大学の授業にかかわる話題

授業日誌・キャリア・学びのスキルについて

“耳付き”ランチパックは珍品?

2014年12月31日 23時18分54秒 | 学習支援・研究
“耳付き”ランチパック「激レア」と話題も…
「不良品」山崎製パンの矜持

産経新聞2014年12月19日(金)08:07

女優の剛力彩芽さんのCMでもおなじみの山崎製パンの
「ランチパック」。最近、珍しい「耳付き」が“発見”され、
ネット上で話題となっている。「激レア品だ」
「耳付きをゲットできれば、ハッピーになれる」
といった盛り上がりをみせている。

「不良品」と言い切る山崎製パン
ランチパックは1984年の発売で、30年の歴史を持ち、
年間販売は4億個前後。耳を取り除いた2枚の食パンの間に、
たまごやハムなどの総菜や、ジャムやピーナッツクリームなどを挟み込み、
四方を貼り合わせてある。ランチでも、
おやつなどでも利用できるといった手軽さが受け、
中学生や高校生にとっては定番商品だ。

ここ最近、「耳付き」を発見した消費者からの報告が、
ツイッターなどで相次いでいる。
「朝、食べようとしたら耳ついてた」
「これたまにあるの?私初めて当たった」-などなどだ。

ランチパックは、毎月新商品が発売されるほか、
地方や特定のコンビニチェーン専用商品もある。
年間50種類出るとされ、常に60種類以上は
市場に出回っているという。それだけに、
ネット上では「耳付き」の新商品が出たのではとの意見もあった。

そこで、真偽のほどを探ろうと山崎製パンの広報・IR室に問い合わせてみた。
「ランチパックは、専用の機械で2枚のパンの端の部分だけに
圧力をかけてくっつくようにしている商品で、
耳はすべて切り離しています」と、つれない答え。
それでも「実際に耳付きの商品が存在して、
ネットで紹介されている」と水を向けると、
「大変申し訳ありませんが、それは不良品ですね」と、
どうしても話が弾まない。

ただ、なぜこうした耳付きが出るのか、その可能性を解説してくれた。
「耳が付いたランチパックは、
パンを重ね合わせるときのずれなどで、
きちんと耳が切り落とせていなかったと考えられます。
その後、装置での検査や、人による検品工程で、
取り除くのですが、それをかいくぐってしまった商品が、
店頭まで並んでしまったようです」という。その上で、
「お客さまには大変申し訳ありません」と話す。

ネット上で「耳付きがラッキーアイテムのようにいわれている」と話しても、
「不良品であり、返品などの手続きをとらせていただきます。
社内では、検品体制を強化するように指示しています」と、
あくまで不良品との認識をかたくなに崩さない。

雪の「神対応」に続き
この広報・IR室とのやりとりで、思い出したのが、
今年2月の大雪の際のいわゆる「山崎パン神対応」のことだ。
山梨県内の中央道・談合坂サービスエリアなどで、
多くの車が雪のため立ち往生している中、
同じく動けなくなっていた、山崎製パンのドライバーが、
食事がとれなくて困っている人に対し、
積載していた配達用のパンなどを無償で配った逸話だ。

この際も、ツイッターなどで事実が明らかになり、
「ヤマザキパンがアンパンマンにみえた」
「まじすかヤマザキパン。魁!男前日本企業」
「ヤマザキ冬のパンまつり。すばらしい」
といった称賛が相次いだ。

この際も広報・IR室に問い合わせたが、
「雪で動けないとはいえ、結果的にはお届けすべき商品を届けられなかった。
まずこの点をおわびしなくては」と回答。
パンを配ったことについても、「あくまでの現場の判断です」とし、
この事実が報道されることは、
「お客さまに迷惑をかけたことにもなるので、避けていただきたい」
というスタンスだった。

