思う・学ぶ・発達支援 心のケア サイト

特別支援教育の実践情報など。また,日々の喜びを見つけ、よくする手立てはないか考える、成長・教育のサイトです。

高等学校の支援

2018年11月30日 | 教育
高等学校に毎月,巡回相談で出向いたときのことである。

1 高等学校は質が変わる

 保育園・幼稚園では特別支援が必要なのか,しつけの問題なのか
を問われる方は多いが,基本的にはどちらにかかわらず,不適応な
行動があればその行動に対して適切な方向へ向けることになる。目
立った問題行動があり,そこに対応することは小・中学校と変わら
ない。

 しかし,高等学校となるとかなり質が変わってくる。特に,学力
が低いとされる学校では,子ども達はおそらく勉強ができないつら
さを抱え,注意され,叱られ続けてきていることが予想される。
 
 授業中に,飲食,化粧,携帯が頻繁に見られる場合もある。二次
障害を抱え自己肯定感が下がっている子ども達に対するアプローチ
が必要となってくるのだ。

 ただ,先生が抑えつける指導になっていなければ,子ども達は基
本的に素直である。ある荒れた学校でも,挨拶をすると,腰パンの
子も髪を染めた子も,挨拶をみな返した。授業中に寝ていたり,携
帯をしたりしているところ声をかけると,素直に反応した。

2 分かることが前提条件

 机間巡視をしながら「やらないの?」「かいたら?」と声をかけ
る。すると,なんと答えただろうか。みなほぼ同じである。返って
くる言葉は,「わからない」である。いったいどこをやっているの
か,何をやっているのか,分からないのである。そのような状態に
一日置かれたら,みな自分の好きなことをして何とか過ごすしかな
い。分からないのに何時間もそこにいるしかないつらさは計り知れ
ない。それが毎日毎日続いたらどうだろう。

 ある授業ではそんな子ども達が全員集中していた。どのような授
業だと思われるだろうか。社会科で,地理の学習と称して,「さる
がんせき」のビデオを見ていたところであった。過酷なヒッチハイ
クで世界を旅する番組である。化粧をしていた子,携帯に夢中にな
っていた子も「さるがんせきかっこいい。」と言っている

 就職に向けた面接の摸擬授業も全員,真剣な姿を見せていた。

3 答えは分かっている

①能力に見合ったレベルに学習を下げる
②社会自立に必要な学習を取り入れる

のである。教科書も,力に応じた,分かりやすいレベルのものを用
意するのである。

 しかし,既成概念を崩すのは難しい。

・義務教育ではない。
・単位が取れなければ退学

という流れがある。

4 変化

ところが,ある学校では協議を重ね,多くの配慮がなされた。

①テストの回答用紙をB5からA4,B4に拡大した。
→それまで,半分しか解答を書かなかった生徒がすべて記入した。

②評価の比重を,テストから,日常のノートに大きく移行した。
→単位を取れる生徒が増えた。

③反省室を壁で仕切って個別ルーム的にした。
→そこで勉強したがる生徒が増えた。反省室から学習ルームに一部変更。

④発達障害系の生徒が興奮したときはリラックスルームに行く。
→教室内の無用なトラブルが激変した。自分で戻ってくる。

⑤板書とノート,プリントの記入形式を一致させた。
→ノートを取る子,プリントを記入する子が増えた。

⑥黒板や黒板の周りをすっきりさせる。(何も貼らない)
→起きている生徒が増えた。

 やってみれば,変化は起きる。
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説得力

2018年11月29日 | 励み言葉/癒し言葉
自分の発言の厚みと説得力を増すためにはどのようにすればよいのか。日々考える。
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聴覚障害児教育の基礎知識

2018年11月29日 | 教育
 聴覚に障害のある子ども達。自分が受け
持たなければ,どのような状況を抱え,ど
のように理解し,指導につなげていくか分
からない世界である。

