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コトラー氏、低迷する日本を語る
「いいものをつくれば勝てるという考えは間違っている。
顧客を知ることも大切です」
2013/06/17 20:15
MarkeZine編集部 [著]
6月17日、東京ビッグサイトで
「コトラー・カンファレンス 2013」が開催され、
現代マーケティングの父と呼ばれる
フィリップ・コトラー氏の約10年ぶりの講演が実現した。
コトラー氏10年ぶりの講演が実現、日本低迷の理由とは?
「コトラー・カンファレンス 2013」
(主催:日本マーケティング協会、日本マーケティング学会、ネスレ日本株式会社)は、
ネスレ日本100周年、日本マーケティング協会55周年を記念して行われるもの。
会場を埋め尽くした観衆の前で、
コトラー氏は「マーケティングの未来:
成熟市場で日本企業がとるべき8つの方法」と題して講演を行った。
2時間近くエネルギッシュな講演を行った
フィリップ・コトラー氏
5月に実弟ミルトン・コトラー氏との共著
『コトラー8つの成長戦略』(碩学舎)を上梓したばかりのコトラー氏。
約10年ぶりの来日講演となった氏の登場を待ちわびた観衆を前にして
「皆さんの会社が成長していないと感じているなら、
成功の処方箋を見つけたいと思っているなら、
今日ご紹介することから何らかのアイデアが生まれるでしょう」と語り始めた。
10年間のブランクを埋めるかのように、
多岐にわたるトピックと事例を紹介した氏の講演から、
日本企業のマーケティングの課題、顧客との関わりについて中心に紹介しよう。
日本にCMOがいないのは残念
1970年代、日本がマーケティングの世界でも
世界のチャンピオンだった時代、
脅威に感じたアメリカのCEOたちは
「コトラー氏がアメリカを打ち負かす方法を日本に教えたのではないか」と怒りをぶつけてきたという。
「そうではなく、世界の中で私が提唱したマーケティングを
より良く学んでくれたのは日本の学生たちだったのです。」(コトラー氏)
ではなぜ、日本は低迷してしまったのか。
さまざまな原因が考えられるが、
日本企業がマーケティングを誰に任せてきたのかを問い直す必要があるという。
戦略的なマーケティングは
「3年後に何をつくるか」というように先を読むもの。
マーケティング担当者はどんなプロダクトをつくるかを考える過程に入り込み、
プロダクトのポートフォリオに関わっていく姿勢が必要だという。
さらに「日本にはCMOがいないというのは残念なこと。
欧米では多くのCMOがいて、互いに学び合っています」と、
従来から指摘されている日本企業のマーケティング組織を批判。
さらに、マーケティングの力を十分活用できていないこと、
意思決定のスピードが遅い点も指摘し、
「CMOの組織体制についてはぜひ日本企業に検討してほしい」と語った。
また、ウォールストリートの資本主義に傾いているのではないかとも指摘。
株式市場や金融のように短期的に何をすべきかに偏り過ぎている。
業績が悪いと病気のように扱われ、長期的視点が持てなくなってしまう。
米国企業は四半期の業績報告をやめ、
通期で報告することで、ウォールストリート、
株式市場の影響をコントロールしていると説明した。
成長のための処方箋
では、日本はどうしたら成長できるのか。
「まず、最初にもっとイノベーションが必要です。
これは単なるプロダクトの話ではありません。
新しいビジネスモデルはどうでしょう。
バーンズ&ノーブルやアマゾンの登場によって、
既存の産業、業界が変化を余儀なくされています。
イノベーティブな物流、コミュニケーションの新たな方向の模索が必要です」と語り、
「安全を望むと成長の余地が損なわれてしまいます。
新しいアイデアを生むためには
カスタマーの近くにいることが必要。
顧客の声を聴いて、コクリエーション(共創)することが大切です」と説明した。
氏の最新刊『コトラー8つの成長戦略』の章立て
ここに企業の成長を引き出すカギがあるとコトラー氏は言う
現在は、マスマーケティングからソーシャルメディアマーケティングへ移行している時期。
「マスマーケティングはかつて非常に意味がありました。
企業について消費者が知るのは、
企業がつくった30秒のコマーシャルだったのです。
しかし今、私たちは、さまざまなデバイスのスクリーンを見るようになり、
以前ほどテレビCMを見なくなっています。
ですから、マーケティング予算の使い方を考える必要がある。
広告予算の10%を若い社員に任せて、Facebook、YouTubeを活用したらどうなるか、
やってみてもいいのでは?」と提案。
将来的には広告予算の50%がソーシャルに使われるかもしれないと、
予算の考え方にも柔軟な姿勢が必要であることを示した。
また、「私がマーケティングチームをつくるなら、
クリエイティブなスティーブ・ジョブズ、
数字に強いビル・ゲイツを迎え入れるでしょう。
CEOの資質がある人にマーケティング部門を任せたい」と語った。
顧客について考えてください
さらにコトラー氏は「いま足らないものってありますか?
