すこぶる体調がよいので夕食前に古書店「ブックオフ」の散策を楽しんだ。今年に入ってからメルヴィルの「白鯨」(岩波文庫)を読んでいる。ようやく中巻のダイオウイカとモビィ・ディックを間違える肩すかしのシーンまでたどり着いた。間もなく最終の下巻にはいるので次に読む作品をと岩波文庫の赤帯を探していたら渡りに船、ユーゴーの「レ・ミゼラブル」(岩波文庫 全4巻)が目にとまった。私が高校時代に読んだことがある長編小説だ。この「ああ、無情」は、ヴァルジャンがパンを盗むところから始まっていたように思っていた。ところが、ン十年を経て改めて読み始めてみたら、巻頭は、「銀のろうそく立」事件の司教の来歴から入って、19年の刑期を終えたヴァルジャンがその司教の銀食器を盗むところから始まっていた。遠い昔の記憶が当てにならないことを知った。過去の記憶を辿れば足りるので第1巻を2、3時間で読み飛ばした。キリスト教的博愛が現実と格闘する姿を見事に描いたこの作品はカトリックの教義に似て骨太だ。