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重度重複の子の指導と定石化 2

2018年11月22日 | 教育
授業を進める上での10項目

①趣意説明を行う。

 必ず告げる

・車いすに乗せる。→「今から車いすに乗りますよ。ゆっくり持ち上げるからね。」
・ベットに寝かす。→「今からベットに寝ますよ。」「お尻からゆっくりつきますよ。」
・ミキサー食(流動食)を食べる。
→「これはごはん。」「これはやさい。」「これはさかな。」
   といって一つ一つ鼻の近くへ近づけ,においをかがせて,なんであるかを告げる。
そして,「じゃあ,ご飯食べるよ。」と告げて口に運ぶ。
・教室から廊下へ出る。→「今から廊下に出るよ。」
・廊下から渡り廊下(外)に出る。→「外の廊下に出ますよ。少し寒いですよ。」
どうせ分からないからいいではない。相手を尊重して,一つひとつ告げるだけで,
 全く表情が変わる。重度重複の子にかかわる基本的なマナー,原則である。

②スモールステップを意識する。

 音と動きを合わせる

・ふれあい体操,マッサージなど,一つの曲に対して動きを決めてかかわる。
 自由に音楽をかけてその都度違う動きにしない。この曲がかかればこの動き,
 この曲がかかればこのマッサージとつながることで,子どもが安心して体を
 任せることにつながる。
・「見せる」と「音を聞かせる」を分ける。音を聞かせながら見せると,
 見ることに神経を集中させるか,聞くことに神経を集中させるか安定せず,
 動きを引き出せないことがある。どちらかに絞る。反応が出てくれば同時を試す。
 基本は一時一事である。

③分かりやすくする。

 一言で誘う

・「はなちゃん!」「ほら!」「みて!」「これ!」等,一つのことに注目させたい
 ときはその物を提示したり,指さしたりしながら,できるだけ簡潔な一言で声をかけ誘う。
 注目した後や,少し声の刺激を入れたいときには,長く話して説明する場合もある。

④共通理解する。

 共通理解して指導に当たる

・ふれあい体操では,筑波大付属桐ヶ丘養護学校の物を使用した。曲に合わせて手足
 を曲げ伸ばしたり,さすったりする。その動きを同じように行うため,一緒に組んで
 行った先生と,赤ちゃんの人形を使って,練習を重ねた。
・保護者が取り入れているマッサージを指導でも取り入れた。保護者がする様子をビデオに
 撮り,学校に持ち帰って一緒に組んで行っている先生と,見ながら,やはり人形で練習を
 重ねた。誰もが同じ動きを理解し,同じように行うことがA子さんに安心感を与え指導が効果的に働く。

⑤場・物・時間を工夫する。

 場の工夫をし,時間配分を考え,多様な物を用意する

・場所と物と時間を工夫して与える。
・場の工夫・・スヌーズレンを行った。スヌーズレンは暗い中で光刺激を楽しむ感覚遊びである。
 窓に紺のラシャ紙を貼って暗い室内を演出した。毎回,側臥位(横向きに寝る)を取らせ,目の
 高さに絵本を立てかけた。
・時間配分・・発作の多いときには緩やかなふれあい体操から入り,マッサージなど少し長めに行った。
 発作の少ないときには,絵本の読み聞かせを入れた。体を動かした後,創作活動,見る活動を合間に
 入れる。後半,心地よい気持ちで終えるよう,スヌーズレンやハンモックを長い時間行った。
 体の状態に応じて適切な時間配分を調節する。
・多様な物・・絵本はきらきらしたもの,また,カラー印刷の物をパウチして触る活動のための教材を
 用意する。スヌーズレンでも多様な光グッツを取りそろえた。

⑥パーツを組み合わせる。

 細かな動きを組み合わせる

・ふれあい体操,マッサージでは,指の一本一本の動きから刺激を与える。
 細部から全体へと動きを大きくしていく。
・カレンダーワークなどでは,飾りを作って貼り合わせてコスモスの絵,
 トンボが飛ぶ様子などを作る。その際は,活動を細分化して,できる部分
 だけ取り組ませる。後は教師が補う。トンボを作って貼りつけるなら,一緒に
 のりをつける,ぺたっと貼ることならできるので,その部分だけ活動する。
 細分化して,活動できる部分を抜き出すことが教師の力量である。

⑦安心を作る声かけをする。

 声をかける

・物がよく見えない,音がよく聞こえない,分からない世界にいる。
 沈黙は恐怖である。絶えずやさしい声をかける。音楽を流す。お話することが必要である。

⑧状況を確認をする。

 認識の状態を確かめる

・はなちゃんと声をかけ,声が届いているか,声を識別しているか,
 表情や顔のほんの少しの動きから確かめる。
・絵本の読み聞かせをする。目線の位置,絵が変わったときの目の動き,
 表情の読み取りを欠かさない。
・マッサージ,ふれあい体操などでも,体の可動域,表情から心地よいか,
 悪いかなど確かめる。

⑨ほめる。

 具体的にできたことを伝える

・マッサージになどで,「今よく手があがったね。」「足がよく曲がったよ。」等,
 できたことをその場で評価し告げる。
・絵本の読み聞かせ等で,「今,魚をよく見たね。」等対象物と目線が合ったとき,
 そのことを伝え評価する。

⑩励ます。

 ほめ続ける

・とにかく一緒に活動できていることをほめ,共に喜ぶことが,信頼関係を生み,
 驚く動きを引き出すことにつながる。

 そして,その際,本当の笑顔が必要となる。相手をいとおしむ気持ちが伴う
笑顔は子どもを変える。この「笑顔」を作れる力は技能である。
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