今回の耳付きランチパックも、ネットで
好意的にとらえられているのにもかかわらず、
商品があるべき形で、あるべき時間に店頭に並んでいることを重視する
原理原則に沿った対応に終始。堅いとか、
真面目すぎるという面もあるが、ぶれない姿勢を貫いている。

「レア」で特別感演出する企業も
その一方で、食品業界などではあえて商品の形状や、
パッケージの柄を変えるなどしてレア感を演出する動きも拡大している。

代表的なものが森永製菓のチョコレート入りビスケット
「パックン チョ」だ。昭和58年の発売で
31年の歴史を持ち、ディズニーキャラクターが書かれている。
絵柄は100種類あり、通常は丸い形だが、
1種類だけハート形のレアタイプがある。
コアなファンが十数箱購入し、
1個のハート形をやっとゲットしたことなどがブログで紹介されている。

アイス菓子「パナップ」で“激レア”を演出しているのは江崎グリコ。
通常はアイスにハートマークでソースがかかっているが、
まれに人が笑った顔の「スマイルマーク」が登場。
会社としては登場確率は公表せず、関心をあおっている。

ロッテアイスの定番アイス「雪見だいふく」は
パッケージなどにレアがある。
パッケージには降る雪がデザインされているが、
レアデザインでは降る雪が、ハート形になっているものがある。
また、中に入っているピックもハート形のものがあるとされる。
パッケージとピックがハートとなれば、
極めてレアな商品となることは間違いない。

このほか、ロッテの「コアラのマーチ」の「盲腸コアラ」や
「眉毛コアラ」、不二家の「ミルキー」の四つ葉デザインの包み紙、
森永乳業のアイス「ピノ」でハート形や星形デザインなどがある。

メーカーからすれば、レアの商品を用意することで、特別感を演出する狙いだ。
消費者の遊び心を刺激する、立派な商品戦略といえる。

その一方で、製造過程においてわずかな確率で発生してしまう
“耳付き”ランチパックを、不良品と言い切る山崎製パンには、
安全・安心な製品を届ける食品メーカーの矜持を見た思いがした。
ある意味、“メーカーの鏡”と言ってもいいかもしれない。
ただ、もう少し“遊び心”があってもよいのでは、
と個人的には思ってしまうが…。(平尾孝)

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/business/snk20141218519.htmlより

写真:「フルーツ入りクリーム&ホイップ」
スイーツシリーズ
フルーツ(パイン、りんご、黄桃)入りのクリームと
ホイップをサンドしました。
https://www.yamazakipan.co.jp/lunch-p/lineup-gallery/detail.php?product_id=1162&page=0より


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確実に記憶するコツとは

2014年12月31日 09時51分30秒 | 学習支援・研究
メモを取るとかえって忘れやすくなる? 
確実に記憶するコツ

ライフハッカー[日本版]
2014年12月17日(水)20:03

メモをとる人(イメージ)
メモを取るとかえって忘れやすくなる? 確実に記憶するコツ
(ライフハッカー[日本版])より


何かを身につけたい時はメモを取ると
効率良く学べるというのは、よく聞く話です。
でも効率良く学んだからといって、
その内容をきちんと記憶しているかといったら、
そうとは限りません。良かれと思って取ったメモが、
いわば松葉つえのような役割を果たし、
その「つえ」がなくなると何も思い出せない自分に気づく、
といったケースもあり得ます。

カナダのマウント・セントビンセント大学の
Michelle Eskritt氏とSierra Ma氏は、
メモを取った場合の脳の働きに関する研究を行いました。
学術誌『Memory & Cognition』で発表された研究結果によれば、
メモを取ると、脳はその情報を
意図的に忘れてしまう可能性があるのだそうです。
なぜなら、覚えたい情報が書きとめられ、
別の場所に保存されていると認識するからです。

この研究で、被験者は記憶力の試される
トランプゲーム「神経衰弱」を何度もプレーしました。
そして、ここが実験のポイントなのですが、
被験者のうち片方のグループについては、
ゲーム中にメモを取って良いルールとしました。
ただし、ゲームの半ばで、このグループの人たちは
メモを没収されます。すると、
ゲーム終了時点では、メモを取ることを許されなかったグループのほうが、
ずっと良い成績をあげたのです。

