インタビュー:セブン&アイHD
会長が仕掛ける「オムニチャネル」
2013年 12月 19日 17:05 JS
12月19日、セブン&アイホールディングスの鈴木敏文・会長兼最高経営責任者は、
今を「第2の創業」と位置付けている。
写真は18日に行われたロイターのインタビューに答える鈴木会長
(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 19日 ロイター] -
セブン&アイホールディングス(3382.T: 株価, ニュース, レポート)の
鈴木敏文・会長兼最高経営責任者(CEO)は、
今を「第2の創業」と位置付ける。
「第2の創業」においては、ネットで買い物をする消費者の増加を受け、
ネットとリアル店舗の融合、オムニチャネル化を推進することを最優先課題として掲げる。
「やり通すことが大事」という決意の下、
豊富なリアル店舗を武器に、これまでにない小売業を作り上げようとしている。
<他社商品の配送・受け取りも検討>
鈴木会長がかねてから必要性を説いていた「オムニチャネル」。
グループが一丸となったのは、
9月にグループ各社の社長をはじめとする幹部約50名が米国へ視察に行ってからだという。
「米国で見て、話を聞いて、こういうことが
可能なんだと分かり、みんなやる気になった」―――。
ネット販売にとって、最終消費者にどのように届けるかが大きな課題となる。
米国では、アマゾン(AMZN.O: 株価, 企業情報, レポート)が
セブンイレブンの店内に商品受け取りのためのBOXを置くという試みも始まっている。
コンビニ1万6、000店舗をはじめとする店舗網を持っていることが、
この課題解決のための大きな武器になる。
鈴木会長は「グループだけでなく、限られたところとはやる。
いくつか話をしている企業がある」と述べ、
他社分の配送や受け取りも検討していることを明らかにした。
現在、ローソン(2651.T: 株価, ニュース, レポート)は
アマゾンとローソンHMVエンタテイメント、
ファミリーマート(8028.T: 株価, ニュース, レポート)はアマゾンと楽天ブックス、
famima.comの商品を店舗で受け取ることができる。
主な配送拠点となるセブンイレブンの店舗については、
2014年2月期に1500店舗、15年2月期に1、600店舗と
過去最高水準の新規出店が続く。
5万店で飽和と言われるコンビニ市場だが、
「どんどん(環境が)変わっている」とし、あえて、
店舗数の限界などは考えず、変化への対応次第で決まるものとの認識だ。
オムニチャネル化の基盤づくりの一環として、
今月、ニッセンホールディングス(8248.T: 株価, ニュース, レポート)や
バーニーズジャパン(東京都渋谷区)、
天満屋ストア(9846.T: 株価, ニュース, レポート)への出資を相次いで発表。
「今でも、仲間に入りたいという話はたくさん来ている」としており、
今後もこうした動きは続きそうだ。
鈴木会長がスタートさせた「セブンイレブン」は
40年間進化を続け、日本人の生活に欠かせないものとなった。
国内では、11月末現在で1万5,992店舗を誇る。
販売当初は外で買うことが非常識だとされたおにぎりや、
通常価格の約2倍の高級食パンなど、
売れ行きを疑問視されるような商品を売り出し、
ヒットさせてきた。鈴木会長は、
セブンイレブンの進化の秘訣について
「世の中が変化すれば、我々も変えていかなければいけない。
変化するからチャンスがある」と話す。
2013年のヒット商品には、
1斤250円で消費者の心を掴んだ「金の食パン」がある。
モノが充足しているなかで、消費者は
より美味しいものを欲しているという変化に対応した商品だという。
「作る側が勝手に決めているが、
コンビニだから高いものを売ってはいけないとは誰も言っていない」。
従来の枠に捕らわれないことが大事と強調する。
以前の消費は、ゆっくりと売れて、
ピークが来て、ゆっくりと売れなくなる「富士山型」だった。
それが、急に売れて、しばらく売れて、
急に売れなくなる「茶筒型」となり、今は、
ぱっと売れて、すぐに次の商品が出る「ペンシル型」に変化しているという。
消費スタイルの変化と並行して、小売り企業に対するニーズも変化している。
多くの小売り企業の首脳が売り場である「現場」を強調するのに対し、
鈴木会長は「毎日の変化を感じるだけ。
現場に入ることはほとんどない」と話す。
次に何を考えているか、鈴木会長に聞いてみた。
「次にそういうことが出てくればやればよい。
じっと考える、そういう問題ではない」と述べ、
あくまで消費者の変化を感じ取るだけと繰り返す。
<消費増税で消費環境は厳しく>
2014年4月に実施される消費増税は
ビジネスを厳しくすると予想する。鈴木会長は
「日本はモノ余りなので、消費環境は相当厳しくなる。
モノが不足している時代なら、消費税が10%上がっても
どうということはない。モノが充足しており、
慌てて買う必要がないと言う心理的な要因が非常に大きい」と指摘した。
消費増税によって急流になる川を、逆に遡るようなもの―――。
こうした状況を踏まえ、2015年2月期の連結営業2ケタ増益は
「厳しいのではないか」と述べた。
一方、2014年2月期の連結営業利益は
前年比15%増の3、400億円を計画している。
「流通業界で初めて、営業利益で3000億円を超えてくる」とし、
順調に進んでいることを明らかにした。
その上で「日本は消費増税で独特の経済状況が出てくる。
どのような形で出てくるかは予見できないが、
ただ、安くすれば景気が動くかと言うと、
そうではない。新しいモノ、珍しいモノを提供することで
経済が活性化する」との見方を示し、
変化に対応することで、成長を続けると強調した。
(インタビューは18日に行いました)
