博報堂生活総合研究所が行っている定期意識調査(2022)によれば、「おじさん」とは一般的に43歳から69歳までを指す言葉とのこと。因みにそんなおじさんたちの人口分布は、①40代男性882万人、②50代男性880万人、③60代男性734万人(総務省人口推計2022年10月)で、特に40代男性・50代男性の880万人台というのは、現在の日本で最も人口の多い階層だということです。
「人生100年時代」と呼ばれるこの時代、40代でオジサン呼ばわりされるのも可哀そうな気がしますが、昨今の定年間際のオジサンへの風当たりはなかなか厳しいものがあるのも事実のようです。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社が21年の9月に全国のオフィスワーカー400人対象行った「50代社員に関する意識調査」によれば、50代の社員について20代、30代、40代の各世代が共通して指摘しているのは、①何かを変えることに抵抗を示す、②周囲を不愉快にする、③給料に見合う活躍をしていない、の3点とのこと。
・デジタルツールの導入を忌避しIT化の弊害になる(20代・女性)
・ひたすら邪魔でしかない。せめて何もしないでほしい(20代・男性)
・まったく仕事をせずに世間話ばかりして、文句ばかり言っている。
・セクハラパワハラに該当するような言動を控えてもらいたい(30代・女性)
と、あまりにひどい言われようです。
こうした、オジサンへの風当たりが(不当に?)強い状況に関し、4月20日の集英社オンラインが、「男性学」をテーマに研究を進める大妻女子大学准教授の田中俊之氏へのインタビュー記事(『「おじさんは叩いていい風潮」の危険性。社会学者が指摘する中年男性のイメージと現実のズレとは』)を掲載していたので、参考までにその概要を小欄にも残しておきたいと思います。
昨今の「おじさん叩き」において、特に行き過ぎだと感じるのは「容姿への中傷」だと、田中氏はこの記事で指摘しています。例えば、腹が出ている。ハゲていてもダメ、逆に毛深くてもキモい。あと臭い。消臭剤のCMでも、特に中年以上の男性が忌み嫌われる匂いの発生源として描かれることがあるが、これが女性だったとしたら大炎上だと氏は言います。
おじさんは社会的強者、だから強い者を叩くのは正義である…おじさん叩きが止まない最大の理由がこの理屈だというのが氏の認識です。
ニートや生活保護受給者が働かない、働けない理由はさまざま。そもそも社会的弱者であるから叩いていいはずがない。しかし、おじさんは違う。大した仕事をせずとも地位にあぐらをかいて、高い給料をもらい続けている。その分、割りを食っているのが女性であり若者だと、多くの人が捉えているということです。
しかし、イメージではなく、おじさんの現実をしっかり見ることも重要だと氏は続けます。現在、40~50代の男性は3割近くが未婚で、今後もその割合は増えていく見通しとなっている。非正規雇用者もずいぶんと増え、貯金もなく、明日の生活に不安を抱えている中高年男性は少なくないということです。
おじさんたちは、(たとえ辛くても)「私たちはそんなに強くないんだ」「弱者なんだ」とはなかなか口にできない。「傷ついた」と言葉にすれば弱さを認めたことになり、それが耐え難い屈辱に感じられてしまう。だから、ひたすら耐えるしかない。世代的に『男らしく』の呪縛にかかっているというのが氏の指摘するところです。
自分自身が、「社会が求める男らしさ」にからめとられ、適応できていない存在だとあきらめ、自信を失い、自身を卑下しているということでしょうか。誰もが生きるのに必死な時代。世の中、大多数のおじさんは権力もなければお金も大して持っていない。LINEで絵文字を送る相手もいない孤独な存在だと田中氏はインタビューで答えています。
世の若者たちには、「おじさんはこうだ」とか「女性だからこうだ」などと決めつけず、目の前の相手と向き合い、年齢や性別などの属性にとわられずいい関係を築いていってほしいと話す氏の指摘を、私も(ひとりのオジサンとして)共感をもって受け止めたところです。
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