そもそも人間の記憶力はそれほど優秀ではありませんが、
脳は「自らが覚えている必要はない」と知っている時には、
わざわざ記憶したりしません。ですから、
次にあなたが勉強したり、メモを取ったりする時には、
きちんと時間をかけて、覚えたい情報を
しっかりと頭に刻み込むよう、
気をつけてみると良いでしょう。


Intentional forgetting: Note-taking as a naturalistic example |
The Journal Memory & Cognition via Wired Brain Watch

Patrick Allan(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
Photo by Jacob Botter.

http://news.goo.ne.jp/article/lifehacker/bizskills/lifehacker_41336.htmlより

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攻めの食品業界

2014年12月30日 00時39分35秒 | 学習支援・研究
サントリー大型買収!
M&Aで沸く食品業界

プレジデントオンライン
2014年12月17日 10時15分
(2014年12月17日 11時19分 更新)

グローバル化、業界再編、リストラ……、
企業を取り巻く環境は激変している。
ライバル会社はどうなっているか、徹底レポートする。

大手は海外シフト、中堅は合理化へ
売上高の90%を国内市場に依存する食品業界も
少子高齢化を背景に二極化の様相を呈している。
サントリーホールディングス(HD)による
米ウイスキー大手ビーム社の巨額買収に象徴されるように
体力のある大手は海外シフトを鮮明にする。

一方、中堅企業は縮小する国内市場で
コスト削減を含む合理化を推進している。
売上高1,000億円弱の食品加工会社における部長職の男性は
「2年前に賃金制度を変革し、管理職層の人件費を抑制する一方、
営業や技術系の部下なし管理職の中高年の整理が始まっている。
一部は生産業務の支援ということで現場の工場に配置しているが、
“追い出し部屋”のような存在で
慣れない仕事に嫌気がさして辞めていく人もいる」と語る。

生き残りを懸けた再編・淘汰も進む。2012年には
アサヒグループHDがカルピスを傘下に吸収
翌13年には傘下のアサヒ飲料がキユーピーのミネラルウオーター事業を取得
また同年、三菱商事がキリン協和フーズを買収するなど
経営資源の選択と集中が加速している。
合併や買収の先にあるのは重複部署の整理・統合によるリストラである。
すでに総合商社主導で完了しつつある食品卸売業界の再編劇では
多数の人員削減が実施された。
各国の有力企業の買収で海外市場に活路を求める


図:食品業界の給与水準

大手の社員といえども安泰ではない。
大型買収を展開してきた日本たばこ産業は今期決算で
過去最高の最終利益を見込むが、
一方で国内たばこ部門の1,600人規模の削減に踏み切る予定だ。
たばこの需要減を見据えた攻めのリストラといえるが、
業績好調時にこそ事業構造改革に踏み切る企業も現れるかもしれない。
また、オーストラリアやブラジルの企業を買収したキリンHD
味の素などの大手企業は現地のブランドを重視した経営に重点を置き、
現段階では人事交流は少ない。


図:年代別給与水準

だが、グローバル経営人材の養成や幹部社員の人事制度の世界共通化による
社員の選別化も始まっている。国内市場でしか通用しない社員の淘汰
いずれ始まることは間違いない。
もう一つの危惧は巨額買収のリスクだ。
身の丈以上の買収の結果、グローバル経営の舵取りを誤れば、
その負債は国内事業にも跳ね返ってくる。

06年に板ガラスメーカー世界大手の英ピルキントンを買収した日本板硝子
外国人社長を据えても経営環境は改善せず、
業績不振にあえいでいる。
経営のグローバル化は社員にとっても
極めてリスクの高いもの
となるだろう。

溝上憲文=文 ライヴ・アート=図版作成

http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20141217/President_14149.html

