思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

特別支援教育の実践情報など。また,日々の喜びを見つけ、よくする手立てはないか考える、成長・教育のサイトです。

発達障害の疑いのある「幼児」の支援

2019年02月28日 | 教育
1 A君の主訴

・自分の思い通りに行動し,注意をしても話を聞こうとしない。どのように対応したらよいか。
※ 臨床心理士より,PDDの疑いがあるかもしれないといわれている。

2 現状

・父親は別居で母子家庭の状態。最近,
 乱暴になってきた。
・休み明けが激しく,使いたいおもちゃ
 を使えない,座りたい所に座れないと
 怒る。
・暴言やつばを吐く。落ち着くと話せる
 が,一方的に話し目線を合わせない。
・3歳児の頃,保健センターの幼児教室
 に進められたが行っていない。
・母屋看護師をしている。子には厳しく
 言い聞かせる。両親ともに厳しい。

3 観察から

・A君のわがままに振り回されているよ
 うに見える。
・トラブルになるときに曖昧な指示が多
 い。具体的に指示する必要がある。
・もう一人の子と一緒になってトラブル
 になるようだが,よりどころにしてい
 るようにも見える。
・朝の歌の場面では,前半きちんと体育
 座りができていた。
・名前を呼ばれ,「は~い」と返事をし
 て,「はい」というんですよ,と言わ
 れ,「はい」と言い直した。

4 今後の対応で伝えたこと

・友だちとの適切な接し方,関わり方が
 分からず,精神的なストレスにもつな
 がり,暴力的な行動になってしまうよ
 うにも見える。その都度,具体的にど
 うするか教えて,できたら褒めるよう
 にし,社会スキルとして身に付けさせ
 たい。
・「どうしたらいい?」と聞きたくなる
 ところだが,A君には,「こうすると
 いいよ」と教え,できたら褒めるよう
 にする。
 例:ヒーローごっこで相手を強くたた
 いてしまう→叩くと痛いので,叩く真
 似をするよと教え,できたら褒める。
・気をひく所があるので,悪い行動は周
 りに被害がなければ取り合わない。よ
 い行動をしたり,しようとしたらすか
 さず褒める。
・指示は具体的に。・きちんとしなさい
 →「お尻を付けて座りなさい」
・一日の日程を掲示して話したり,視覚
 的な提示をしたりするなど,見通しを
 持たせ,分かりやすい指示をする。


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知的障害のある低学年の子の食事指導について②

2019年02月27日 | 教育
 低学年で,牛乳を飲まない,好き嫌いが多く食べない,という子がいる。
 このような子は現在,とても多く見られる。どの様に指導していくのがよいのか。

1 指導の仕方


 これまで20年以上経験してきた中で,指導の仕方は主に次の3つである。

(1) 何としても飲ませる食べさせる。

・何としても飲ませる,食べさせる,という指導を見かける。
・泣いてさけんでも,ゲッともどす感じになっても許さない。
・「甘えてるんです」「こうやれば何でも許されると思ってるんです」
という主張である。

(2) 挑戦は試みるが,無理はしない。

・少しにして「食べてみる?」「なめてごらん」と勧める
・小さく粉砕して食べさせてみる。
・好きな食べ物と混ぜて食べさせる。
(好きなうどんに粉砕した野菜を混ぜて進める。)

(3) 食べないものはそのうち食べるので良しとして勧めない。

・食べない物はそのままにして本人の食べたい気持ちに任せる。

2 考察

(1)はよくない

・発達障害のある子にとって,感覚は,通常と違うことがある。
・嫌いな物は,ヘビを食べさせられている気持ち悪さ,怖さがある場合もある。
・指導者の生きてきた感覚で,無理強いすることはそれこそ恐ろしい。

・牛乳など飲んだ瞬間に泣き叫んで「ウゲッ」とするならまだましである。
・牛乳を飲む前に泣き叫んで「ウゲッ」としたらかなり危険なサインである。
・それは,すでに条件反射となっており,3つの危険をはらむためである。

①戻しやすくなる可能性,癖になる可能性,反芻に行く可能性がある。
②周りの子の影響が心配される。
・知的に高い子は,「きちんと食べないと怒られてしまう」と学習できるかもし
 れないが,知的に低い子は,「大人は怒るもの」「大人は怖い物」という認識
 をもってしまう。
③保護者は了解していることか。
・そんな状態をよしとしているかどうかが心配される。

(2)がよいと考える

・食のこだわりは成長に伴って生物学的にかなり変化する。
・しかし,未経験で食べないこともある。
・ヘビをかむほどの本当に嫌な感覚がなければ,少しは挑戦させて,食や経験を
 広げたい。
・少しずつなら1年で食べられるようになることはある。