なんでも過剰供給されていますよね。
いま足りないのはカスタマーなんです」と言う。
顧客になるだけでなく、商品やサービスにコミットしてくれる人。
さらには「彼らに会社を愛してほしい」と語る。
ここで「カスタマーオーナー」という考え方を紹介。
これは、まるで会社のオーナーのように、
その会社のために献身的な活動をしてくれる顧客を指し、
購入して気に入ってくれたら他の人に勧め、
製品やサービスについてのアイデアをくれる顧客のこと。
「カスタマーの10%でもそうなってくれたらいい」と言う。
また、顧客だけではなく、従業員にも愛されなければならないと語り、
「授業員オーナー」という考え方も紹介した。
そして、愛される会社の条件を8つ挙げた。
1. すべてのステークホルダーに注意を払っている。投資家やオーナーだけではなく、チームとしてみんなが働く。
2. 経営者が会社を愛している。そして多額の報酬をもらっていない。
3. 非常に話しやすい経営者。部下が気楽に提案できる。
4. 社員の報酬が高い、研修期間も長い
5. カスタマーに興味をもっている
6. サプライヤーを重視している、買いたたいたりしない。
7. コーポレートカルチャーがある
8. マーケティング予算が低い
最後の「マーケティング予算が低い」は意外だが、
それには理由がある。
「顧客がその企業を愛して協力してくれるから。
その会社の商品・サービスを使って
どんなに自分がハッピーかを宣伝してくれるからなのです」(コトラー氏)。
「いいものをつくれば問題は解決する」という考え方はやめよう
コトラー氏は、「日本の会社は問題の解決策はいいものをつくること、
それで勝てると言いがちですが、そうではありません。
やはりカスタマーについて考えるべきです」と言う。
企業が提供する商品・サービスは顧客の満足、
喜びにつながるものでなければならない。
ブランドをしっかり確立すること。
目的が明確なマーケティングを行い、
世界にどのような違いをもたらしたいのかをはっきりさせること。
単にお金をかせぐだけでなく、人間の生活、喜びにどう貢献できるのかを考えること。
より高い目的、視点が必要だと語った。
コトラー氏はここで紹介しきれないほどのトピックについて
ステージの上から語り続けた。
予定の講演時間をオーバーしたとき
「皆さんも疲れているでしょうから、このへんで休憩を入れましょうか」と提案。
講演の前に、コトラー氏を紹介した日本マーケティング協会会長 後藤卓也氏、
同理事長 嶋口充輝氏は「コトラー氏はタフ」と語っていたが、
その言葉にたがわぬパワフルな講演で、
日本のマーケターに向けてメッセージを送った。
http://markezine.jp/article/detail/17989より
コトラー氏、低迷する日本を語る
「いいものをつくれば勝てるという考えは間違っている。
顧客を知ることも大切です」
2013/06/17 20:15
MarkeZine編集部 [著]
6月17日、東京ビッグサイトで
「コトラー・カンファレンス 2013」が開催され、
現代マーケティングの父と呼ばれる
フィリップ・コトラー氏の約10年ぶりの講演が実現した。
コトラー氏10年ぶりの講演が実現、日本低迷の理由とは?
「コトラー・カンファレンス 2013」
(主催:日本マーケティング協会、日本マーケティング学会、ネスレ日本株式会社)は、
ネスレ日本100周年、日本マーケティング協会55周年を記念して行われるもの。
会場を埋め尽くした観衆の前で、
コトラー氏は「マーケティングの未来:
成熟市場で日本企業がとるべき8つの方法」と題して講演を行った。
2時間近くエネルギッシュな講演を行った
フィリップ・コトラー氏
5月に実弟ミルトン・コトラー氏との共著
『コトラー8つの成長戦略』(碩学舎)を上梓したばかりのコトラー氏。
約10年ぶりの来日講演となった氏の登場を待ちわびた観衆を前にして
「皆さんの会社が成長していないと感じているなら、
成功の処方箋を見つけたいと思っているなら、
今日ご紹介することから何らかのアイデアが生まれるでしょう」と語り始めた。
10年間のブランクを埋めるかのように、
多岐にわたるトピックと事例を紹介した氏の講演から、
日本企業のマーケティングの課題、顧客との関わりについて中心に紹介しよう。
日本にCMOがいないのは残念
1970年代、日本がマーケティングの世界でも
世界のチャンピオンだった時代、
脅威に感じたアメリカのCEOたちは
「コトラー氏がアメリカを打ち負かす方法を日本に教えたのではないか」と怒りをぶつけてきたという。
「そうではなく、世界の中で私が提唱したマーケティングを
より良く学んでくれたのは日本の学生たちだったのです。」(コトラー氏)
ではなぜ、日本は低迷してしまったのか。
さまざまな原因が考えられるが、
日本企業がマーケティングを誰に任せてきたのかを問い直す必要があるという。
戦略的なマーケティングは
「3年後に何をつくるか」というように先を読むもの。
マーケティング担当者はどんなプロダクトをつくるかを考える過程に入り込み、
プロダクトのポートフォリオに関わっていく姿勢が必要だという。
さらに「日本にはCMOがいないというのは残念なこと。
欧米では多くのCMOがいて、互いに学び合っています」と、
