10月3日の投資情報サイト「MONEYZINE」は、帝国データバンクが全国の企業2万4,285社を対象として今年7月に行った「女性登用に対する企業の意識調査」の結果を報じています。
これによれば、管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合の平均は8.9%で、前年比で1.1ポイント上昇して過去最高を更新。伸び幅はこれまでで最も大きく、政府が目標として掲げている「女性管理職30%」を上回っている企業も8.6%と、同1.1ポイント上昇して過去最高となったということです。
また、役員(社長を含む)に占める女性の割合の平均は11.8%で、同1.0ポイント上昇したと記事はしています。もちろん天下の「帝国データバンク」による調査ですので、対象となるのは上場しているような大規模な企業がメインなのでしょうが、少なくともこうした数字からは、企業における女性の地位向上が着実に進んでいる様子が窺われるところです。
一方、それでも企業における男性優位の状況が大きく変わったわけではありません。同調査によれば、管理職が全員男性の企業は45.2%と調査対象の約半数、役員が全員男性の企業は55.2%を占めたとされています。
社会取締役などの役員や管理職ポストの多い大企業、女性の従業員の層が厚い業種の企業などでは女性の経営参画も進んでいるのでしょうが、役員や管理職のポスト自体が少ない中小企業や製造業、建設業などのハード系の業種では、なかなか進まないのが実態と聞きます。
共働きの世帯が社会の中心を占め様々な分野で女性の社会進出が進む中、企業における女性のキャリアアップが進んでいくのは、もはや「必然」と言っても過言ではないでしょう。しかしそのスピードは、(今回の調査結果からもわかるように)思うほど「速い」ようには見えません。
調査で聞いたところでも、女性管理職の割合を「増加する」と見込んでいる(つまり「増やしたい」と考えている)企業は22.6%と2割ほどあるものの、「変わらない」との回答が58.9%と過半を占めているのも事実で、その道のりは遠いというほかありません。
また、女性役員(社長を含む)に至っては、割合が「増加する」と見込んでいる企業は全体の7.9%に過ぎず、「変わらない」とする72.6%の企業のざっと10分の1に過ぎません。女性管理職の割合は増加傾向にあるものの、今はまだいっぱいいっぱいで、現状維持を前提としている企業がほとんどと言えるかもしれません。
それでは、肝心の働く女性の意識はどうなのか。役員や管理職などのマネジメントポストに就きたいと考えているのかどうか。
博報堂の「博報堂キャリジョ研」が、20代から30代の若手の正社員・総合職の男女700名(女性500名・男性200名)を対象に今年の6月に実施した「女性のキャリア意識調査」というものがあるようです。
これによれば、今後、自分の下に評価対象の部下がいる「管理職・マネージャー」になりたいと考えている人の割合は、男性が56%(なりたい24%・ややなりたい32%)だったのに対して、女性では32%(なりたい11%・ややなりたい21%)にとどまったとされています。
管理職・マネージャー・リーダーになりたくない理由(複数回答)としては、「責任が重くなるのが嫌だから」と回答した人の割合は女性が42.1%で男性が25.8%、「仕事よりも趣味やプライベートを大切にしたいから」と回答した人の割合は女性が36.8%で男性が19.4%と、女性が男性を大きく上回ったということです。
男女ともに調査対象は若手の総合職ですのでバリバリの上昇志向があってもおかしくはないはずですが、そこはイマドキの若者たちのこと、女性の約7割が責任に縛られず趣味やプライベートを大事にしたいと考えているようです。
さて、そこで本題ですが、それではこうした状況を改善するにはどうしたらよいのか。
そもそも、男女を問わず管理職になりたくないのは、管理職になったら責任が重くなるばかりでメリットは少なく、プライベートが犠牲になると感じるから。つまり、目の前にいる(彼ら彼女らの上司である)管理職の置かれた状況や働き方に魅力を感じないからということになるでしょう。
女性に限っても、ロールモデルとなるはずの先輩の女性管理職はバリキャリのスパーウーマンばかりで、ああいう風にはなれない(なりたくない)と感じてしまう。彼女たちは(その上司から)責任を負わされ、自分の生活を犠牲にさせられているように見えるのでしょう。
そう考えれば、答えは意外に簡単かもしれません。それは(特に、彼らに身近な「課長」などの中間的な)管理職の仕事をもっと魅力的にすること。自分の時間を持ちながら仕事をしたり、自分のアイディアを仕事に生かせる環境にしたり、彼らの給料を(それなりに)上げてあげたりすること。私もああいう人になりたい、ああいった立場で仕事をしたいと感じられるようにすることです。
日本では、女性管理職の割合がなかなか増えない状況が続いていますが、その背景には、管理職を目指す若い女性が少ないことが指摘されることが多いようです。
これまで、世の男性経営者たちはそれを嘆き、女性の意識の低さにその責を押し付けてきましたが、実は問題はそこにはないのではないか。問われるべきは、(彼女たちの目に映る)現在の管理職というポストの魅力の無さ尽きるのではないかと、改めて感じるところです。
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