(3)は(1)よりははるかによい。

・まったく誘わないのはもったいないので,いけそうなときは少し誘うくらいで
 後はこだわらなくてよい。地域で何千人も発達障害の子を見てきたこの世界で
 も尊敬を受けているドクターが,「偏食の指導はしないでください。そのこと
 で,栄養失調などになった子は見たことがありません。むしろ,偏食指導でト
 ラウマや人嫌いになってきた子を何人も見ています」と話されていた。

 熱意があると,どうしても(1)にいきやすい。
 本人や周りの指導者は,それがその子にとって必要だと真剣に行う所だが,他
の人が見ると,泣き叫んで吐いているのを食べなさいという行為はどう映るか。

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知的障害のある低学年の子の食事指導について①

2019年02月26日 | 教育
 4月の初めは給食を普通に食べていたが,1学期の途中から食べた後,または
食べている最中に戻してしまうようになった。

1 原因を探る

・周りの友だちが泣いていたり,大声を出したりとうるさいのが嫌なためか。
・給食をかけこむように食べてしまうためか。
・給食のおかずで大きいものを,よく噛んで呑み込めないためか。
・牛乳を一気に飲むとよくないのか。

2 取り組む

・うるさいのが嫌だから,隣のクラスに行き,先生と2人で静かに食べてみる。
・少し,給食を小さく切るようにする。
・牛乳は少しずつ飲む。

3 経過

・少しずつ,声をかけながらゆっくり食べるとも出さない日もあった。
・時々戻してしまう時も続き,なくなることはなかった。

4 結果

・戻すことはなくなった。
・牛乳を飲まないと,戻さないことが分かった。

<牛乳について>

・牛乳に含まれる乳糖を分解できない「乳糖不耐症」に該当する人は,白人よ
 りも東洋人に多いといわれている。乳糖不耐症の方は牛乳中の糖質(=乳糖)
 を消化する酵素が少ないため,牛乳を飲むと下痢をしやすい。

・牛乳(飲用)は,固形分が12~13%あり,リンゴや梨より,実は水分が
 少ない食べ物で,脂肪分としてもコップ1杯には(200ml)7~8g分の脂
 肪分(バター)が含まれているので,おかゆなどに比べれば,消化が良いと
 はいえない。
・本当におなかが弱っているときには,おすすめできない部類ではある。

5 考察

・牛乳がすべてとは言い切れないが,原因の一端として考えられる。
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DSM-5について

2019年02月24日 | 教育
 DSM-5は,米国精神医学会(APA)によって2013年に発行された精神疾
患の診断分類体系の最新版である。DSMとは,米国精神医学会が作成する
精神疾患,精神障害の分類マニュアルである。正式には「精神疾患の診断統計マ
ニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」と
いう。本来はアメリカの精神科医が使うことを想定したものだが,事実上,国
際的な診断マニュアルとして使われている。DSMの初版(DSM-Ⅰ)は1952
年に出版され,以降数回に渡って改訂版が発行されてきた。

1 DSMの歴史

 米国における精神疾患分類の歴史は19世紀の人口調査における疾病の統計分
類に始まった。1917年,米国精神医学会(APA)は各精神科病院で統一して
用いる統計分類を作成し,これは後の国税調査に採用された。当時の精神疾患分
類は,臨床よりも統計上の使用を主な目的としていた。その後,第二次世界対戦
を経て,精神科診断の信頼性を高める機運が国際的にも高まり統一した精神疾患
分類の開発が進んだ。

2 DSMの目的

 第二次世界大戦中,兵士の適性検査や帰還兵の治療において精神科医が重要な
役割を果たした。その治療を目的としてこの時に使われた診断マニュアルが,現
在のDSMのもとになっている。
 第3版(DSM-Ⅲ)以降,DSMは,精神医学に「共通言語」を与えるという目
標があった。これは,精神科医のそれぞれの見解によるものではなく統一され
た基準を作り,それにしたがって根拠に基づいた医療行為を行うということが
大きくあった。この方針が, DSMの在り方の基本となっている。
 そして,作られた診断基準が適切かどうかを見直し場合によっては修正するこ
とも,DSMが「共通言語」として機能していくためには大切なことであり,改
定がなされてきた。

3 DSM-5全体の改定点

 DSM-5でこれまでの改訂版と比較して最も大きく変わったのは各精神障害
群の章の構成である。DSM-ⅢからDSM-Ⅳまでは,冒頭に児童青年期の精神障害
があり,続いて器質性精神障害,物質関連障害統合失調症・精神病障害等の順
であった。DSM-5では,生涯の発達に沿って構成され,「幼年期・児童期」で
現れる統合失調症・スペクトラム障害及び他の疾患,その後「青年期・成人期
早期「に出現することの多い障害群,最後は「老年期」に関連する障害群とい
う流れになった。
 具体的な診断の中での変更点として,最もよく知られているのは,「自閉スペ
クトラム症/自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder)」とい
う概念が導入されたことである。「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラ
ム障害」は,DSM-IV-TRで「自閉性障害」「アスペルガー障害」「広汎性発達
障害」「高機能自閉症障害」などと呼ばれていたいくつかの障害をすべて含ん
でいる。アスペルガー障害という名称は広く使われているが,医療の世界では
現在,診断名もつかなくなった。
 「スペクトラム」(連続体)という見方は,DSM-5でとくに重視されている
見方である。これは,診断項目に「当てはまるか,当てはまらないか」を判断
するよりも,その症状が少しあるのか,強くあるか,「どの程度当てはまる
か」を判断するほうがが適切だろうという考え方である。こうした考え方は,
診断名としてはもちろん,診断方法としてもDSM-5を特徴付けている点の1つ
でもある。

4 診断のされ方

 DSM-5では,まず,精神障害が大きく22カテゴリーに分類されている。そ
の下に,一つひとつの診断名が挙げられている。たとえば,ADHD(注意欠如
・多動症/注意欠如・多動性障害)は,DSMでは「神経発達症群/神経発達
障害群」という大分類の下にある。「神経発達症群/神経発達障害群」には,
ADHDのほかに,・知的能力障害群(知的障害)・コミュニケーション障害群
(吃音など)・自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害・限局性学習
症/限局性学習障害(ディスレクシアなど,いわゆる「学習障害」)・運動
症群/運動障害群(発達性協調運動障害,チックなど)が含まれている。


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チック症のこどもたち

2019年02月22日 | 教育
【チック症】 

 チック症とは,突発的,不規則的,常道的な体の一部の早い動きや発声を繰り
返す状態が一定期間継続するものである。精神的な緊張やストレスで増悪する
ことが多い。運動チックと音声チックに分けられ,また,それぞれ,単純チッ
クと複雑チックに分けられる。

1 特徴的に表れるところ

・チックは,ピクンとかピクピクッという突如として起こる素早くて断続的な運
動である。やるつもりなくてもやってしまう。運動チックはまばたきや肩をすく
 める動きに現れ,音声チックは,咳やうめき声として現れる。

2 発生の頻度

・発生は一般的に人生の早期で,18歳以下である。チックは,子どもの10人
 に1~2人が体験するといわれている。4~11歳ごろに発生することが多
 く12歳ごろを境に症状が軽減していくことが多い。チック症の中でも重症と
 いわれるトゥレット症候群の頻度は1万人に4~5人程度とされている。

3 原因

・遺伝的な要因があると考えられている。しかしそれは遺伝病というものでは
 なく,身体的特徴や性格が似てくる程度の,様々な要因の一つとして捉えられ
 ている。
・ドーパミンを中心とする神経伝達物質のアンバランスが強く影響しているので
 はないかといわれている。ドーパミンの影響を押さえる薬物が,チックでも有
 効であることが要因としてあげられる。

4 症状の見通し

・10人に1~2人が体験するといわれるだけありその頻度は意外に多い。しか
 し,その分,多くのチックは一過性のチック障害であり一年以内に消失する。
 慢性のチック症でも10歳から10代半ば過ぎくらいまでが最も重症で,それ
 以降は回復に向かうことが大半である。ただし,少数の重症なチックは大人
 まで継続し,重篤になる場合がある。

5 薬物の有効性について


・強い不安や緊張を軽減するものとして,向精神薬を使用する方法もあるが,
 依存症の問題が懸念されるため,短期間の使用が望まれている。
・チック症状が強い場合,ドーパミンの過剰な活動を押さえる作用のある神経
 遮断薬の使用も有効とされている。ただし,かゆみや手の震え,吐き気など
 の副作用もあり,薬物療法を避ける保護者も多い。

6 医療の必要について

・すべての場合,医学的治療が必要なわけではない。チック症状が激しく,生活
 に影響が及ぶ場合,小児科の受診が必要となる。例えば以下である。
①大きな叫び声の音声チックがある場合。
②コプラリア(汚言症=社会に受け入れられないしばしば卑猥な言葉を言って
 しまう)がある場合。
③チック症で,字が書けない,食事ができない場合。
④自傷や他傷の行為が出ている場合。

7 教室でやってはいけない対応


・やめさせようとして叱る:チックは意図的に行っている運動ではないので,強
 く叱ることで症状を意識させて,悪化を招く場合がある。
・触れないように意識し過ぎたり,行動を全く無視したりする:チックに関して
 あまり意識しないことは必要であるが,激しいときや頻繁なときには,心身
 の疲労や緊張感に配慮する必要がある。

8 行動を改善するための方策

・チック症状を,過度に意識しないように配慮しながら,大多数が一過性のもの
 なので,特に異常なものではなく,やがて消えていくことを伝える。
・ストレスや緊張も原因の一つとなっている可能性があるので,学習面や人間関
 係面で苦手感を探り,学習量や学習課題を軽減したり,教師も一緒に遊びの輪
 に入り,場を取り持つ工夫を施したりする。




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