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感覚統合によるかかわり方

2018年11月23日 | 教育
【感覚統合によるかかわり方】

1 五感とは違った無意識に使う三つの感覚の存在

・日常生活の中では通常,視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の
 五感を使って活動を行っています。しかし,その感覚とは違った,
 無意識的に使う感覚があります。それが初期の感覚といわれる
 前庭覚・固有覚・触覚と呼ばれるものです(触覚は五感にある意識
 しやすいものですが,その一部に自覚しにくい無意識の働きがあります)。
 この三つの感覚を適切に働かせ続けることによって,24時間無意識に働く
 ようになります。

・すると,身体的には体の企画,輪郭がイメージできるようになり,
 ボディイメージとしてつながっていきます。そして,心理的には自分
 という存在が自覚できることにつながります。自分の存在が理解できて,
 初めて相手の存在を理解していくことにつながるのです。さらに,
 初期の感覚が働き,その上で五感が働くことで,物を見分ける,
 聞き分けるといった働きがよりよく行われるようになります。

<そのことが土台となって,自己コントロール能力が働くことにつながるのです。>



2 三つの感覚の未発達が問題行動を生む

<それぞれの感覚の働きと,そこから起こる問題をいくつか例を挙げると以下のようになります。>

固有覚

・筋肉のはりや関節曲がり具合を感じ取る。体の動きの把握とコントロールを行う。
 運動を行うときの手足の位置,部位を感じ取る。

触覚

・本能的に防衛・闘争・取り込みを行う原子系と,触った物の大きさ・形・素材を
 判断したり,原子系をコントロールしたりする識別系がある。

前庭覚

・バランス感覚とも言えるもので,姿勢の維持や目の動きのコントロールを行う。
 耳の奥にある三半規管や耳石器で回転や傾きを感じ取る。

<うまく働かないと以下のようなことが現れます。>

 ドアや机の角にぶつかりやすい。ジュースを注ぐときこぼす,倒す。
動きがぎこちない,転びやすい。(固有覚の不具合)

 触覚の過剰な抵抗である触覚防衛反応,物をすぐに口に入れる,
ぬるぬるしたものを自分から触る自己刺激行動が現れる。(触覚の不具合)

 姿勢が維持できない。足を椅子に上げる,組む,すぐにしゃがむ,寝転がる。
揺れを激しく求める,また逆に怖がる。注視できない。(前庭覚の不具合)


3 適切な行動につながる感覚の育て方

・以下のような対応を参考に児童生徒の実態に応じてかかわること
 が考えられます。気になる行動の原因は感覚にかかわらず,様々な要因
 が考えられますが,あくまで原因の一つとしてとらえ,感覚の入力を,
 遊びやふれあいを通して取り入れていきます。

【原因・3つの感覚低下 ①固有覚の問題 ②触覚の問題 ③前庭覚の問題】 

(1) 耐えず動いている →感じ方の鈍さから感覚入力を求めて動いている:①
  急に走り出す
(2) 机をがたがた揺らす →感じ方の鈍さから感覚入力を求めて動いている。
             関節の可動,圧力を働かせ,固有覚入力を行っている:①・③

 ◎歩く・走る・ブランコ・トランポリンが有効ではないか。

(3) すぐに座り込む →体が重力に対してまっすぐに維持できない(抗重力低下):①・③
  すぐに寝ころぶ
  ふらふら歩く

 ◎ブランコ・トランポリン・アスレチックが有効ではないか。

(4) 顎や頭をたたく →感覚の入力を求めて,骨格から感覚刺激を入れている。:①・②・③

 ◎手や腕を手のひらでぐっと握る圧迫刺激・トランポリンが有効ではないか。

(5) 指をなめる         →つま先立ちをする本能的に防衛・闘争・取り込みを行う               
  上履きや靴下を脱ぐ      原子系触角の働きが増し,その行動をコントロールする
  物をバラバラ落とす      識別系の働きが弱い。:②
  触ると過剰にくすぐったがる
  爪を立てる

 ◎スポンジやブラシを使って,手のひら,腕,足などをタッチングすることが有効ではないか。
 
※ 高等部,青年期でもやはり必要な感覚であり,運動です。ブランコや
 トランポリンなど難しい場合には,散歩や軽くジョギングも揺れ刺激,
 姿勢保持などの運動につながります。施設入所で体の大きい方の場合,
 全身を手のひらでマッサージするだけでも触覚刺激が入ります。

4 強度な問題についての取り組み
  強い自傷行動を青年期まで引きずっていた子に以前アプローチしました。
 感覚統合法を中心に取り入れている作業療法士にビデオで様子を見てもらい
 ながらアドバイスを受け,校内でチーム会議を行いました。保護者の許可を得,
 腕にリストバンドをして触覚からの圧迫刺激を入れ,朝,10分間のトランポリン
 を跳びました。家庭でも自傷行為が軽減したとのことで,その後も引き続き行いました。

5 他の要因とともに解決を図る
  情動,行動のコントロールには初期の感覚の未発達とともに,発達段階を押さえた
 認知を高めるアプローチ,脳科学に基づく神経伝達物質へのアプローチなど,
 バッテリー的にかかわっていくことが必要だとかんがえられます。



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