従来から指摘されている日本企業のマーケティング組織を批判。
さらに、マーケティングの力を十分活用できていないこと、
意思決定のスピードが遅い点も指摘し、
「CMOの組織体制についてはぜひ日本企業に検討してほしい」と語った。
また、ウォールストリートの資本主義に傾いているのではないかとも指摘。
株式市場や金融のように短期的に何をすべきかに偏り過ぎている。
業績が悪いと病気のように扱われ、長期的視点が持てなくなってしまう。
米国企業は四半期の業績報告をやめ、
通期で報告することで、ウォールストリート、
株式市場の影響をコントロールしていると説明した。
成長のための処方箋
では、日本はどうしたら成長できるのか。
「まず、最初にもっとイノベーションが必要です。
これは単なるプロダクトの話ではありません。
新しいビジネスモデルはどうでしょう。
バーンズ&ノーブルやアマゾンの登場によって、
既存の産業、業界が変化を余儀なくされています。
イノベーティブな物流、コミュニケーションの新たな方向の模索が必要です」と語り、
「安全を望むと成長の余地が損なわれてしまいます。
新しいアイデアを生むためには
カスタマーの近くにいることが必要。
顧客の声を聴いて、コクリエーション(共創)することが大切です」と説明した。
氏の最新刊『コトラー8つの成長戦略』の章立て
ここに企業の成長を引き出すカギがあるとコトラー氏は言う
現在は、マスマーケティングからソーシャルメディアマーケティングへ移行している時期。
「マスマーケティングはかつて非常に意味がありました。
企業について消費者が知るのは、
企業がつくった30秒のコマーシャルだったのです。
しかし今、私たちは、さまざまなデバイスのスクリーンを見るようになり、
以前ほどテレビCMを見なくなっています。
ですから、マーケティング予算の使い方を考える必要がある。
広告予算の10%を若い社員に任せて、Facebook、YouTubeを活用したらどうなるか、
やってみてもいいのでは?」と提案。
将来的には広告予算の50%がソーシャルに使われるかもしれないと、
予算の考え方にも柔軟な姿勢が必要であることを示した。
また、「私がマーケティングチームをつくるなら、
クリエイティブなスティーブ・ジョブズ、
数字に強いビル・ゲイツを迎え入れるでしょう。
CEOの資質がある人にマーケティング部門を任せたい」と語った。
顧客について考えてください
さらにコトラー氏は「いま足らないものってありますか?
なんでも過剰供給されていますよね。
いま足りないのはカスタマーなんです」と言う。
顧客になるだけでなく、商品やサービスにコミットしてくれる人。
さらには「彼らに会社を愛してほしい」と語る。
ここで「カスタマーオーナー」という考え方を紹介。
これは、まるで会社のオーナーのように、
その会社のために献身的な活動をしてくれる顧客を指し、
購入して気に入ってくれたら他の人に勧め、
製品やサービスについてのアイデアをくれる顧客のこと。
「カスタマーの10%でもそうなってくれたらいい」と言う。
また、顧客だけではなく、従業員にも愛されなければならないと語り、
「授業員オーナー」という考え方も紹介した。
そして、愛される会社の条件を8つ挙げた。
1. すべてのステークホルダーに注意を払っている。投資家やオーナーだけではなく、チームとしてみんなが働く。
2. 経営者が会社を愛している。そして多額の報酬をもらっていない。
3. 非常に話しやすい経営者。部下が気楽に提案できる。
4. 社員の報酬が高い、研修期間も長い
5. カスタマーに興味をもっている
6. サプライヤーを重視している、買いたたいたりしない。
7. コーポレートカルチャーがある
8. マーケティング予算が低い
最後の「マーケティング予算が低い」は意外だが、
それには理由がある。
「顧客がその企業を愛して協力してくれるから。
その会社の商品・サービスを使って
どんなに自分がハッピーかを宣伝してくれるからなのです」(コトラー氏)。
「いいものをつくれば問題は解決する」という考え方はやめよう
コトラー氏は、「日本の会社は問題の解決策はいいものをつくること、
それで勝てると言いがちですが、そうではありません。
やはりカスタマーについて考えるべきです」と言う。
企業が提供する商品・サービスは顧客の満足、
喜びにつながるものでなければならない。
ブランドをしっかり確立すること。
目的が明確なマーケティングを行い、
世界にどのような違いをもたらしたいのかをはっきりさせること。
単にお金をかせぐだけでなく、人間の生活、喜びにどう貢献できるのかを考えること。
より高い目的、視点が必要だと語った。
コトラー氏はここで紹介しきれないほどのトピックについて
ステージの上から語り続けた。
予定の講演時間をオーバーしたとき
「皆さんも疲れているでしょうから、このへんで休憩を入れましょうか」と提案。
講演の前に、コトラー氏を紹介した日本マーケティング協会会長 後藤卓也氏、
同理事長 嶋口充輝氏は「コトラー氏はタフ」と語っていたが、
その言葉にたがわぬパワフルな講演で、
日本のマーケターに向けてメッセージを送った。
http://markezine.jp/article/detail/17989より