国立社会保障・人口問題研究所の推計(中位推計)によれば、15歳から64歳の(いわゆる)生産年齢人口は、2040年に約6000万人となるとされています。これは、2020年(約7400万人)の81%に過ぎず、もしも(その20年間に)労働力率が上昇しなければ、2040年の労働人口は現在よりも概ね2割減少することを意味しています。
人手不足に対処するため、今後、日本企業は(その存亡をかけ)高齢者や女性などに労働力を求める必要が出て来るでしょう。
実際、高齢者の労働力活用に関しては、既に政府が定年制度の見直しなどを進めているほか、女性の労働力率向上についても、政府が女性の活躍推進や育児支援策などを進めています。
では、外国人はどうなのか。厚生労働省のデータによると、2022年10月末時点の外国人労働者数は約182万人。これは、その時点の労働人口6902万人(2022年平均)の約2.6%でしかありません。
日本の労働人口に占める外国人労働者の比率が他の先進国に比べて低い理由については、言語や文化の壁などの影響に加え、外国人への労働市場の開放に消極的な政府の姿勢を指摘する向きも多いようです。
こうした状況を受け。(外国人労働者の受け入れに関し)政府の有識者会議が現在の「技能実習制度」の抜本的な見直しと、新たな人材確保制度の創設を提案したとの報道もありました。
さて、もちろんこうした施策を組み合わせることで、数字上では労働力率は(それなりに)上がっていくでしょうが、それが必ずしも生産性の向上につながるかどうかはわかりません。
連合によれば、2023年春闘における平均賃上げ率は3.76%と、30年ぶりの高い伸びとなり、大企業を中心に賃上げ機運が高まっているとされています。しかし、今後、国内の労働力自体が不足していく状況を考えれば、賃金を上げれば人材が集まるという状況でもなくなることでしょう。
それは、「代わりはいくらでもいる」という時代が終わりを告げ、労働者が企業を選ぶ(買い手市場)の時代が来るということ。あらゆる現場の人手不足をどのように解消し、どのように労働の質を維持していくかが、(近い将来)企業の存続にとって最も大きな課題になるということです。
そうした折、4月12日の日本経済新聞の経済コラム「大機小機」に。『人口減少が打ち破る30年の停滞』と題する記事が掲載されていたので、参考までに小欄に概要を残しておきたいと思います。
人口減少は潜在成長率を下押しし、社会保障の持続可能性を危うくする。これは、日本の将来を悲観視する最大の論拠となるが、一方でそれが30年続いた日本経済の停滞を打ち破る力になるとしたらそう悪い話ばかりではないと、筆者はその冒頭に綴っています。
先日発表された3月の日銀短観における「雇用人員判断(全産業)」によれば、人員の「過剰」から「不足」を引いた指数はマイナス32。コロナ禍前の2018年、19年に迫る逼迫状況が続いており、あと数年で1990年前後に底入れしたマイナス40台に近づくということです。
これまでは、生産年齢人口が減っても女性と高齢者の労働市場への参入が増え、人手不足を補ってきた。だが今後はそうもいかないだろうと筆者は言います。ボリュームゾーンの団塊世代が25年にはすべて後期高齢者になり、女性の労働参加率の上昇にも限界がある。外国人労働者も円安で収入が目減りし、日本で働く動機が弱まっているというのが現状に対する筆者の認識です。
一方で、構造的な人手不足は賃上げを促す。今春闘の賃上げ率は連合の3次集計で3.7%となり1993年以来30年ぶりの高い伸びになった状況からは、「賃上げしないと採用できず、辞められる」という厳しい現実が透けてみえると筆者は指摘しています。
そして、そうした中で訪れている設備投資ブーム。3月時点の新年度投資計画として3.9%増(全規模・全産業)と、84年度の調査開始以来最高水準となる設備投資のキーワードはズバリ「省力化」だということです。
人手不足は社員の再教育を促し、折からの「働き方改革」も後押しする。いわゆる「ゾンビ企業」も、(政府がいくら資金繰りをつないだとしても)人手を確保できなければ結局廃業しかないと筆者はしています。
あとは企業が稼ぐ力をどう高めるか。かつて、「外圧」でしか変われないといわれた日本経済は、人口減の「内圧」で今、転機を迎えようとしているというのが、このコラムで筆者の指摘するところです。
「必要は発明の母」とはよく言ったもの。おしりに火がつくことでDXが飛躍的に進み、さらには、日本人の仕事の仕方・仕事への考え方大きく変わることで、社会の仕組みに大転換につながる可能性も考えられるとする筆者の意見を、私も(期待とともに)興味深く読んだところです。
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