~ 宿るべき水も氷に閉じられて ~
『やとるへき水も氷にとぢられて今宵の月は空にこそあり 宗祇』
(やどるべき みずもこおりに とじられて こよいのつきは そらにこそあり そうぎ)
大蘇芳年筆
宗祇(そうぎ)は室町時代後期の連歌師。
月の発句
丑三の頃になったらその寺の本堂でいろいろな人が話をしよる
侍もある 和尚さんもある。集まって「はてな、はてな」って言いよる
「今宵の月は空にこそあり」 いう歌が出されて
それの上の句ができなくて困っていたんですと。
宗祇が上の文句「やとるへき水も氷にとぢられて」ってつけると
みんな「ハッ!」って言って消えてしまったって。
この歌の情趣は、水に映った月を実と見て、
天空に輝く月を虚とみる発想の逆転にある
氷が張っているために、月が本来あるべきところの
水面に宿ることができずに、中空に浮かんでいるというのである。
出典元:昔話「幽霊の歌」にみる伝承の変容