サントリー、ビーム社買収で“悲願”総仕上げ
PRESIDENT
2014年2月17日号

サントリーホールディングス(HD)は、
事業発展の基礎となったウイスキーなど蒸留酒事業で、
世界企業を目指す大勝負に打って出た。
バーボンウイスキーで世界トップブランド「ジムビーム」を持つ
米蒸留酒最大手のビーム社(イリノイ州)を、
総額160億ドル(1兆6500億円)で買収し、
売上高で世界第10位から一気に3位の蒸留酒メーカーに浮上する。
サントリーHDにとっては、悲願の世界企業への道筋を付ける大型買収だが、
ビーム社の買収には三菱東京UFJ銀行から約1兆4,000億円を借り入れることから、
実質無借金経営だったサントリーHDの財務悪化は避けられず、
リスク覚悟の決断でもある。

サントリーHDが1月13日に発表した合意内容は、
ビーム社の全発行済み株式を1株83.5ドルで買い取り、
6月までにサントリーHDが米国に設立した特別目的会社が
ビーム社を合併する。買収後も
ビーム社の現経営陣はそのまま。
買い取り価格は過去3カ月のビーム社株価の平均に24%上乗せしており、
「高値掴み」との指摘もある。が、サントリーHDは
「将来の相乗効果などを考えれば、買収金額は妥当」
と判断している。

世界の蒸留酒市場はウイスキーブランドで
「ジョニー・ウォーカー」を擁する英ディアジオや、
「シーバスリーガル」を持つ仏ペルノ・リカールなど
大手の寡占化が進み、サントリーHDが
世界で戦ううえで大型買収が不可欠だった。
この点、ビーム社はジムビームに加え、
コニャックやテキーラなどの品揃えが豊富で、
世界市場で高いブランド力を持つ。
「山崎」「響」などサントリーHDが得意とする
高級ウイスキーとは商品面で競合しないうえ、
ビーム社が世界で展開する販路が活用できる。
サントリーHDの佐治信忠社長は、ビーム社の買収で
グローバルでさらに大きく成長できることを確信する」とし、
蒸留酒事業のグローバル化を一段と加速する意向だ。

人口減少で縮む国内市場に安住していては、
成長戦略は描けない。昨年2月、
2年以内の退任意向を示した佐治社長にとって
今回の買収は、飲料子会社、サントリー食品インターナショナルの
株式上場や、矢継ぎ早の海外企業の買収と併せ、
世界企業への総仕上げとなる。

http://president.jp/articles/-/11806より

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山頭火の教え「酒の飲み方」

2014年12月29日 22時11分18秒 | キャリア支援
山頭火の七戒
「酒は味わうべきもので、うまい酒を飲むべし」

プレジデントオンライン
2014年12月14日(日)12:21

山頭火の七戒「酒は味わうべきもので、うまい酒を飲むべし」
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT Online スペシャル 掲載


越の寒梅と酢漬け
燗酒の温もりが恋しい時期になった。
ほろほろ酔うて木の葉ふる 山頭火
行乞の俳人、種田山頭火は無類の酒好きとして知られ、
酔うがままに詠んだ句も多い。

岩川隆さん(第10回参照 https://post.president.jp/articles/-/12934)が、
山頭火の伝記随想ご執筆を開始されたのが1985年で、
掲載誌は酒の友社が発行していた「酒」であった。
そのいきさつについて、同社の佐々木久子さんから、
<「あんた、書いてみんかね」と広島弁でいわれたのは五年前であった。>
(岩川隆『どうしやうもない私』講談社)
というから、80年頃から準備されていたように思われる。
ちょうどその頃か、もう少し前、
酒の友社の女性編集者Sさんが
岩川さんの仕事場へ出入りするようになった。

佐々木さんは必ずSさんに地酒を手土産にもたせ、
その御相伴おこぼれに与るのは私のような若いのんだくれどもであったから、
一升瓶はすぐに空いてしまう。
まだ清酒の何たるかも知らぬ若造でさえ、

