパーが単独で生き残るには限界がある。
今後も大なり小なり、業界再編が進むのは間違いない。
将来的にはヨークベニマルのように子会社化される企業が出てくる可能性もある。
セブンの拡大は今後も続きそうだ。
田野 真由佳
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150322-00063953-toyo-bus_all