 基礎知識として身につけなければならな
いことは多分にある。その中で,この点は
知っていてほしいということに絞って伝え
るものとする。

 1 早期から音を聞かせる大切さ

 以前,聾学校の幼稚部に入る子で,言葉
の出る子は数名だったが,今は言葉の出な
い子が数名だという。これは早期から聴覚
の状態を測定できるようになり,対応がで
きるようになったためである。

 生後,1~2週間で新生児スクリーニン
グテストが行われるようになった。ABR
検査である。この検査では,内耳から脳ま
での,聴神経の伝達経路のどこに異常があ
るかを調べることができる。脳波系の電極
を頭に取り付け脳波の変化から判定してい
く。

 この早期の検査により,生後2~3か月
で人工内耳を付けることが可能となった。
人工内耳により音の信号を早期から入れる
ことができる。これが重要なのだ。

 発達の臨界期というものがある。脳は乳
幼児において急激に成長をする。その際,
「音」が入ることにより,「音を聞き取る
こと」「出力すること」を必要と認識し,
脳の伝達回路であるシナプスがつながって
聞く・話す部分を司る脳が発達する。

 しかし,音のない世界でそのまま成長す
ると,発達を逃してしまう公算が大きいの
である。

 2 聴覚レベルを知る

―80デシベルの音とは?―

 受け持った子が「80デシベル」という場
合,どのような状態であるのか。以下が目
安である。

・120デシベル:飛行機のエンジン
・100デシベル:電車の通るガード下
・ 80デシベル:地下鉄の車内
・ 60デシベル:普通の会話
・ 40デシベル:図書館
・ 20デシベル:木の葉の触れ合う音

 通常は20デシベル辺りまで聞こえる。80
デシベルの場合,友達同士の会話や,先生
の指示は聞き取れない,聞こえないという
ことになる。そのため配慮が必要となる。

 高等学校の支援活動で,難聴の生徒が在
籍していた。聞こえない場面では一人で出
てしまうなど,困難も見られるが,成績は
TOPクラスである。対応がきちんとなさ
れてきたことが伺える。特別支援にはあら
ゆる理解が必要である。

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特別支援学校授業プラン:美術「海のデザイン画」

2018年11月28日 | 教育
海のデザイン画 

 小学校勤務のとき、最初に取り組んだ酒井式実践の
修正追試である。青、黄、赤の絵の具がふわっとにじ
む背景がとても美しい。色水を作り画用紙にそっと筆
を置くだけででき、特別支援学校でも十分実践できる。

 背景を作った後は、海のなぞの生物「カプリン」を
描くのだが、ここではどの子ども達にも取り組みやす
い「好きな魚」を描いて貼り付けることとした。子ど
も達は個性に合った魚を作り、貼り付けて絵を完成さ
せていった。



○準備物

・4ツ切り画用紙2枚(背景と魚用)
・新聞紙(画用紙をおくため)
・絵の具セット(背景は3原色)
・紙コップ(画用紙に水をたらす)

①見本を見せる

 特別支援学校は学年の人数が少ないので、全員ひと
クラスに集まった。そこでまず全体に見本を見せる。
教師も9人おり、やり方が浸透していないので、教師
に対してもやり方を確認してもらう場になる。

 教室の机を端に寄せ、床に新聞紙をひいてその上に
4つ切り画用紙を置いて始める。コップに水を汲んで
おく。

手順1 水をゆっくり画用紙の上にたらします。
手順2 水を画用紙全体に広げます。
手順3 青の絵の具を水でゆっくり溶かします。
手順4 溶かしたら筆で画用紙に色を置きます。
    青はたくさん置きます。
手順5 次は黄色です。青の半分くらい置きます。
手順6 最後は赤です。少し置きます。

②各クラスに分かれて行う(各自)

指示1 新聞紙を2枚重ねて床に置きなさい。
指示2 新聞紙の上に画用紙を置きなさい。
指示3 画用紙の上に小さな円を描くように水を
    ゆっくりたらしなさい。
指示4 画用紙全体に水を手で広げなさい。
指示5 青の絵の具を水でよく溶かします。画用紙の上に
    ゆっくりと色をつけた筆を置いてみなさい。
指示6 海のデザインですから青はたくさん置きます。
指示7 次は黄色。青の半分くらい置きなさい。
指示8 最後は赤。少しだけ置きなさい。

