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刻塚-(NO-31)

2009-12-23 02:11:54 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-31)

「はい、写真を撮ってつい今し方帰りました。それより女性の死体が見付かったそうですが、馬場達の仲間でしょうか」。
その問いに猿渡は首を振った。「分かりません」、
ガチッ・・・鈍いその音に塚を見た。捜査員はスコップを置いて手で掘り始めた「山田刑事、スコップが埋まってました。ここまで掘ったんでしょうか」。そう言うと現場写真を撮らせた、そして手で土を掘り返していた。そして、錆びたスコップが出土した。表に運びだし、ビニールシートで包んでいた。
「山田さん南田さん、俺も帰るよ。筒井先輩にそう言っといて下さい。麻代帰るぞ」猿渡はそう言い残すと麻代の腰に手を添えた。
「もうっ・・・」麻代はポッと頬を染めた。手島加奈は追う様に二人の後を追った。
そして駐車場に着くころには応援の警察車両が到着した。
ワゴン車から鑑識班と制服警官が手に手にチエンソーや担架、長い棒を持って続々と降りて来た。そして整列し、警備の巡査の誘導で山道に向かった。

「啓太さん、応援ってこんなに来るの?・・・」麻代はゾロゾロと社に向かう捜査官の後ろ姿を見ていた。
「それだけ大事件って事だよ。帰るぞ」すると、オートバイの音がして宿の主と後藤公子が乗った三輪のバイクが下って来た。
後ろの荷台にはダンポール箱が積まれていた。「どうも、いま大勢の警察が上って行きましたけど。あんなに必要なんですか」。
「ええ、外にも穴があると困りますからね。警察は総動員ですよ」。

その晩、社と雑木林の中には灯光機の明かりが煌々と照らされ、捜査は続けられていた。雑木林は警察の手で切り開かれ、閑散としていた。
そして、雑木林の地面は捜査の為に積もった枯れ葉は長い棒で弾かれ、真っ黒な扶養土が露出していた。
そして午後八時、食事を済ませ、シャワーを浴びてくつろいでいると電話が鳴った。主からだった、猿渡は麻代を連れて部屋を出ると、向かいの部屋の手島加奈へ声を掛け、三人で事務所に向かった。
行くと、山田一族の親戚が一同に顔を揃え、主の横には後藤公子が座っていた。
「どうしたんです、また何か問題でも」猿渡はクーラーの効いた事務所の椅子に腰を降ろした。

「猿渡さん、地下室から特種メイクの道具が見付かったと言っていましたね」。
宿の主はそう言うと暗い顔をして分家の山田太一を見た。
「ええ、確かにあれは特種メイクに使う薬品と化粧品ですが。それが何か」。
「あれから戻ると息子から電話がありましてね、若子は何処にいるかと訊いてきたんです。若子と言うのは分家の太一の娘でして、映画の特種メイクを勉強したいとハリウッドへ行っているんです」。

「エ~ッ!・・・太一さんの娘さんが特種メイクの勉強?・・・」。
「はい、それで太一叔父に話して連絡を取る様にと。そしたら、アメリカで勉強している友達が一年も前に帰国していると言うんです」。
「それで、自分は訊いてないんですが。山田刑事はなんて?・・・」
「はい、息子が言うには、腐乱がひどくて女性としか分からないそうです。それでつい先程電話があって、帰国しているか調べて連絡してくれるそうです」。
「そんな事どうしてもっと早く言わないの!私は警視庁の刑事よ。そんな事私に言えばすぐに手を打ったのに。そう言う風になんでも一族でって言う閉鎖的な考えがこうなったんでしょう。貴方たち、外にまだ何か隠してなんかないでしょうね」と、全員を睨む手島だった。

「いえ、事件に関係する様な事は何も」。主は神妙な赴きで静に語った。
「山田さん、皆さん。もし遺体が若子さんだっとすると、若子さんは一時塚の事を知っていたんですね。と言うより小判が埋まっている事を知っていたんですか」。
「ええ、若子は知っていました。十年前に改築した時にいて、柱の下に大判が埋もれていたのを見ていましたから。でも塚の中がどうなっているのかは知りません」。「山田さん、あの塚を地質探査したのはどこの会社ですか」。
「はい、会社ではなく東京のY大学の考古学研究の権威ある辻本学教授にお願いしました。そうか、若子の出た大学だ。なあ太一さん」。

山田太一は目に涙が光っていた、そして頷くとポタッと涙が畳みに落ちた。
「まだ若子さんと決まった分けじゃありませんよ。その地質調査の時に何か言っていませんでしたか。あれだけ古銭が埋まっていたら計器に出る筈ですがね」。
その言葉に一族は驚いた様に互いの顔を見ていた。
「いいえ、ただ数枚の古銭あったとだけで、今日聞いて驚いている所です。誰か聞いているかね」。主は一人一人確認する様に分家を見ていた。
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