「うまい!」
唸らせたのが、「越の寒梅」であった。

いまでこそ酒呑みならば知らぬ者はいない銘酒であるが、
当時はまだ知る人ぞ知る、の存在で、
佐々木さん自身、坂口謹一郎博士らと
蔵元を訪ねたのは67年秋だったという。

「越の寒梅」を世に出した石本省吾社長は、
学生時代に熱中した漕艇にたとえ、
「ボートは後むきで漕ぐのでゴールは見えない。
見えないゴールに向って懸命に漕ぐだけ。
酒造りも同じだよ」
(佐々木久子『酒に生きるおやっさん』鎌倉書房)

水のごとくさわりなく、あとから旨さが戻る
理想の酒を目指して漕ぎ続けたという。

Sさんは、いつも手作りの酒肴を持参してくれていたが、
なかでも大根、胡瓜、人参、
茗荷など野菜の酢漬けが大好評で、
ああこんな料理上手のヨメがいたら、
とオヤジどもは己が不遇を嘆き、悔むことしきりであった。

山頭火の酒の飲み方
野菜が低カロリー食品なのだから、
酢漬けも熱量は知れている。
ちなみに胡瓜のピクルスが、
12kcal/100g で、あとは推して知るべし、である。

Sさんの酢漬けの秘密は酢にあり、
とにらんだ私はしつこくつきまとい、
ようやく銘柄を聞きだすのに成功したものの、見つからず、
方々捜した結果、青山の紀ノ国屋にあると判り、
けっこうな値段に驚いたが、
あの味ならばさもありなん、
と購入さっそく漬けてみた。

さて、出来栄えはと試食したとたん、
ごほごほとむせて咳き込む酸味のきつさ。
それでは、と酢を減らせば、
今度は古漬けみたいなふぬけた味で、
Sさん作には遠く及ばない。
そこで、匙加減というものに気づいた。

三拝九拝してSさんにお伺いをたてたが、
「勘でやっているので、割合とか何グラムとか、
わかりません。ほんと、適当なんですよ」

謙遜の微笑でごまかされてしまった。
私に情熱があれば、見えないゴールに向かって
失敗を繰り返しながらも挑戦したのであろうが、
いかんせん、こちとら呑むのが最優先なので、
あっさりと諦めてしまったのであった。

山頭火は、酒は味わうべきもので、
うまい酒を飲むべし、と己に「七戒」を課していた。

一、焼酎(火酒類)を飲まないこと
一、冷酒を呷らないこと
一、適量として三合以上飲まないこと
一、落ちついてしづかに、温めた醇良酒を小さな酒盃で飲むこと
一、微酔で止めて泥酔を避けること
一、気持の良い酒であること、おのづから酔ふ酒であること
一、後に残るやうな酒は飲まないこと


清酒をこよなく愛した山頭火は若い頃、
種田酒造という酒蔵を経営したことがあり、
造り手の心情、苦労もいたいほど知っている。
私のごとき焼酎はもとより酒ならば手当たり次第の節操なしは、
痛風の罰を受けて然るべし、なのであろう。

(作家 山本亥(がい)=文 
佐久間奏=イラストレーション)

http://news.goo.ne.jp/article/president/life/president_14124.htmlより

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吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話す」

2014年12月27日 16時38分50秒 | 学習支援・研究
吉野家社長「牛丼値上げのすべてを話そう
東洋経済オンライン 2014/12/15 06:00 又吉 龍吾


画像[拡大]:12月9日の値上げ発表会見で険しい表情を見せる河村社長(撮影:梅谷秀司)
牛肉関連商品の値上げを発表した牛丼チェーン大手の吉野家。
12月17日以降、牛丼並盛は300円(税込み、以下同)から380円となる。
値上げの理由は牛肉価格の高騰だ。
吉野家の社内では、夏頃から値上げに向けた
具体的な議論が始まっていた。
今回の価格改定に至るまでの社内での議論、
値上げに際して送った従業員へのメッセージ、
前社長の安部修仁氏とのやりとり、今後の戦略――。
9月に事業会社・吉野家の社長に就任した河村泰貴氏を直撃した。

