
アイスキュロス作のギリシャ悲劇である。
その昔、無知蒙昧な人類を哀れんだプロメテウスが、天上から神々の火を盗んで人類に火を与えた。それがために人類はようやく文化の状態に進むことができた。この行為は厳格なゼウスの逆鱗に触れ、プロメテウスはゼウスより過酷な刑罰を科せられた。
刑の執行役として権力と権威という「無人化された神格」が登場する。また、後半ではゼウスの情欲のために苦悩する少女の物語が加わり、「ゼウスの正義」にたいする疑問が湧いてくるように仕組まれている。見事なストーリー展開でプロメテウスの桎梏が浮き彫りにされる。以下、この作品の一節。
コロスとは合唱隊のこと。
劇中ではプロメテウスの叔父の娘たちが合唱する。
場所は荒野の崖、岩山の下。
プロメテウスがゼウスの命令によって、
岩に青銅の楔で磔にされるシーン。
プロメテウス
「親しい者には見るも痛ましい限りだろうな、私の姿は。」
コロス
「もっとなにかをしたとでもおっしゃいますの。」
プロメテウス
「人間どもに、運命が前から見えないようにしてやった。」
コロス
「そういう運命を癒すために何を見つけておやりでした。」
プロメテウス
「目が見えぬ、めくらの希望を与えたのだ。」
コロス
「とても役に立つものを人間どもにおやりでしたこと。」
プロメテウス
「ついでに、火まで人間どもにくれてやったというわけだ。」
コロス
「その日暮らしの人間どもが、今や輝きわたる火を手にしたわけで。」
プロメテウス
「おかげで人間どもは、将来、さまざまな技術を学び知るようになるであろう。」
ムム、思わず唸ってしまった。
この種の、ハッとするような表現に再々出会う。
それにしても、訳に問題があると考えるのはわたしだけか。
ギリシャ悲劇全集全4巻 人文書院 昭和35年初版、
は、学者による悪い翻訳の典型。
やはり、訳が古すぎたようだ。
上記引用は、わたしなりに書き改めてみた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます