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刻塚-(NO-27)

2009-12-04 03:30:09 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-27)

五分ほどで社に着くと、社の回廊と階段にはビニールシートが敷かれ、四方の扉が全開に開かれていた。太陽の日差しで塚の全容が姿を現していた。
「大きい塚ね、これが一時塚なの?・・・」手島は呆然と額の汗を拭った。
「ああ、分かっているだけで四百年は経っているそうだ。社は十年前に新しく建立されたらしいけどね。でも使える柱なんかは昔のを使ったそうだ」。
「ふ~ん、まるで文化財を修復する時の様ね。これが連続殺人の源なのね」。
すると、社の中で指示していた山田刑事が猿渡たちが来た事に気付いた。
「御苦労様です。猿渡さん、つい先程教育委員会から電話がありまして、一時塚は貴重な文化財だから発掘を中止してくれと言って来ました」。
「そんなこと何処から聞いたんだろう、誰かリークしたのか?・・・」
「分かりません、でも私有地ですし文化財にも重文にも指定されていませんから発掘します。一応発掘する所はビデオに収めますが」。

そうこう話していると鑑識班の手で発掘が始められた。猿渡たちは回廊に上がると作業を見詰めていた。
そして、少しずつ土を一輪車に乗せられた。そして、庭に敷かれたシートに運んではジョレンで土の中に異物は含まれていないか確認され、別のシートの上に移されていた。まるで埋蔵品の発掘調査の様だった。
そこへ増井警部補が無線を持って現れた。
「いま警備の者から無線が入って、駐車場に県の教員委員会だと言って二人程来てるそうですがどうします」。
「そんなの放っておいて作業を続けて下さい。これは殺人事件の捜査なんです。私が話して来ますから」と、手島は猿渡を見た。
その顔は一緒に来て欲しい、と言う事は猿渡に直ぐに分かった。

「手島、俺も行くよ。麻代も行くか?・・・」
「ううん、私が行っても分からないもん。作業見ている」。
「分かった、行って来るから。バイクで行きましょう」と、猿渡は警察のバイクにまたがるり、ハンドルに掛けてあるヘルメットを手島に渡すと自分も被った。
「エッ・・ここは私有地だからメットはいいでしょう」と、手島は嫌った。
「駄目だ、被らないなら歩け」と猿渡は突っぱねた。ムッと膨れながら手島は仕方なく被った。「これだから、麻代さん旦那様を借りるわね。はい、出発」
そして増井警部補と二台で戻って行った。
五分ほどで戻ると駐車場には背広姿の中年男が二人、巡査と話していた。
その前にバイクを止めるとヘルメットを取った。

「なに、県教委がなんだって言うの。これは殺人事件の捜査なのよ。誰の権限で中止を申し出たの」と、手島はのっけから怒鳴り口調で言うと警察手帳を提示した。
唖然と額の汗を拭く中年男は返す言葉も無く、手島の警察手帳を見ていた。
「殺人事件の捜査ですか、私は県教委の鈴木康孝といいます、隣は同じく剣持裕次といいます。電話を貰って一時塚を警察が掘り返していると」。
「それで、誰の権限で中止を申し出たの。教育委員長、文化財保護委員、どっち」
「あ、はい。それはまだどちらにも。私達の独断で参りました」と、少し年配の鈴木は困った様に言葉がしどろもどろだった。
「そんなんで私達を来させたの、捜査妨害よ貴方たち。殺人事件の捜査と文化財とどっちが大事なの。ちゃんと発掘する様子はビデオに収めてわ。こちらは警視庁の元警視正の猿渡さん。文句あるの」。

「いえ、失礼しました」。と、グーの根もでず鈴木は頭をさげた。
「ただ、発掘現場を見たいなら許可しない訳でもないけど。どうしたいの」。その言葉に二人の目付きが変わった。
「はい、ぜひ拝見させて下さい。お願いします」。
「増井警部補、いいわね」。
「はい、警部がそうおっしゃるなら。でも邪魔にならない様にお願いしますよ。それから、その電話は何処から入ったんです」。
「はい、電話の声はまだ若い男性の様でした。電話を録音してあります、此れです」そう言うと鈴木は脇に抱えた使い古したカバンを開き、マイクロカセットを取り出して差し出した。

「では拝借します。しばらくお借りします」と、増井警部補は手にすると。ポケットから透明なビニール袋を出し。入れるとポケットにしまった。
「現場はこの道の奥です、歩いて三十分先ですから。警部行きますか」。
そしてまた三人はヘルメットを被った。そして戻って行った。
「やれやれ、おっかない女性警部さんだ。三十分も歩くのか、仕方ない、歩きますか」鈴木はバイクが走り去った雑木林に続く小道を見ては溜め息を付いた。
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