■ 値上げに動き始めたのは8月
――値上げを意識したのはいつ頃からでしょうか。
並盛価格を280円から300円に値上げすると発表した直後あたり。
4~5月頃だった。商品部の会議で牛肉の相場について
「現在、異常な状況である」という報告を受けた。
今の価格では続けられないかもしれない
ということは、その時点で意識していた。

具体的に動き始めたのは8月。値上げ幅と時期はともかく、
もう今の価格では維持できないと決断した。
ごく限られた幹部たちには「価格改定する」という旨をその時点で伝えた。

――8月というと事業会社の社長は前任の安部修仁氏の時です。
5月には、安部に代わって私が9月1日付で
吉野家の社長に就任する人事を発表していた。
お盆明けぐらいからは、9月以降の事に関しては
私が意思決定をしていた。安部が
最後に意思決定したのは10月下旬に発売した
「牛すき鍋膳」の販売日で、価格は僕が決めた。
今回も「もう値上げします」と伝えると、
安部は「もう今の価格は維持できないね」と答えた。

――今回、牛丼並盛で380円としましたが、社内ではどのような議論をしたのですか。
当初は350~400円のレンジで10円刻みのパターンで考えた。
ただ、議論の初期段階で牛肉相場が瞬く間に上昇して350円、
360円は早々に選択肢から外れた。
仕入れ担当の幹部からは
「400円を本格的に検討すべきでないか」という意見も出た。
例年だと夏に相場が下がる。だが、
今年は夏になっても市場が冷えてこなかったからだ。
ただ、さすがに400円には踏み込めないと思った。

――400円はハードルが高いということですか。
商品にかける思いとして、個人的には
(牛丼並盛で)500円以上の価値があるものを提供しているという自負はある。
だが、消費者は絶対額の安さも求めている。
以前は400円で売っていたとはいえ、
一度280円に価格を下げているわけだから、
非常に割高感を感じさせてしまう。

400円で販売していた時期より、
人件費や水光熱費は上がっている。
店の家賃も高くなった。すべてのコストが上がっているが、
400円は消費者の理解が得られないと思った。
11月末の時点で牛丼並盛は380円ということで決めた。

■ 鍋の好調で在庫の減少が早まった
――河村社長は10月の決算会見で今期中、
つまり2015年2月末まで牛肉の在庫はストックしていると話していた。
となると、値上げは来年の春頃が妥当なのではないでしょうか。


今、値上げに踏み切る一番の理由は、10月末に発売した
牛すき鍋膳が非常に好評いただいているということ。
鍋では牛丼と同じショートプレート(牛バラ肉)を使っている。
鍋は牛丼よりも使用する肉の量が多い。鍋の好調もあり、
11月の既存店売上高は前年同月比で2割増となった。
12月の出足も好調に推移している。
結果的に、想定よりも肉の在庫減が早まった。

足元の牛肉価格高騰は一時的ではない。
しばらく辛抱していれば相場が下がってくるという性質のものではない。
それがわかった時点で、速やかに上げるべきと判断した。
そして、もっと値打ちのある商品を開発する、
サービスを開発するという方向にフォーカスしていきたかった。
この夏以降は社内的にも値上げ問題が大きな経営課題になっていて、
これ以外のことが考えられないぐらいの状況になっていた。

――すき家や松屋といったライバル勢の価格も意識した改定なのでしょうか。
これは他社に限らない。コンビニの弁当もおいしくなっている。
それは脅威だ。同業他社だけでなく、
同じ価格帯で食を提供しているところは全部気になる。