 これで乾かし背景ができる。どのようなにじみ方を
してもそれぞれに美しく仕上がる。次は魚を描き、色
をつけ、切り抜いて貼る。向きを考えながらの貼り方
は構図の勉強になる。

 このステップの指導により、色鮮やかな作品が個々
にでき、地区の文化祭、や県内の作品展で、全員の
作品を展示することができた。

 暑い時期にはとても涼しげになり,お勧めしたい。
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子どもは変わる2

2018年11月27日 | 教育
背景を読み取り支援につなげる

 授業中教室から飛び出す。誰が声をかけても戻らない。
声をかけた校長先生に,「校長先生は大嫌いだ。
あっちへ行け」と叫ぶ。支援員が付いており,担任は
その子を支援員に任せ,クラスの他の子は普通に授業
を受けている。40人のクラスがまとまっており,
授業の技術は高い。しかし,授業中クラスから飛び出
す子が改善できない。

 その子の行動が,5カ月余りで改善された。その子
の抱える背景を十分に聞き取り,関係者が共通の認識
を持って対応したことと同時に,保護者の意識に変化
が起きたことが大きな決め手となった。「必要ない」
と言っていた保護者が専門の医療機関にかかったので
ある。適切な薬を処方され,学級の中ですっかり落ち
着きを取り戻した。

 その子の見える行動だけでなく,その背景を探る。
そこに解決の糸口が見つけられる場合がある。相談業
務を各方面から受けているプロの臨床家に伺った内容
について紹介する。

アセスメント・フェイスシート

 その子の表面的なことだけでなく,抱えている背景
を読み取る。その情報は,他の専門機関の方々の協力
を得る場合は絶対に欠かせない。臨床家のプロはその
情報の一つ一つから原因や対応を瞬時に読み取る。

――――――――――――――――――

Ⅰ フェイスシートの作成

1 氏名・年齢・性別・在籍期間
 呼称やニックネーム,国籍,在籍期間の概要等。

2 相談経緯及び相談者
 相談者の立場・役職・リファー等

3 主訴 誰が・いつから・どこで・どんなことで・
 どれくらい困っているのか
(1)相談者の困っていること。
(2)本人の困っていること,本人は困っているのか。
(3)保護者の困っていること,保護者は困っているのか。
(4)その他の人や場が困っていること。

4 発症契機
(1)いつごろ始まったか。いつごろ気づいたか。
(2)はじめて起きたのか。繰り返しているのか。
(3)どのくらい続いているのか。
(4)本人だけなのか。誰か巻き込んでいるのか。
 (集団で起きているのか。一対一の人間関係で起きているのか。)
(5)どこで起こっているのか。限局的なのか。どの場面でもか。
 (家庭・学校・地域等)時間的な限定はあるのか。
 (朝・日中・夕刻・夜・夜中等)

(6)今までとった対応・対策はなにか。
 (いつ頃・どこに・期間と頻度・機関と相談経過・方針等)
(7)その結果はどうなったのか。
(8)本人の受け止め方はどうか。
 (本人は困っているのか。なんとかしたいと思って
  いる様子があるのか。全く問題意識がないのか。)
(9)今後活用できる資源はなにか。
 (相談機関・医療機関・支援,協力者等。)

5 今回の相談での要望・希望
(1)具体的にどうしたいのか。
  (最終的な目標,当面の目標は何か。)
(2)こちらへの具体的な希望要望はなにか。
 
以上,上記の情報を突破口とし,必要に応じて,

Ⅱ 情報の収集:6既往歴 7性格等
 8在籍機関(幼稚園・保育所・各学校)からの情報 
 9関係機関からの情報 10家族歴 

Ⅲ 生育歴の作成 11生活史の聴取

といった内容を細かく掘り下げる。

判断は素早く的確に行うことが問題解決の条件である。
しかし,薄い情報では的確な判断ができず,誤る。
素早くできるだけ正しい情報入手し,その上で的確な
判断をする。それがベストな解決の方向に向かう。

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