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岡田尊司『母親を失うということ』

2021-04-23 | 2022夏まで ~本~
わたしの母・80歳は健在です。

が・・・岡田尊司『母親を失うということ』(光文社)を読み、
涙が止まりませんでした。


内容はと申しますと・・・

精神科医の著者は京都在住、母親が住む故郷まで、車で数時間・・・
コロナ禍、人の往来が自粛される中、母は「帰らなくて良い」と
著者に告げ、一人で入院する。

ところが、腰痛での入院だったはずが、
母は、あっという間に帰らぬ人となってしまった・・・

・・・そんな母を亡くす直前から半年後までの、
いわば現在の時間と、母と過ごした少年時代という過去の時間が
交互に語られていきます・・・

(タツナミソウ。冒頭画像はアナベル)


とにかく読み始めたら、
途中で止められなくなって一気読みしてしまいました。

まずは、母上自身の生き方に惹かれます。
淡々としていながら強いのです・・・

著者の母は、9歳で母親を亡くし、
嫁ぎ先では精神を病んだ義母から酷い仕打ちを受け、
そのうえ貧しい生活を強いられ、身体を壊してしまいます。

それでも、母が、その生活から逃げなかったのは、
幼いときに母親を亡くしたことが影響しているのではないかと、
著者は精神科医らしく分析しています。


(ジャスミン)


そして、何よりも、一気読みとなった原因は、
著者と自分を重ねて読んだからに他なりません。

著者は、わたしと同世代・・・
生まれ育った環境は全然違いますが、
その時代の空気みたいなものは、感じられます。

また、幼いときに、著者は、母親が入院し、近くにいてくれなかった・・・
その、不安が、よくわかるのです。

若かりし頃の母は病弱で、わたしが小学校に上がってすぐの頃は
入退院を繰り返していましたから・・・


著者の母親は、「息子が入学するまでは生きていたい」と祈ったとか。

私の母も、弟が生まれてから、
「この子が幼稚園に入るまで」「小学校に入るまで」
「小学校を卒業するまで」と、少しずつ命の希望をつないだと申します。


(白バラ)


さらに、驚いたことが・・・

著者は七歳下の弟を大事にします。

「(弟は)お父ちゃんやお母ちゃんといっしょにおれるのは、
あんたより七年少ないんで...だから大事にしてな」
著者は、母の言葉に涙ぐみながら相づちを打つのです・・・

これと同じことを、私も言われ続けました。
弟とケンカをしたときではなく、日常の中、ふとした弾みに言われ、
そのたびに、わたしは哀しくなったものでした。

もしかしたら・・・
こういった言葉は、母が病弱だったことと関係していたのかも・・・と
今頃気づきました。


(白バラ)


わたしは本が好きですし、歴史や評伝も大好きです。
最近では、意識して、母から昔のことを聞くようにもしています。
著者の母と違い、我が母の記憶はいい加減ですが・・・

それでも、母の語ることは、大切な私のルーツ、
家族の歴史です。

「母の死は、母だけの死と言うよりも、母がその語りを介して...
生命を与えていた人々や記憶の死だと言えるかもしれない」(277頁)

いつの日か、わたしも、このように振り返るのでしょうか・・・
考えただけで、空恐ろしいです。
この年齢で、こんなことを申すなんて、本当にお恥ずかしい限りですが・・・


(スズラン)

母のの引越しが近付いてきました。
それは、実家がなくなることでもあり、
わたしも、少し感傷的になっているのでしょうか・・・

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母の引越し以前に読んで、大泣きした本です。
既に引越しの終わった今は、私も、精神的に落ち着きました。
本日、長らく下書きに入れておいた記事を、アップしております。

画像は、「港北オープンガーデン」見学中に撮りました。
岡田氏のお母様に哀悼の意を込めて、白い花を選んでいます。

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拙ブログでは、読んだ本の一部だけをアップしていますが、
ブクログ「由々と本棚」は、読み終わった本を収めています。
本のお好きな方、どうぞ、遊びにいらして下さいませ。

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