――4月の値上げの時は肉質やタレの品質向上を狙った値上げでした。
前回の値上げは僕たちが自信を持って、
10円以上の価値が上げることができた。
熟成肉に切り替え、タレの成分を変えたことで、
僕自身も「絶対にいいもの」だと思った。

ただ今回、100円分の値打ちを上げて価格を80円上げるというのは、
時間的にも難しかった。いちばん取り組みやすいのは
量を増やすこと。たとえば、並盛の肉を1.5倍にして
値段を400円にしますと言っても、
もはや日本の平均年齢46歳という高齢化社会をむかえている。
今の消費者は決してそれを望んでいるわけではない。

他社のようにみそ汁を無料でつけるという案も議論に乗った。
ただ、それで並盛80円値上げの根拠にはならない。
正直に、こういう相場だから、
今のクオリティを守るので、
消費者に(値上げに関して)ご理解をいただくべく
努力するしかないと思った。
変にごまかすようなことはしたくなかった。
順序は逆になってしまうけど、
さらに牛丼の価値を上げていくという取り組みは力を入れてやっていきたい。

■ FCへの卸価格は3カ月据え置く
――値上げによる客数や売り上げへの影響は、どう見ていますか。
値下げは店舗で実験できるが、値上げの実験はやりにくい。
過去に一部の地域で値上げしたことはあるので、
そのデータを使ってシミュレーションを繰り返した。

実例でいうと、以前販売していた牛鍋丼を280円から
300円に値上げするテストをしたことがある。
そういうデータを使って机上の試算をした。
7月に一部地域で値上げの検証をすべきじゃないかとも考えたが、
どう考えてもお客様の理解を得られない。
われわれは実証主義だからやってみようとは考えたが、
踏み切れなかった。

だから、具体的にどうなるという予測は申し上げにくい。
これは価格を下げた場合も同じだが、
価格改定をした場合、最初の3カ月の影響が大きい。
その後は緩やかになる。
今回も最初の3カ月は厳しくなるだろうとみている。

われわれには現在、93のFC店舗が存在する。
2015年3月まではFCへの食材卸価格は上げないということを決めた。
これは初動の3カ月の影響を考えたもので、
ある種のFC支援のようなものだ。

――今回の価格改定で耐えられる牛肉相場の水準は? 
ショートプレートで1キログラム1500円を超えると耐えられない。
これ以上、牛肉の相場が上がっていくということは、
需要を冷やすことになる。
今の水準で頭打ちじゃないかと思いたい。

――今回の値上げで客足が遠のく可能性は高い。
どのように巻き返しを図るのですか。


今、考えているのは新しい牛丼の食べ方を提案するということ。
食べ方というのは牛丼を変えるのではなく、
お店のあり方を見直すことだ。

基本的に吉野家はカウンターで食べるのが主流。
だが、過去にはカフェのようなお店を検討したこともある。
吉野家ホールディングス傘下のうどん店
「はなまる」のようなセルフセレクションという形も、
一部のお客様にとっては快適かもしれない。
そういう実験はこれまでもやっているが、
年明け以降、加速していきたい。

たとえば、私が以前経営していたはなまるは、
一人で食べる方もいれば、週末になると
3世代の家族が利用していただくこともある。
これは、うどんというメニューだからではないと思う。
お店のあり方がそうさせている。
牛丼でもそれはできる。
その専属チームを年明け以降に作る。
これまでも一部やってきたが、年明け以降はさらにやっていく。

――従業員にはどういうメッセージを送ったのでしょうか。
本来であれば、この手の大きな政策を実行するときは、
全社員を集めて直接説明をする。しかし、
繁忙期の12月という時期的な問題もあり、
値上げを発表した9日の13時に動画メッセージを全店に一斉配信した。

そこで伝えたのは、今回、値上げ率として27%弱になるので、
150%の真心でお客様をお迎えしようということ。
今までだって、一生懸命やってくれているとは思うが、
値段が上がっても吉野家がいいと言ってくれる
お客様に最大限のもてなしをしようと伝えた。