(清水律子 浦中大我 編集:宮崎大)
会長が仕掛ける「オムニチャネル」
2013年 12月 19日 17:05 JS
12月19日、セブン&アイホールディングスの鈴木敏文・会長兼最高経営責任者は、
今を「第2の創業」と位置付けている。
写真は18日に行われたロイターのインタビューに答える鈴木会長
(2013年 ロイター/Yuya Shino)
[東京 19日 ロイター] -
セブン&アイホールディングス(3382.T: 株価, ニュース, レポート)の
鈴木敏文・会長兼最高経営責任者(CEO)は、
今を「第2の創業」と位置付ける。
「第2の創業」においては、ネットで買い物をする消費者の増加を受け、
ネットとリアル店舗の融合、オムニチャネル化を推進することを最優先課題として掲げる。
「やり通すことが大事」という決意の下、
豊富なリアル店舗を武器に、これまでにない小売業を作り上げようとしている。
<他社商品の配送・受け取りも検討>
鈴木会長がかねてから必要性を説いていた「オムニチャネル」。
グループが一丸となったのは、
9月にグループ各社の社長をはじめとする幹部約50名が米国へ視察に行ってからだという。
「米国で見て、話を聞いて、こういうことが
可能なんだと分かり、みんなやる気になった」―――。
ネット販売にとって、最終消費者にどのように届けるかが大きな課題となる。
米国では、アマゾン(AMZN.O: 株価, 企業情報, レポート)が
セブンイレブンの店内に商品受け取りのためのBOXを置くという試みも始まっている。
コンビニ1万6、000店舗をはじめとする店舗網を持っていることが、
この課題解決のための大きな武器になる。
鈴木会長は「グループだけでなく、限られたところとはやる。
いくつか話をしている企業がある」と述べ、
他社分の配送や受け取りも検討していることを明らかにした。
現在、ローソン(2651.T: 株価, ニュース, レポート)は
アマゾンとローソンHMVエンタテイメント、
ファミリーマート(8028.T: 株価, ニュース, レポート)はアマゾンと楽天ブックス、
famima.comの商品を店舗で受け取ることができる。
主な配送拠点となるセブンイレブンの店舗については、
2014年2月期に1500店舗、15年2月期に1、600店舗と
過去最高水準の新規出店が続く。
5万店で飽和と言われるコンビニ市場だが、
「どんどん(環境が)変わっている」とし、あえて、
店舗数の限界などは考えず、変化への対応次第で決まるものとの認識だ。
オムニチャネル化の基盤づくりの一環として、
今月、ニッセンホールディングス(8248.T: 株価, ニュース, レポート)や
バーニーズジャパン(東京都渋谷区)、
天満屋ストア(9846.T: 株価, ニュース, レポート)への出資を相次いで発表。
「今でも、仲間に入りたいという話はたくさん来ている」としており、
今後もこうした動きは続きそうだ。
鈴木会長がスタートさせた「セブンイレブン」は
40年間進化を続け、日本人の生活に欠かせないものとなった。
国内では、11月末現在で1万5,992店舗を誇る。
販売当初は外で買うことが非常識だとされたおにぎりや、
通常価格の約2倍の高級食パンなど、
売れ行きを疑問視されるような商品を売り出し、
ヒットさせてきた。鈴木会長は、
セブンイレブンの進化の秘訣について
「世の中が変化すれば、我々も変えていかなければいけない。
変化するからチャンスがある」と話す。
2013年のヒット商品には、
1斤250円で消費者の心を掴んだ「金の食パン」がある。
モノが充足しているなかで、消費者は
より美味しいものを欲しているという変化に対応した商品だという。
「作る側が勝手に決めているが、
コンビニだから高いものを売ってはいけないとは誰も言っていない」。
従来の枠に捕らわれないことが大事と強調する。
以前の消費は、ゆっくりと売れて、
ピークが来て、ゆっくりと売れなくなる「富士山型」だった。
それが、急に売れて、しばらく売れて、
急に売れなくなる「茶筒型」となり、今は、
ぱっと売れて、すぐに次の商品が出る「ペンシル型」に変化しているという。
消費スタイルの変化と並行して、小売り企業に対するニーズも変化している。
多くの小売り企業の首脳が売り場である「現場」を強調するのに対し、
鈴木会長は「毎日の変化を感じるだけ。
現場に入ることはほとんどない」と話す。
次に何を考えているか、鈴木会長に聞いてみた。
「次にそういうことが出てくればやればよい。
じっと考える、そういう問題ではない」と述べ、
あくまで消費者の変化を感じ取るだけと繰り返す。
<消費増税で消費環境は厳しく>
2014年4月に実施される消費増税は
ビジネスを厳しくすると予想する。鈴木会長は
「日本はモノ余りなので、消費環境は相当厳しくなる。
モノが不足している時代なら、消費税が10%上がっても
どうということはない。モノが充足しており、
慌てて買う必要がないと言う心理的な要因が非常に大きい」と指摘した。
消費増税によって急流になる川を、逆に遡るようなもの―――。
こうした状況を踏まえ、2015年2月期の連結営業2ケタ増益は
「厳しいのではないか」と述べた。
一方、2014年2月期の連結営業利益は
前年比15%増の3、400億円を計画している。
「流通業界で初めて、営業利益で3000億円を超えてくる」とし、
順調に進んでいることを明らかにした。
その上で「日本は消費増税で独特の経済状況が出てくる。
どのような形で出てくるかは予見できないが、
ただ、安くすれば景気が動くかと言うと、
そうではない。新しいモノ、珍しいモノを提供することで
経済が活性化する」との見方を示し、
変化に対応することで、成長を続けると強調した。
(インタビューは18日に行いました)
(清水律子 浦中大我 編集:宮崎大)