旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

『縛られたプロメテウス』

2006年12月09日 16時04分12秒 | Weblog

アイスキュロス作のギリシャ悲劇である。

その昔、無知蒙昧な人類を哀れんだプロメテウスが、天上から神々の火を盗んで人類に火を与えた。それがために人類はようやく文化の状態に進むことができた。この行為は厳格なゼウスの逆鱗に触れ、プロメテウスはゼウスより過酷な刑罰を科せられた。

刑の執行役として権力と権威という「無人化された神格」が登場する。また、後半ではゼウスの情欲のために苦悩する少女の物語が加わり、「ゼウスの正義」にたいする疑問が湧いてくるように仕組まれている。見事なストーリー展開でプロメテウスの桎梏が浮き彫りにされる。以下、この作品の一節。

コロスとは合唱隊のこと。
劇中ではプロメテウスの叔父の娘たちが合唱する。
場所は荒野の崖、岩山の下。
プロメテウスがゼウスの命令によって、
岩に青銅の楔で磔にされるシーン。

プロメテウス
「親しい者には見るも痛ましい限りだろうな、私の姿は。」
コロス
「もっとなにかをしたとでもおっしゃいますの。」
プロメテウス
「人間どもに、運命が前から見えないようにしてやった。」
コロス
「そういう運命を癒すために何を見つけておやりでした。」
プロメテウス
「目が見えぬ、めくらの希望を与えたのだ。」
コロス
「とても役に立つものを人間どもにおやりでしたこと。」
プロメテウス
「ついでに、火まで人間どもにくれてやったというわけだ。」
コロス
「その日暮らしの人間どもが、今や輝きわたる火を手にしたわけで。」
プロメテウス
「おかげで人間どもは、将来、さまざまな技術を学び知るようになるであろう。」


ムム、思わず唸ってしまった。
この種の、ハッとするような表現に再々出会う。

それにしても、訳に問題があると考えるのはわたしだけか。
ギリシャ悲劇全集全4巻 人文書院 昭和35年初版、
は、学者による悪い翻訳の典型。
やはり、訳が古すぎたようだ。
上記引用は、わたしなりに書き改めてみた。


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