■ 従業員に対しても心苦しさがある
9日の価格改定の記者会見で、苦渋の決断とか、
心苦しいという表現を何度も使ったが、
それはお客様に対しての言葉であると同時に、
従業員への言葉でもあった。

2004年にBSE(牛海綿状脳症)で牛丼が販売中止に追い込まれて、
そこから半年も経たないうちに私ははなまるに移った。
牛丼の販売再開の決起集会で、社員が涙したらしい。
そういう時に、僕は外から見ていた。
だから最近の吉野家の若い社員からすると、
僕ははなまるの人なんですよ。

その時、怖いと思ったのが、吉野家のことをよく知りもしないやつが
コストの計算だけで価格を上げた、
と従業員に思われること。
「一生懸命頑張りますからご理解ください」という気持ちで接客するのか、
「なんかウチの偉い人が決めてすみませんね」
という気持ちになるのかは大きく違う。
心苦しいという気持ちをお客さんに対してもそうだし、
従業員にも理解してほしかった。
これだけ原価が上がっているから当たり前、
というマインドではいけない。

――9月に安部氏からバトンを受けて事業会社の社長に就任しました。
今後、河村カラーをどのように打ち出していきますか。

飲食業はある意味、製造業をトレースしてきたようなところもあると思う。
大量生産・大量消費で価値を上げていく。
このビジネスモデルは限界に近づいていると感じている。

世界中から安くて美味しい食材を調達してきて、
自分たちで加工して、それをお店に納品する。
店は標準化された店舗でマニュアル武装され、
建築コストも安くなる。パートタイマーがすぐに戦力化できて、
一斉にチェーンオペレーションができる。
これが今までのチェーンレストランの勝ちパターン。
だけど、どんなにその仕組みを正確に回しても
利益が出ない状況になっている。

吉野家はこの10年間苦しい戦いを強いられたが、
2003年のBSEが起こらなくても、
緩やかに同じ状態に陥ったのではないかと思う。
勝ちパターンが使えなくなっているわけだから。
つまり、われわれ自身で新しい飲食業のビジネスモデルを作っていかなくてはいけない。

■ 飲食業を再定義する
それを社内では「飲食業を再定義する」とか「再発明する」と言っている。
この先の10年、2020年代に向けて、
それをやったと言われるようにしたい。

日本の外食業界をつくった先人たち。
わが社の松田瑞穂、マクドナルドの藤田田さんもそうかもしれない。
実はこういう方々が日本の飲食業に従事する
600万人ともいわれる人たちを食わせ続けてきた。

ただ、米国から持ち込んで日本流に改善したチェーンレストランの仕組みを、
この先もずっと正確にやっても儲からない。
もう一度、彼らと同じぐらいのイノベーションを起こさないと、
この先はないと思う。

荒唐無稽に聞こえるかもしれないが、極端な例を言うと
「牛丼を無料で提供して、違うところでおカネを儲ける」
みたいなこともありえるかもしれない。
先日もある農業系のアントレプレナーたちと話し合ったが、
みんな「アグリビジネス×IT」みたいな考え方を持っている。
むしろ僕らの業界は遅れている。
ウチの業界でもそういう発想があっていい。

――食材価格高騰を理由に先陣を切って大幅値上げに踏み切ったという点について、
改めてどう受け止めていますか。

2年前にはなまるから吉野家ホールディングスに着任して、
そして9月から吉野家も担当することになって、
世の中の人が吉野家に期待することの責任の重さを日々感じている。
今回、価格を上げさせていただいたのは心苦しい思いでいっぱい。

でも、ウチだけじゃないんですよ、
ビーフを扱っているところは。
みんな大変だと思う。じゃあ、
どこが矢面に立つかとなると、ウチだろうと。
そういう責任が吉野家にはあるんじゃないかと。
それはもしかしたら、前任の安部の背中から学んだことかもしれない。

(撮影:尾形文繁)

http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20141215-00055778-toyo-nb&p=1より

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